彼が他人になるまで

あやせ

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理不尽が引き起こした初めての大喧嘩 1

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付き合いだして1ヶ月を過ぎたあたりから徐々に自宅で寝ることは減り、4ヶ月を迎える頃には完璧に惇の家で寝泊まりしていた。

当然両親はよくは思っていなかったけど、当時惇に盲目な私は親の言うことなど聞くわけもなかった。

そんなある日、母から一通のラインが届く。

『町からあやせ宛にハガキ来てるやつまだ行ってないでしょ?無料で子宮癌検診受けれるやつ。有効期限が誕生日までだから、あなたもまだ20代とはいえもう26なんだから受けときなさい。』

「あーそんなの誕生日ん時に来てたなー。」と、ぼんやりラインを見ながら考える。
正直最初はがん検診とかまだいいやとか思ってたけど、そういった婦人系の検診自体受けたことなかったから「せっかく無料で受けれるなら受けよう。」
と思い立ち、惇にこのことを話す。

最初こそ「婦人系は男の俺にはわからないけど、癌検診は受けてて損はないし行っておいで。」と快く聞いてくれていた。

最初だけ、本当に最初だけ。

しばらく癌検診の話をした後に、惇からとある提案を持ち掛けられる。

「てかせっかく癌検診受けれるなら、一緒に他の検査も受けてきたら?」
「他って?」
「性病とか、癌じゃなくても子宮系のやつとか。」
「あー…。」

癌検診しか受ける気なかった私は少し悩んだ。検査って何するか知らないし、『ついでとはいえ他の検査までしてたら1日潰れるんじゃない?』とか考えだしたら1日潰れるのはやだなーと思ってしまってすぐには返事できなかった。

その悩んでいる間にも「なかなかこういう検査ってすることないし、この機会にしたら?」とか「検査して何もなければないで安心やん?」とか惇から勧められ、『検査したことないのは事実だし、きっかけないと私たぶんしないししとこう!惇ちゃんの言う通り、何もなければ安心だし!』と思い受けることを決めた。

そして豹変される。

「そやね!そういうの受けたことないし、なんやかんや26やしこの機会に一緒に受けとこうかな!」
「あっそ、絶対ないって言い切れんのやね。てことは俺と付き合った後にも俺以外と、そういうことしたってことやろ。」
「はい!?」

今の今まで自分が私に検査を受けることを勧めておいて、承諾した途端に本当一瞬で手のひらを返された。

困惑しつつも
「そんなことないよ。ただ本当にそういった検査受けたことないから、生理不順でもあるからそういう相談もしたくて検査受けようと思っただけよ?」
と説明するも
「はいはい、口だけ口だけ。本当に潔白ならそんな検査受けなくていいやろ。」
「一緒にいない間何してるかわからんけんね。男とでもおるんやろ。」

空いた口も塞がらなければ、何も言葉が浮かばない。
ただ「そんなことない。」「そんな男なんかいない。」と否定し続けるしかできない。
そして惇はその言葉をも否定し続ける。






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