彼が他人になるまで

あやせ

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理不尽な理由 2

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仕事中、本来は携帯を所持したまま勤務は厳禁だった。

しかし一部の人の間ではあるが、そこは暗黙の了解でポケットに忍ばせ勤務していた。
(保育園や学校からの緊急の連絡は店に電話かかってきていたけど、身内からの連絡は直で入ることが多かった。)
私もその1人。とはいっても私はそれに便乗して持ち歩いているだけで、私の場合は綧と連絡を取るため。
以前はロッカーに置いて勤務にあたることがたまにあったが、あることをきっかけに必ず持ち歩くことにした。

 綧の理不尽な八つ当たりがたまに垣間見えるようになってからしばらくして、例にも漏れず仕事中に何かイライラすることがあったらしい綧からラインが入る。
けどタイミング悪くこの日は地区長が店に来店する日で、何時に来店するかわからない地区長対策で携帯はロッカーに朝から直していた。

いつもより丁寧に業務にあたり、13時頃に休憩に入る。携帯を確認すると鬼のような件数の綧からのライン数々。
前半部分のラインを要約すると

『週明け納車の予定だった〇〇の営業がいきなり来て、15時に引き上げに来るとか言い出した。週明けって聞いてたから今日無理って言ったら15時じゃなくてもなんとか今日中に仕上げてげな。』
『明日納車のやつを優先せんとこっちが納車できんくなるって言ったのに、小山さんが勝手に引き受けとる。』
『明日納車のやつもせないかんし、何時でもいいけん今日中に仕上げてとか言われとるし、今日帰れんやろーやー。』

前半部分を読んで「えーそんな無茶苦茶な!?」と綧の心配をした。

心配しつつ続きを読んで驚愕。
後半のラインを要約すると

『ねえ、なんで見てないと?シカト?』
『自分は俺に愚痴る癖に、俺が愚痴ったら話も聞いてくれんったい。あやせはそんな人なわけね、あっそ。』
『自分さえよければいいっちゃろ。あなたも〇〇の営業と一緒やね。』
『シカトや。』

え?え?なんで?何がどうなったらそうなった??

前半と後半とであからさまに苛立ちの矛先が私に向いている。
私も今日朝から仕事で、ラインを送ってきている時間帯は勤務中なのも綧は知っている。
勤務中に返信を返すことはあったけど、それはあくまで返せる時。
返せなければ休憩時間や退勤後に返すとこも約束していた。

何度も読み返し言葉をなくしている間にもラインが来る。

『今度は既読スルーですか。』

ハッと我に帰り慌てて返信を返す。

『返信遅くなってごめんね。何時に来るかわからんけど、地区長が今日来るらしくて携帯ロッカーに置いてた。
大丈夫?綧ちゃんに何も言わんで勝手に期間短縮されたん?誰かに手伝ってもらうとかって…やっぱできんと?』

返信を返してすぐに返信が来る。

『はいはい。』
『そうやね。あなたには関係ないけどね。』

あ、めっちゃキレてる。瞬時に察した。
休憩上がった後も返信が途切れると綧からの追撃は、退勤し合流するまで続いた。

『都合が悪くなると逃げる。』
『なんか言わんや。』
『またシカトや。』

とにかく誰が見てもわかるくらいの八つ当たり。
こちらが謝っても、諭してもキレる。
話しても、口を閉ざしてもキレる。
どうしようもない。

こういった『会社への不満ライン』をきっかけに勤務中にキレ出すことは定期的に繰り返された。

そして綧の気が済むまで八つ当たりは続き、有耶無耶な感じで普段通りな態度で接し出す。

ひどい時は電話を私が出るまで何度もかけてくることもあったが、それはまた別の話で書くとする。

このことがきっかけで
『仕事中でも電話かけてくることあるのなら、出れんかったらいかんけん持っとこう』
と綧の機嫌を損ねないためが大前提で、常に持ち歩くようになった。






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