3 / 22
初めて会うまで
しおりを挟む出会ってからの約1年、実は一度も会うことはしなかった。
理由は特にない。
住んでいる場所も地元も車で10分もあれば行ける隣町。
私の方は男友達としか思ってなかったし、「遊ぶのは構わないけど、彼氏いるからさすがに2人ではな~」と考えていたので誘わなかった。
そしておそらくそれは綧も同じ。
やりとりをする中で教えたFBのアカウントの基本データに『20✖︎✖︎年●月~交際中』とあるのを見て、「なんだ、彼氏いるんじゃん」と言っていたのでまず間違いない。
その当時の綧はその辺はきちんとしていた。
それから当たり障りのないやりとりを月1くらいのペースで繰り返し、会う約束をすることもなく月日は流れて約1年後。
この1年の間に当時の彼氏 雅(まさ)とは遠距離かつお互いに転職をしたことで、更に忙しくなりますます会える機会が減りすれ違いの末に破局。
5年もの間連れ添い、優しくて暖かい、嫌なとこなんてない相手だった。それどころか私自身の考え方を大きく変えるきっかけとなったのが雅で、そんな相手だからそこかなり引きずることとなる。
そんな時、まるで『待ってました!』と言わんばかりのタイミングで綧から「今日の夜、カラオケ行こう!」と唐突にお誘いの連絡がきた。
どうやら鬼のように続いていた連勤が、あと1日行けば休める!という逸る気持ちから「あと1日頑張るためにも遊びたい」ということだった。
(当時の綧の言う残業日数と時間は午前様を回るのは当たり前で、連勤も20日を超えていたので労働基準法的に大丈夫なの?と思っていた。)
別れた後で気晴らしもしたいし、仕事の後予定もなかったので即OK。
この時、初めて綧と会うことになった。
あっさり約束をしたものの、我に返り会う直前まで私は不安にかられることになる。
お互いに写メ交換なんてものは改めてしていなかったけど、FBを通じて顔は知っていた。
「なんだかんだ会ったことはないけど、連絡は取り合ってたし話せないことはないと思う。けど…写メと顔違いすぎたら?」
そう、この時まで綧の顔はプリクラ画像でしか知らなかった。
私の載せていた写メはほぼ全てスマホから撮影した写メで、加工なんてものは一切していないものを載せていた。
なので私本人とはそう違いはないと思う。しかし綧はデカ目効果や小顔効果、果ては美肌効果まであしらわれたプリクラ画像。
「加工のない綧といきなり会って、私わかるのか?というか実物と違いすぎて私引いたりとかしてしまわんやろか?」
など、ぐるぐると考えてしまって迷走。
そして約束の時間。
いろんな不安にかられながらも綧を待っていると、爆音を響かせながら1台のBbがやってくる。
綧だ。
私の自宅の周辺は車通りが多い所から少し外れていたので昼間でも比較的静かなとこにあった。なので夜ともなると改造車やバイクのマフラーの音や、爆音の音楽など大きな音はより一層響き渡るようなとこにあった。
ましてや車を停めた場所は高架下で音が反響して更に響き渡り、何かとすぐ通報したがるおじさんの家の隣。
通報されないか焦る私の心配をよそに、綧はニコニコしながら助手席を開けて
「おつかれ!早くカラオケいこう!」
と手招きをしていたのですぐに乗り込み移動した。
こうして慌ただしくも初対面を済ませた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる