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第6章 雪山の一夜
第92話 女生徒たち
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「チャミ、お尻に青アザできてるよ!」
「ゲー、ヤダぁ! きっとさっき板の上にコケたときのだー」
食後の温泉大浴場は、昨日より多くの生徒で賑わっていた。
スキー研修・初日は、特にケガ人も出ず、晴天のうちに終わった。
天気がよかったせいか気温は温かめで、研修は汗ばむほどだったのと、
夕食のジンギスカンで付いたラム肉の臭いを洗い流したい、というので、昨日風呂をサボった生徒も今日はこぞって大浴場を利用していた。
「あ、アキラ先生だ」
聡はタオルを胸の前にあてて、女生徒たちの嬌声で賑わう大浴場に足を踏み入れた。
客室のバスルームを生徒に占領された聡も、昨日は結局風呂に入りそびれたのだが、今日はそうはいってられない。
今日も自室のバスルームは『生理』軍団に占拠されているので、聡はあっさりと生徒たちと一緒に大浴場を利用することにしたのだ。
石張りで広い温泉大浴場は、外に露天風呂があることもあり、荒江高校・2クラスの女生徒30人あまりがいっぺんに入っても、それほど窮屈ではない。
浴槽に満ちる少々褐色に濁った温泉の湯がいかにも気持ちよさそうだ。
聡は生徒たちに笑顔で声をかけながら、洗い場のカランの前に腰を下ろした。
「すっげー、ナイスバディ」
浴槽にいたチャミ&カリナの声が揃ってしまった。
「ボン、キュッ、ボンの見本みたいな?」
「エロイよねー」
女風呂では、あまり体を見ないようにする、という暗黙のエチケットがあるのだが、
チャミ&カリナはそれをすっかり忘れて、洗い場で泡だらけになっている聡の体を浴槽から観察していた。
「巨乳だったらサ、うちらのクラスのトモちゃんとか、1組のサユリとか、もすごいけど、センセーの場合、ウエストが細っ!
それにあんなに胸でっかいのに、腕とか折れそうだしー」
スタイルの観察は女同士のほうが、シビアである。
まもなく、聡が体を洗い終わったのか、浴槽に沈む二人のほうにやってきた。
「センセー、巨乳~ぅ」
「もー、どこみてんのよ」
聡は笑いながら、でも女同士なので特に隠すこともなく、裸体を温泉に沈めた。
浴槽に入ってしまえば、少々濁り気味の湯で、体の詳細は見えなくなる。
「おっぱいが浮いてる~」
聡の豊かな乳房は、柔らかなその上半分を丸い形で、濁り湯に浮かべていた。
聡にとってはいつものことだが、チャミ&カリナには珍しいらしい。
「ホントだ、すごーい」
「いつそんなに大きくなったんですかー?」
「それ知りたい!それと今何カップ?」
バストについて聡に質問攻めするチャミ&カリナだった。
バストの大小は女の子にとっては、死活問題といってもいいほどで、興味があるのだ。
「高2ぐらいのときは、アナタたちより小さかったわよ」
と、答えつつ、聡はいつこんなに成長したかを思い出して、赤くなる思いがした。
親ゆずりではあるけれど……やはり、『経験』してから格段に大きくなったと思う。
高2の最初はやっとBカップだったのだが、高校を卒業する時は2ランクも成長していた。
揉まれたウンヌンよりも、その行為で、女性ホルモンが活発に出るようになったからだろう。
ちなみに、今は卒業時よりさらに成長しているのだが……。
「ところで、よく筋肉もんどいたほうがいいわよ。特に腿とか」
なまめかしいことを思い出しそうになった聡は、話題をバストから逸らすべく、話の流れをぶったぎって、無理やりアドバイスを始めた。
そのあと聡はチャミ&カリナに誘われて、職員ミーティングのあと、女生徒の部屋で行われるトランプに参加することになった。
女生徒の誘いは、聡にとって胸がジンとするほど嬉しいものだった。
こんなとき、教師冥利につきる思いがする。
スウェットに着替えて、ラウンジで行われる職員ミーティングに参加しようとしていた聡のもとにメールが入った。将だった。
>あとで、また昨日の場所で会おうよ。二人で
とある。聡は、
>ゴメン。今日は、女の子たちにトランプに誘われたからパス
と、それに嬉しいという意味の顔文字を添えて返信した。
