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エピローグ
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あぁ…またこの時が来てしまった。
命の炎が消える時は、いつもこうして力が抜けて動けなくなるんだ。
ものすごくだるい……
ジュリオとロミ、もときとれいこ、皆で暮らし始めてからどのくらい経ったか……
ジュリオは体調を崩していた。
「ジュリオの様子はどう?」
ぐったりと横たわるジュリオを心配して、れいこが水を持ってきてくれたらしい。
「うん…先生はなるべく側にいてあげてって……」
もときがいつになくしょんぼりと落ち込んでいる。
(どうしてそんなに悲しい顔をしているの?)
ジュリオは力なく首をクッションにもたげた。
あぁ…今回はもときを見送るのではなく、見送られることになりそうだ。
良かった…れいことの暮らしがまた叶って……。
あんなに幸せそうな、もときとれいこが見られた。
それにロミのやつもいる。
ロミとは前世でも会っていたことに最近気がついて、俺達はすっかり仲良しになった。
ちょこんとジュリオの隣に座ったロミが心配そうに鼻を鳴らす。
「クゥ~ん……」
(あたし達は昔も今も犬なんだから、人間に恋い焦がれるだけ馬鹿なんだよ。本当に欲しいなら次こそ人間になって、れいこを奪い取ってみせなさいよ。あんたにできるならね)
側に寄り添うロミはそう言って励ましてくれる。
元気で優しい俺の友達。
れいこのことが大好きで、いつも彼女のことを考えて行動できる、勇敢な奴!
俺がれいこを愛する気持ちなんか、ロミに比べたら小さな子犬と変わりはないだろうなぁ…
「クゥ……」
(そうだな…でもそれはできないよ…もときかられいこを奪うなんて…俺には無理だなぁ…それにれいこが俺なんか相手にしないよ…)
ジュリオは鼻を鳴らした。
大好きだから諦めないといけないジュリオの恋は、人間の思うような成就を果たせないかもしれない。
それでもジュリオは幸せだった。
大好きなれいこと、もときと、ロミ……一緒にいられるだけでこんなに嬉しいし幸せ……。
(本当に厄介な性分ね。叶わない恋に身を焦がすなんて馬鹿だわ)
ロミは存外毒舌だが、正当な意見が言える賢い子だ。
(ああ…本当だね…)
(いつでもあたしが聞いてやるから、せいぜい悪足掻きしなさい…)
(お前は優しいね…昔も今も…)
(仕方ないじゃない…惚れた弱みよ)
(え?)
(心配しないで。あんたに何かを求めているわけじゃないから。これはあたしだけの気持ちなの…)
(いつから?)
(前世から…)
(そうか…俺は本当に馬鹿だったんだな…)
(そうね…でも馬鹿ほど可愛いもんよ。気にするなら直しなさいよね)
(ロミが直してくれるかい?)
(いいけど厳しいわよ。それでも付き合うなら直してあげる)
(ありがとう)
ー自分を思ってくれるその愛に、応える愛があっても、それはそれでいいのかもしれない……だって、誰だって独りは寂しい。傷を舐めあうような仲だっていい。そこに愛が生まれることだってあるのだから…あぁ…死ぬ時になって、こんな大事な事を知るなんてなぁ……遅いよなぁ…
はぁ…力が抜けていく…心が…満たされる……いい犬生だった…人間を愛して、愛されて、共に喜び、悲しみ、乗り越える人生に寄り添った……楽しかったなぁ…次も生まれ変わったら………否、次は俺も人間になりたいな…もときやれいこのような人がいるなら、また次の世でも会いたい…それに、ロミとも会いたいしな…会いたい……愛される喜びを知っている俺は、本当に幸せだな。
………………。
「ジュリオは眠ったみたいね」
「そうだね。ただの風邪って言っても気管支炎になったりしたら大変だから、今はゆっくり休ませてあげよう」
玲子と基希が小声で話している。
ロミは知っている。
ジュリオは死なない。
ただの風邪だってほっとけば危ないけど、もときとれいこが早々にジュリオを病院に連れていっていたもの。
でも具合が悪いジュリオはすっかり弱気になって、死ぬ気になってる。
本当に馬鹿な子……でも、そこが可愛いんだよね~。
ジュリオはまだまだ元気で長生きする。
あたしだってまだまだたくさん、れいこと遊ぶんだから死なないわ!
ジュリオが目を覚ました時、何を言ってからかってやろうか…
そんなことを考えていると、ロミは楽しくて仕方なかった。
あたしはれいこともときとジュリオがいて本当に幸せだわ。
うんと長生きして、これからもたくさん遊ぶぞ!
ロミもジュリオに寄り添って眠ることにした。
生きてるって、あったかい……
命の炎が消える時は、いつもこうして力が抜けて動けなくなるんだ。
ものすごくだるい……
ジュリオとロミ、もときとれいこ、皆で暮らし始めてからどのくらい経ったか……
ジュリオは体調を崩していた。
「ジュリオの様子はどう?」
ぐったりと横たわるジュリオを心配して、れいこが水を持ってきてくれたらしい。
「うん…先生はなるべく側にいてあげてって……」
もときがいつになくしょんぼりと落ち込んでいる。
(どうしてそんなに悲しい顔をしているの?)
ジュリオは力なく首をクッションにもたげた。
あぁ…今回はもときを見送るのではなく、見送られることになりそうだ。
良かった…れいことの暮らしがまた叶って……。
あんなに幸せそうな、もときとれいこが見られた。
それにロミのやつもいる。
ロミとは前世でも会っていたことに最近気がついて、俺達はすっかり仲良しになった。
ちょこんとジュリオの隣に座ったロミが心配そうに鼻を鳴らす。
「クゥ~ん……」
(あたし達は昔も今も犬なんだから、人間に恋い焦がれるだけ馬鹿なんだよ。本当に欲しいなら次こそ人間になって、れいこを奪い取ってみせなさいよ。あんたにできるならね)
側に寄り添うロミはそう言って励ましてくれる。
元気で優しい俺の友達。
れいこのことが大好きで、いつも彼女のことを考えて行動できる、勇敢な奴!
俺がれいこを愛する気持ちなんか、ロミに比べたら小さな子犬と変わりはないだろうなぁ…
「クゥ……」
(そうだな…でもそれはできないよ…もときかられいこを奪うなんて…俺には無理だなぁ…それにれいこが俺なんか相手にしないよ…)
ジュリオは鼻を鳴らした。
大好きだから諦めないといけないジュリオの恋は、人間の思うような成就を果たせないかもしれない。
それでもジュリオは幸せだった。
大好きなれいこと、もときと、ロミ……一緒にいられるだけでこんなに嬉しいし幸せ……。
(本当に厄介な性分ね。叶わない恋に身を焦がすなんて馬鹿だわ)
ロミは存外毒舌だが、正当な意見が言える賢い子だ。
(ああ…本当だね…)
(いつでもあたしが聞いてやるから、せいぜい悪足掻きしなさい…)
(お前は優しいね…昔も今も…)
(仕方ないじゃない…惚れた弱みよ)
(え?)
(心配しないで。あんたに何かを求めているわけじゃないから。これはあたしだけの気持ちなの…)
(いつから?)
(前世から…)
(そうか…俺は本当に馬鹿だったんだな…)
(そうね…でも馬鹿ほど可愛いもんよ。気にするなら直しなさいよね)
(ロミが直してくれるかい?)
(いいけど厳しいわよ。それでも付き合うなら直してあげる)
(ありがとう)
ー自分を思ってくれるその愛に、応える愛があっても、それはそれでいいのかもしれない……だって、誰だって独りは寂しい。傷を舐めあうような仲だっていい。そこに愛が生まれることだってあるのだから…あぁ…死ぬ時になって、こんな大事な事を知るなんてなぁ……遅いよなぁ…
はぁ…力が抜けていく…心が…満たされる……いい犬生だった…人間を愛して、愛されて、共に喜び、悲しみ、乗り越える人生に寄り添った……楽しかったなぁ…次も生まれ変わったら………否、次は俺も人間になりたいな…もときやれいこのような人がいるなら、また次の世でも会いたい…それに、ロミとも会いたいしな…会いたい……愛される喜びを知っている俺は、本当に幸せだな。
………………。
「ジュリオは眠ったみたいね」
「そうだね。ただの風邪って言っても気管支炎になったりしたら大変だから、今はゆっくり休ませてあげよう」
玲子と基希が小声で話している。
ロミは知っている。
ジュリオは死なない。
ただの風邪だってほっとけば危ないけど、もときとれいこが早々にジュリオを病院に連れていっていたもの。
でも具合が悪いジュリオはすっかり弱気になって、死ぬ気になってる。
本当に馬鹿な子……でも、そこが可愛いんだよね~。
ジュリオはまだまだ元気で長生きする。
あたしだってまだまだたくさん、れいこと遊ぶんだから死なないわ!
ジュリオが目を覚ました時、何を言ってからかってやろうか…
そんなことを考えていると、ロミは楽しくて仕方なかった。
あたしはれいこともときとジュリオがいて本当に幸せだわ。
うんと長生きして、これからもたくさん遊ぶぞ!
ロミもジュリオに寄り添って眠ることにした。
生きてるって、あったかい……
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