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はじまり
はじまりはじまり
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砂の国
「おい、本当にこんな所に、手つかずの遺跡があるのか?」
「間違いない。見ろ、地下に入ってから、魔力計がずっと反応している」
「依頼人殿達。体調はいかが?」
「ああ、我々は大丈夫だ」
砂の国の辺境、入ったものは誰も生きて帰ってこないと言われる、砂の大裂け目の深くに、調査のために訪れた国の調査隊と護衛、そして念のためにと雇われた少数の高位冒険者達が、ゆっくりと魔力に反応する道具を頼りに進んでいた。
「あった…」
「マジかよ…」
「おお!ついに!」
上から流れ落ちてくる流砂や、岩の裂け目を潜り抜けながら、調査隊が目にしたのは、地下深くであるにも拘らず聳え立つ、荘厳な神殿の様な建築物であった。
「この建築様式…。間違いない、神々と竜との戦いが終わり、人種が誕生してすぐの時代の物だ。しかも、古代エルフの…」
「そんなに古いのかよ…。参ったな、作ったのがもし古代のエルフなら、防衛機能が生きてる場合、俺らじゃ無理だ」
「ああ。依頼主殿、一度帰って、特級冒険者の雇用を勧める。プロとして言うが、貴方方の安全を保障できない」
「そうか…。いや、そうだな。ここにあったことを突き止めたのだ。急いては事を仕損じる」
人種が誕生してすぐの時代となると、現代のエルフとは比べられない程強力な、古代のエルフがまだまだ活動していた時期でもあった。
もしそんな彼等が作ったものとなれば、神殿の防衛機能は途轍もない強力さであり、高位冒険者達はプロフェッショナルとして、調査隊の安全を保障できないと宣告する。
調査隊の代表も、名残惜しげであったが、ここで何らかのアクシデントで全滅してしまえば、折角見つけたこの神殿の情報も失われてしまうと危惧して、素直に彼等の提言を受けいれた。
「それに、この事を国に報告すれば、特級冒険者を雇える額の予算を頂けるだろう。ひょっとしたら勇者の派遣もありうるかも」
これだけ古い遺跡となると、神々と竜の戦いで使用された、強力な遺物が眠っている可能性も高く、砂の国もそれを目当てで、彼ら調査隊を派遣していたのだ。
◆
砂の国王宮
「なに?それほど古い神殿で、古代エルフが関わっている?」
「はっ」
砂の国の宰相は、部下からもたらされた報告に、目を見開いて答えていた。
「しかも手付かず?」
「はっ。どうやらそのようです。そのため調査隊は、特級冒険者の雇用、もしくは勇者の派遣を願っております」
「ふむ」
(大陸中央の情勢が良くない事を考えると、強力な遺物があるならば是非とも欲しい…。もしなかったとしても、それだけ古ければ、売れば金になる物程度はあるだろう)
砂漠を間に挟んでいるとはいえ、混乱している騎士の国や、魔の国の事を考えると、強力な遺物か、金になる物は、ある方がいいに決まっていると宰相は考えていた。
「エドガーとカークの2人は、今どうしている?」
「あの2人を!?失礼しました。まだこの首都には居るはずです」
「よし。調査隊の代表を連れて、ギルドに依頼をしてこい。それと、勇者も一人だすか…」
「はっ」
宰相の部下は、エドガーとカークの名前に驚きの声を上げたが、それをすぐさま謝罪し、命令に従い動き始めた。
現在、特級冒険者最強の2人、エドガーとカークは砂の国に稀に出現する、大砂蟲を退治し終えたばかりで、まだ、砂の国に滞在していたのだ。
しかし、はっきり言うとただの調査に雇うには、どちらも費用が掛かるし、過剰戦力とも言えた。
(過剰だったか?いや、竜と戦っていた古代エルフの遺跡だ。それだけする価値はあるだろう)
しかし、時折聞こえてくる、古代エルフの遺跡から発掘された、遺物の強力さを考えると、それだけの価値はあるだろうと宰相は考えて、決断を下したのであった。
◆
「へっ、古代エルフの遺跡か。楽しみじゃねえか」
(珍しい。叔父さんが乗り気だ)
本格的な調査のため、地上から大裂け目に、次々と人員と物資が魔法やロープで降ろされている中で、特級冒険者エドガーの姪、セシルは、珍しく自分の叔父が、やる気になっているのを不思議に思っていた。
「師匠。エドガーさん乗り気ですね」
(フィンもそう思ってるのね)
自分と同年代で、同じく特級冒険者カークの弟子、フィンも、その事を師に話していた。
「ああ、昔に古代エルフの遺跡に潜ったことがあるが、そこの守護者をしていた精霊が手強くてな。まだ未熟だった時とはいえ、私達が2人がかりで何とか倒したほどだ」
「え!?そんなのが居たんですか!?」
(じゃあ今から行く遺跡も、そんなのがいる可能性が!?)