特にけが人もなかったということで職員ミーティングは『明日も気を抜かないようにしましょう!』で終わった。
「アキラセンセー、こっちだよ」
ミーティングが終わって解散した聡は、ちょうど廊下をいくチャミ&カリナに声をかけられた。
トランプはどうやら男子の部屋でやるらしい。
実は、聡からメールを受け取った将が急遽、セッティングさせたのだ。
将が直接召集すると緊張するだろうから、女子の受けがいい兵藤に客室間電話で誘わせる。
兵藤はパシリをさせられたことにブツブツいいながらも、イベントの内容自体は賛成だったのか、
まんざらでもなさそうに女子の部屋に電話をしていた。
廊下を行く女子たちは、あきらかにワクワクしていた。
毎日のように顔をあわせている男子でも、こんな風に夜、畳の部屋で遊ぶのは、ちょっとだけスリリングなのだ。
修学旅行の夜、男女混じってトランプなどで遊ぶのは、お約束のようなものだろう。
そういう気持ちに覚えがある聡は、まあ不純異性交遊するわけじゃないし、トランプだけだし。
自分もついてることだからまあいいか、と黙認した。
トランプの『会場』となった一番広い和洋室・6人部屋には、すでに多くのジャージ姿の男女生徒が集まっていて、チャミやカリナに聡を入れると、全部で16人になった。
よくよく聞くと、カップルに部屋を明渡したらしい。
「ちょ、それって不純異性交遊!」
それを聞いて、教師としてさすがに止める立場にある聡は、いきり立ったが、
「まー、いいじゃん」
と生徒たちにたしなめられた。きわめつけに、将に、腕を掴まれて、
「本気で愛し合ってんだし、不純じゃないじゃん。ね?」
と瞳を見つめられて、さらに『俺たちだってサ』と耳元で囁かれて、聡は何も言えなくなった。
こんなふうに丸め込まれるなんて、教師失格……と聡はため息をついた。
生徒たちのほうは、すでにトランプのほうに意識が行っている。
「人数多すぎじゃなーい?」
「トランプ2つ混ぜて使えばいいよ」
「てか、ちょうど男女同数だからペアになったらいいよ」
と提案したのは将である。もちろん聡とペアになるのを狙っている。
ペア案にみんな賛成したので、クジでペアをつくる。
しかし、クジは平等に、と男女別につくってそれを合わせるようにしたので、将の企みは見事はずれた。
聡は兵藤と、将は真田由紀子とペアになってしまい、将はがっかりした。
トランプ2つを混ぜて、大富豪ゲームを始めたのだが、トランプが2つ混ざるとなかなか難しい。
順番が回ってくるたびにペアでの作戦談義が行われる。
扇のように広げたトランプの前で、顔をよせあって仲良くあれこれ相談している丸刈りの兵藤と聡を見るにつけ、将は面白くない。
将の相方の真田由紀子は大人しく、将が何かを相談しようと声をかけるたびに、そのおかっぱの丸顔を真っ赤にしてうつむいてしまう。
将は、さっきのスキー研修中、『ジョン・トラボルタ』出演映画のように、
由紀子が講師の股のしたを潜り抜けた様子を思い出して、笑いがこみあげそうになった。
それを必死でこらえていたせいか、よけいにクールな態度になっていたかもしれない。
さて、ゲームのほうは、配られたカードにツキがなかったのか、将&由紀子チームと、聡&兵藤チームが最後に残った。
切り札を隠しているのかを窺いながらの攻防戦となった。
しかし、将一人で考えているような将組である。
軍配は聡&兵藤チームにあがった。
「ヤッター!」
手を取り合って大貧民にならなかったことを喜ぶ聡と兵藤。
「くっそお」
負けた将は、頬を膨らましながら、大量になって繰りにくいトランプを繰っていく。
負けた者が次のゲームのトランプを配る役目になっている。
ちなみに最後にする罰ゲームは、大貧民と大富豪による王様ゲームだ。
今、大富豪は井口&チャミ組である。このままだと何を命令されるかわかったもんじゃない。それに元来、負けず嫌いの将である。
次こそ大貧民は脱出したいと、トランプを念入りに繰った。
そんな将の横にいた由紀子が、蚊の泣くような声で
「ごめんなさい」
と謝った。将は一瞬キョトンとした。由紀子は丸顔を真っ赤にさせて泣きそうになりながら、
「……ごめんなさい。私のせいで……」
と視線を下に向けていた。
「ハァ?」
