彼が他人になるまで

あやせ

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それから父と綧が10分ほど話し電話は終了。

恐る恐る携帯を綧から受け取り、様子を見つつ電話の内容と結論を聞く。

内容はやはり試験を1週間後に控えているという事と、私の会社の規定でその資格を取得するまで試験を何度でも受けなければならないという話だった。

ただ予想外だったのは「あやせを今すぐ帰らせろ。」や決定事項での「試験が終わるまで会うな。」という話ではなかったこと。
そして1番心配していた「どういうつもりで連れ回してるのか。」という旨の話は一切なかったこと。

「まぁ試験前やけん勉強ちゃんとしてるか心配してるってことやったよ。やけん一緒にてもいいけど、勉強させてって。」
「そっか。ごめんにいきなり電話出てもらって、怒ってる?」
「なんで?ちゃんと話できたし、怒ってないよ。あと、あやせちょっと俺のひざに下向いて頭乗せて。」

なんで?と思いつつも綧の膝に頭を乗せる。何か首元でもぞもぞとしてるのはわかるが、いいよというまで上向かないでと言われたので待つ。
ちょっとして「はい、いいよ。」と言われ首元を見る。

「え?」
「お守り代わり。」

私の身につけているネックレスに、綧がいつも身につけているシルバーのトップが追加されてたいた。

「ピアスのトップやけど、俺が長年気に入ってるやつ。試験勉強1人で頑張るのきつかろ?これ俺の代わりと思って勉強がんばろ。」

素直に嬉しかった。
勉強が嫌いなわけではないが、1人で続けるのは個人的に好きではなかったので応援してもらえるのは本当に嬉しかった。
綧の応援もあるから、試験までの残り1週間がんばろう!と気合を入れ直した瞬間でもあった。

が、しかしこの次の日から綧の勉強中の茶々いれはヒートアップしたわけだが…実はそれだけではなかった。

綧からは父との電話で「一緒にていいけど、勉強させて」と言われたと聞いていたが、本当は「試験までの1週間、あやせが勉強に専念できるように会うのを控えてほしい。その後は試験結果が出るまでの間は少なくとも落ち着くからお願いしたい。」と伝えていたらしい。
つまり遠回しではあるが、綧に私の勉強の邪魔をしないでほしいと伝えていた。

この時の事実を私が知ったのは、数年先の退職した後になる。
綧の言うことを疑いもせずまんま受け取った私も私だが、まさかはっきり「会うのを控えてほしい」と言われているのにも関わらず堂々と話を脚色されているとは思わなかった。

そして父と話した翌日から前日の話とは真逆な行動を取る綧。
この一件から既に両親は綧に対し不信感を抱くことになったとも聞いた。













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