だが帰って来た答えは、彼女達を愕然とさせる内容であり、エドガーとカークが2人がかりで何とかした怪物が、ここにも居るかもしれないと思うと、背中から冷や汗が流れてしまう。
「えっと、師匠。その精霊って、この前会ったユーゴさんと比べたら…?」
「ははは。まだまだ考えが甘いなフィン。私達が全力で切り掛かっても、傷一つない御仁なのだぞ?当然、ユーゴ殿の方が上に決まっている」
「は、はあ」
自分が最強だと思っていた師匠が、一発でのされてしまった事に、若干のトラウマを覚えていたフィンが、ユーゴの話をするが、その師匠は笑いながら、そんな精霊よりも人間の方が上だと断言する。
「おら行くぞ!」
「あ、叔父さん待ってくださいよ!」
そんな風に雑談している彼等を放っておいて、エドガーはドンドンと先へと進んでいく。
「はっはあ!こりゃあ期待できるな!」
「うわあ」
そして、その先に現れた巨大な神殿を見て、エドガーは喜びを、セシルは感嘆の声を漏らした。
「初めましてエドガーさん、カークさん。この調査隊を率いるベックと申します」
「初めましてベックさん、カークです。しかし、神殿がこの大きさなら、調査隊も大規模になりますね。あそこにいるのは勇者では?」
「ええ、国王陛下が派遣してくれまして」
我関せずのエドガーに代わり、カークが調査隊の代表であるベックに挨拶しているが、その調査隊は既に神殿前で準備しており、中には勇者までここに派遣されていた。
「罠や仕掛けに対しては、こちらで対処しますので、お二人には、強力な守護者などが現れた場合に、対処してもらいたいのです」
「分かりました。出発はいつ頃です?」
「隊長準備が出来ました!」
「話をすればですな。こちらに来てすぐになりますが、よろしいでしょうかカークさん?」
「ええ。エドガーも待ちきれないようですしね」
「エドガー行くぞ!」
「ああ、今行く!」
どうやら調査団では、カーク達が最後の到着らしく、到着してすぐに、選び抜かれた20名ほどの精鋭達と調査員は、神殿の中へと足を進めるのであった。
◆
全特級冒険者に緊急通達
特級冒険者、エドガーとカークが、砂の国大裂け目深部の神殿にて敗北、転移で帰還するも現在意識不明の重体。
両名が殿を務めた事により、撤退に成功した調査隊の報告では、敵対人物は、人間種、妖精種、巨人種、魚人種、ドワーフ種の、"はじまり"を名乗る5人。
現在行方が分かっておらず、各ギルドは最大限の警戒を実施中。
状況によっては強制招集の可能性を考慮しておくように。
◆
宝箱の中身は、空けるまで分かるはずが無い。
「おい、本当にこんな所に、手つかずの遺跡があるのか?」
「間違いない。見ろ、地下に入ってから、魔力計がずっと反応している」
「依頼人殿達。体調はいかが?」
「ああ、我々は大丈夫だ」
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「あった…」
「マジかよ…」
「おお!ついに!」
上から流れ落ちてくる流砂や、岩の裂け目を潜り抜けながら、調査隊が目にしたのは、地下深くであるにも拘らず聳え立つ、荘厳な神殿の様な建築物であった。
「この建築様式…。間違いない、神々と竜との戦いが終わり、人種が誕生してすぐの時代の物だ。しかも、古代エルフの…」
「そんなに古いのかよ…。参ったな、作ったのがもし古代のエルフなら、防衛機能が生きてる場合、俺らじゃ無理だ」
「ああ。依頼主殿、一度帰って、特級冒険者の雇用を勧める。プロとして言うが、貴方方の安全を保障できない」
「そうか…。いや、そうだな。ここにあったことを突き止めたのだ。急いては事を仕損じる」
人種が誕生してすぐの時代となると、現代のエルフとは比べられない程強力な、古代のエルフがまだまだ活動していた時期でもあった。
もしそんな彼等が作ったものとなれば、神殿の防衛機能は途轍もない強力さであり、高位冒険者達はプロフェッショナルとして、調査隊の安全を保障できないと宣告する。
調査隊の代表も、名残惜しげであったが、ここで何らかのアクシデントで全滅してしまえば、折角見つけたこの神殿の情報も失われてしまうと危惧して、素直に彼等の提言を受けいれた。
「それに、この事を国に報告すれば、特級冒険者を雇える額の予算を頂けるだろう。ひょっとしたら勇者の派遣もありうるかも」
これだけ古い遺跡となると、神々と竜の戦いで使用された、強力な遺物が眠っている可能性も高く、砂の国もそれを目当てで、彼ら調査隊を派遣していたのだ。
◆
砂の国王宮
「なに?それほど古い神殿で、古代エルフが関わっている?」
「はっ」
砂の国の宰相は、部下からもたらされた報告に、目を見開いて答えていた。
「しかも手付かず?」
「はっ。どうやらそのようです。そのため調査隊は、特級冒険者の雇用、もしくは勇者の派遣を願っております」
「ふむ」
(大陸中央の情勢が良くない事を考えると、強力な遺物があるならば是非とも欲しい…。もしなかったとしても、それだけ古ければ、売れば金になる物程度はあるだろう)
砂漠を間に挟んでいるとはいえ、混乱している騎士の国や、魔の国の事を考えると、強力な遺物か、金になる物は、ある方がいいに決まっていると宰相は考えていた。
「エドガーとカークの2人は、今どうしている?」
「あの2人を!?失礼しました。まだこの首都には居るはずです」
「よし。調査隊の代表を連れて、ギルドに依頼をしてこい。それと、勇者も一人だすか…」
「はっ」
宰相の部下は、エドガーとカークの名前に驚きの声を上げたが、それをすぐさま謝罪し、命令に従い動き始めた。
現在、特級冒険者最強の2人、エドガーとカークは砂の国に稀に出現する、大砂蟲を退治し終えたばかりで、まだ、砂の国に滞在していたのだ。
しかし、はっきり言うとただの調査に雇うには、どちらも費用が掛かるし、過剰戦力とも言えた。
(過剰だったか?いや、竜と戦っていた古代エルフの遺跡だ。それだけする価値はあるだろう)
しかし、時折聞こえてくる、古代エルフの遺跡から発掘された、遺物の強力さを考えると、それだけの価値はあるだろうと宰相は考えて、決断を下したのであった。
◆
「へっ、古代エルフの遺跡か。楽しみじゃねえか」
(珍しい。叔父さんが乗り気だ)
本格的な調査のため、地上から大裂け目に、次々と人員と物資が魔法やロープで降ろされている中で、特級冒険者エドガーの姪、セシルは、珍しく自分の叔父が、やる気になっているのを不思議に思っていた。
「師匠。エドガーさん乗り気ですね」
(フィンもそう思ってるのね)
自分と同年代で、同じく特級冒険者カークの弟子、フィンも、その事を師に話していた。
「ああ、昔に古代エルフの遺跡に潜ったことがあるが、そこの守護者をしていた精霊が手強くてな。まだ未熟だった時とはいえ、私達が2人がかりで何とか倒したほどだ」
「え!?そんなのが居たんですか!?」
(じゃあ今から行く遺跡も、そんなのがいる可能性が!?)
だが帰って来た答えは、彼女達を愕然とさせる内容であり、エドガーとカークが2人がかりで何とかした怪物が、ここにも居るかもしれないと思うと、背中から冷や汗が流れてしまう。
「えっと、師匠。その精霊って、この前会ったユーゴさんと比べたら…?」
「ははは。まだまだ考えが甘いなフィン。私達が全力で切り掛かっても、傷一つない御仁なのだぞ?当然、ユーゴ殿の方が上に決まっている」
「は、はあ」
自分が最強だと思っていた師匠が、一発でのされてしまった事に、若干のトラウマを覚えていたフィンが、ユーゴの話をするが、その師匠は笑いながら、そんな精霊よりも人間の方が上だと断言する。
「おら行くぞ!」
「あ、叔父さん待ってくださいよ!」
そんな風に雑談している彼等を放っておいて、エドガーはドンドンと先へと進んでいく。
「はっはあ!こりゃあ期待できるな!」
「うわあ」
そして、その先に現れた巨大な神殿を見て、エドガーは喜びを、セシルは感嘆の声を漏らした。
「初めましてエドガーさん、カークさん。この調査隊を率いるベックと申します」
「初めましてベックさん、カークです。しかし、神殿がこの大きさなら、調査隊も大規模になりますね。あそこにいるのは勇者では?」
「ええ、国王陛下が派遣してくれまして」
我関せずのエドガーに代わり、カークが調査隊の代表であるベックに挨拶しているが、その調査隊は既に神殿前で準備しており、中には勇者までここに派遣されていた。
「罠や仕掛けに対しては、こちらで対処しますので、お二人には、強力な守護者などが現れた場合に、対処してもらいたいのです」
「分かりました。出発はいつ頃です?」
「隊長準備が出来ました!」
「話をすればですな。こちらに来てすぐになりますが、よろしいでしょうかカークさん?」
「ええ。エドガーも待ちきれないようですしね」
「エドガー行くぞ!」
「ああ、今行く!」
どうやら調査団では、カーク達が最後の到着らしく、到着してすぐに、選び抜かれた20名ほどの精鋭達と調査員は、神殿の中へと足を進めるのであった。
◆
全特級冒険者に緊急通達
特級冒険者、エドガーとカークが、砂の国大裂け目深部の神殿にて敗北、転移で帰還するも現在意識不明の重体。
両名が殿を務めた事により、撤退に成功した調査隊の報告では、敵対人物は、人間種、妖精種、巨人種、魚人種、ドワーフ種の、"はじまり"を名乗る5人。
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