彼が他人になるまで

あやせ

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❇︎試験1週間前 1

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少し遡って試験を1週間前に控えたある日、いつものように綧と車にいるときに父からの電話が鳴る。

嫌な予感しかしない。

私の家族構成は両親と5つ下の妹と4人家族。そして家族仲はそれほど悪くはない、むしろ良い方だと自負している。
しかし母や妹とは他愛のないことも含め連絡のやり取りをよくするが、父とは私がやらかしてる時や、やらなければならないことをしていないことへのお叱りなど何かないと連絡のやりとりすることはない。

なので、父から連絡がある時は私にとって9割型よくない内容となる。
なんのための電話なのか、なんとなく察している私は後ろめたさから出たいはずがない。

「電話鳴ってるよ?」
「知ってる、父さんから。」
「出なよ、ずっと鳴っとるやん。」
「ロクな内容じゃないの目に見えてるから嫌だ。」

何度も鳴る電話に出ない私を不思議に思う綧に、おおよそではあるが予測できうる内容を話し出たくない旨を伝える。

「でもずっと鳴ってるやん?出ればいいやん、俺が一緒におるんやし。」

その俺と一緒にいるのが原因なんだって。
と、声を大にして言いたい気持ちを噛み殺して渋々電話に出る。

「…もしもし」
『もしもし?お父さんやけど、あやせ今どこおるん?』
「なんで?」
『うん、どこに誰とおるん?』
「だけんなんでなん?」
『わからんから聞きよる。お父さん別に怒ってるわけじゃなかと、ただ来週試験やから彼とおるのなら話がしたいだけと。』

嫌な予感は的中。
おそらく私と話したところで、斜に構えた私が素直に応じると思ってない父は綧と直接話すことを選んだろう。

顔を合わせて話すならまだしも、電話越しとなると携帯を渡した瞬間2人の間でどんな話が交わされるのか私にはわからない。
試験前であることを話したいと言葉をこぼしていたことから、なんとなくではあるが察しはついた。
ついたからこそ「試験終わるまで会うな。」「試験前なのに連れ回して何考えてる?」「今すぐ帰らせろ。」というような話をされるのではないかと思い電話口に出すことを拒否した。
普通に勉強している時でさえ臍を曲げることのある綧に、これらのような話をされたら機嫌を損ねないはずがないからだ。

しばらく父との攻防戦をしたのち、横でおとなしく聞いていた綧が口を開く。

「あやせのお父さんはさ、俺と話がしたいとやろ?なら話すよ。」
「え?いや、やだよ。」
「なんで?」
「何言われるか分かったもんじゃない。」
「ならなおさら話すよ。あやせがお父さんとこうやって話すより、俺が直接話せばいいだけ。ちゃんと筋は通すよ。」

電話に出ると綧に言われてしまうと代わらざるを得なくなり、私も折れて電話を綧に渡す。





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