将は、なんで謝られるのか本当にわからなかったが、泣きそうな由紀子が可哀想になり、
なるべく優しい声で
「ユキコのせいじゃないよ。気にするな」
と言ってやった。
「でも……」
下を向いた由紀子の目から、ついにポタポタと涙が落ちてジャージの腿に染み込む。
皆が由紀子の異変に気付いてシーンとなった。
固唾を飲んで動向を見守る。聡は、教師として何か、由紀子に声をかけようとしたが、その前に
「ほら、泣くなよ。ユキコ、な?」
と将が、由紀子の頭をくしゃくしゃと撫でた。
由紀子はビクッと体をふるわせて、目を真ん丸く見開いた。顔がさらにカーッと赤くなる。
「な、なんだよ」
由紀子の反応に将のほうが面食らっている。
ウブな由紀子は、男子に……しかも将に頭を撫でられて、本当にショックだったのだ。
クラスで一番大人っぽくて近寄りがたい『イケメン』の将に。
由紀子は、どうしていいかわからなくて、ついに、嗚咽を始めた。
「あー、将が真田を泣かせたー」
「なーかせた~」
井口やカイトが、小学生のようにはやし立てる。
「えー、何、俺のせい? もー、泣くなよぉ、ユキコォ」
将は頭をかいたり、由紀子の顔をのぞきこんだりして、弱り果てている。
あわてる将が可笑しくて、聡はクスッと笑った。
その騒ぎの中、客室の電話が鳴る。
電話をとった聡に受話器の向こうで、看護士の山口の
「アキラ先生、ちょっとお話があるんですけど」
という声が聞こえた。
部屋が騒がしいので、意味を聞き取るだけでせいいっぱいだったが、なんだか深刻な声に聞こえた。
聡は、隣にいた相棒の兵藤に「ちょっと呼び出されたから行ってくるね」と断って、部屋を出る。
山口はなぜか部屋の前の廊下で聡を待っていた。
「アキラ先生、ちょっと……」
聡の姿を見つけると、声をひそめて手招きした。
「よかった、今ちょうど、生徒がお風呂から出てくれたところなんですよ。次の生徒は入れてません」
唯一客室のバスルームが使える聡と山口の部屋は、一人で風呂に入りたい生徒が交代でやってきていたのだ。
山口は部屋のドアを開けると、あたりを用心深く見回すようにして、聡と一緒に客室に入った。
聡と山口の客室は和洋室になっているのだが、和室のほうに床が延べられて、ショートカットの女生徒がそこで眠っていた。
聡は、最初、それが誰だかわからなかった。
が、窓側のソファに置いてある長い黒髪のウィッグを見つけ、驚いてもう一度その寝顔を見た。
それはまぎれもなく葉山瑞樹だった。
「彼女、やっぱり妊娠しているそうです……。3ヶ月めだとか」
山口は重い口調で聡に告げた。
「ゲー、ヤダぁ! きっとさっき板の上にコケたときのだー」
食後の温泉大浴場は、昨日より多くの生徒で賑わっていた。
スキー研修・初日は、特にケガ人も出ず、晴天のうちに終わった。
天気がよかったせいか気温は温かめで、研修は汗ばむほどだったのと、
夕食のジンギスカンで付いたラム肉の臭いを洗い流したい、というので、昨日風呂をサボった生徒も今日はこぞって大浴場を利用していた。
「あ、アキラ先生だ」
聡はタオルを胸の前にあてて、女生徒たちの嬌声で賑わう大浴場に足を踏み入れた。
客室のバスルームを生徒に占領された聡も、昨日は結局風呂に入りそびれたのだが、今日はそうはいってられない。
今日も自室のバスルームは『生理』軍団に占拠されているので、聡はあっさりと生徒たちと一緒に大浴場を利用することにしたのだ。
石張りで広い温泉大浴場は、外に露天風呂があることもあり、荒江高校・2クラスの女生徒30人あまりがいっぺんに入っても、それほど窮屈ではない。
浴槽に満ちる少々褐色に濁った温泉の湯がいかにも気持ちよさそうだ。
聡は生徒たちに笑顔で声をかけながら、洗い場のカランの前に腰を下ろした。
「すっげー、ナイスバディ」
浴槽にいたチャミ&カリナの声が揃ってしまった。
「ボン、キュッ、ボンの見本みたいな?」
「エロイよねー」
女風呂では、あまり体を見ないようにする、という暗黙のエチケットがあるのだが、
チャミ&カリナはそれをすっかり忘れて、洗い場で泡だらけになっている聡の体を浴槽から観察していた。
「巨乳だったらサ、うちらのクラスのトモちゃんとか、1組のサユリとか、もすごいけど、センセーの場合、ウエストが細っ!
それにあんなに胸でっかいのに、腕とか折れそうだしー」
スタイルの観察は女同士のほうが、シビアである。
まもなく、聡が体を洗い終わったのか、浴槽に沈む二人のほうにやってきた。
「センセー、巨乳~ぅ」
「もー、どこみてんのよ」
聡は笑いながら、でも女同士なので特に隠すこともなく、裸体を温泉に沈めた。
浴槽に入ってしまえば、少々濁り気味の湯で、体の詳細は見えなくなる。
「おっぱいが浮いてる~」
聡の豊かな乳房は、柔らかなその上半分を丸い形で、濁り湯に浮かべていた。
聡にとってはいつものことだが、チャミ&カリナには珍しいらしい。
「ホントだ、すごーい」
「いつそんなに大きくなったんですかー?」
「それ知りたい!それと今何カップ?」
バストについて聡に質問攻めするチャミ&カリナだった。
バストの大小は女の子にとっては、死活問題といってもいいほどで、興味があるのだ。
「高2ぐらいのときは、アナタたちより小さかったわよ」
と、答えつつ、聡はいつこんなに成長したかを思い出して、赤くなる思いがした。
親ゆずりではあるけれど……やはり、『経験』してから格段に大きくなったと思う。
高2の最初はやっとBカップだったのだが、高校を卒業する時は2ランクも成長していた。
揉まれたウンヌンよりも、その行為で、女性ホルモンが活発に出るようになったからだろう。
ちなみに、今は卒業時よりさらに成長しているのだが……。
「ところで、よく筋肉もんどいたほうがいいわよ。特に腿とか」
なまめかしいことを思い出しそうになった聡は、話題をバストから逸らすべく、話の流れをぶったぎって、無理やりアドバイスを始めた。
そのあと聡はチャミ&カリナに誘われて、職員ミーティングのあと、女生徒の部屋で行われるトランプに参加することになった。
女生徒の誘いは、聡にとって胸がジンとするほど嬉しいものだった。
こんなとき、教師冥利につきる思いがする。
スウェットに着替えて、ラウンジで行われる職員ミーティングに参加しようとしていた聡のもとにメールが入った。将だった。
>あとで、また昨日の場所で会おうよ。二人で
とある。聡は、
>ゴメン。今日は、女の子たちにトランプに誘われたからパス
と、それに嬉しいという意味の顔文字を添えて返信した。
特にけが人もなかったということで職員ミーティングは『明日も気を抜かないようにしましょう!』で終わった。
「アキラセンセー、こっちだよ」
ミーティングが終わって解散した聡は、ちょうど廊下をいくチャミ&カリナに声をかけられた。
トランプはどうやら男子の部屋でやるらしい。
実は、聡からメールを受け取った将が急遽、セッティングさせたのだ。
将が直接召集すると緊張するだろうから、女子の受けがいい兵藤に客室間電話で誘わせる。
兵藤はパシリをさせられたことにブツブツいいながらも、イベントの内容自体は賛成だったのか、
まんざらでもなさそうに女子の部屋に電話をしていた。
廊下を行く女子たちは、あきらかにワクワクしていた。
毎日のように顔をあわせている男子でも、こんな風に夜、畳の部屋で遊ぶのは、ちょっとだけスリリングなのだ。
修学旅行の夜、男女混じってトランプなどで遊ぶのは、お約束のようなものだろう。
そういう気持ちに覚えがある聡は、まあ不純異性交遊するわけじゃないし、トランプだけだし。
自分もついてることだからまあいいか、と黙認した。
トランプの『会場』となった一番広い和洋室・6人部屋には、すでに多くのジャージ姿の男女生徒が集まっていて、チャミやカリナに聡を入れると、全部で16人になった。
よくよく聞くと、カップルに部屋を明渡したらしい。
「ちょ、それって不純異性交遊!」
それを聞いて、教師としてさすがに止める立場にある聡は、いきり立ったが、
「まー、いいじゃん」
と生徒たちにたしなめられた。きわめつけに、将に、腕を掴まれて、
「本気で愛し合ってんだし、不純じゃないじゃん。ね?」
と瞳を見つめられて、さらに『俺たちだってサ』と耳元で囁かれて、聡は何も言えなくなった。
こんなふうに丸め込まれるなんて、教師失格……と聡はため息をついた。
生徒たちのほうは、すでにトランプのほうに意識が行っている。
「人数多すぎじゃなーい?」
「トランプ2つ混ぜて使えばいいよ」
「てか、ちょうど男女同数だからペアになったらいいよ」
と提案したのは将である。もちろん聡とペアになるのを狙っている。
ペア案にみんな賛成したので、クジでペアをつくる。
しかし、クジは平等に、と男女別につくってそれを合わせるようにしたので、将の企みは見事はずれた。
聡は兵藤と、将は真田由紀子とペアになってしまい、将はがっかりした。
トランプ2つを混ぜて、大富豪ゲームを始めたのだが、トランプが2つ混ざるとなかなか難しい。
順番が回ってくるたびにペアでの作戦談義が行われる。
扇のように広げたトランプの前で、顔をよせあって仲良くあれこれ相談している丸刈りの兵藤と聡を見るにつけ、将は面白くない。
将の相方の真田由紀子は大人しく、将が何かを相談しようと声をかけるたびに、そのおかっぱの丸顔を真っ赤にしてうつむいてしまう。
将は、さっきのスキー研修中、『ジョン・トラボルタ』出演映画のように、
由紀子が講師の股のしたを潜り抜けた様子を思い出して、笑いがこみあげそうになった。
それを必死でこらえていたせいか、よけいにクールな態度になっていたかもしれない。
さて、ゲームのほうは、配られたカードにツキがなかったのか、将&由紀子チームと、聡&兵藤チームが最後に残った。
切り札を隠しているのかを窺いながらの攻防戦となった。
しかし、将一人で考えているような将組である。
軍配は聡&兵藤チームにあがった。
「ヤッター!」
手を取り合って大貧民にならなかったことを喜ぶ聡と兵藤。
「くっそお」
負けた将は、頬を膨らましながら、大量になって繰りにくいトランプを繰っていく。
負けた者が次のゲームのトランプを配る役目になっている。
ちなみに最後にする罰ゲームは、大貧民と大富豪による王様ゲームだ。
今、大富豪は井口&チャミ組である。このままだと何を命令されるかわかったもんじゃない。それに元来、負けず嫌いの将である。
次こそ大貧民は脱出したいと、トランプを念入りに繰った。
そんな将の横にいた由紀子が、蚊の泣くような声で
「ごめんなさい」
と謝った。将は一瞬キョトンとした。由紀子は丸顔を真っ赤にさせて泣きそうになりながら、
「……ごめんなさい。私のせいで……」
と視線を下に向けていた。
「ハァ?」
将は、なんで謝られるのか本当にわからなかったが、泣きそうな由紀子が可哀想になり、
なるべく優しい声で
「ユキコのせいじゃないよ。気にするな」
と言ってやった。
「でも……」
下を向いた由紀子の目から、ついにポタポタと涙が落ちてジャージの腿に染み込む。
皆が由紀子の異変に気付いてシーンとなった。
固唾を飲んで動向を見守る。聡は、教師として何か、由紀子に声をかけようとしたが、その前に
「ほら、泣くなよ。ユキコ、な?」
と将が、由紀子の頭をくしゃくしゃと撫でた。
由紀子はビクッと体をふるわせて、目を真ん丸く見開いた。顔がさらにカーッと赤くなる。
「な、なんだよ」
由紀子の反応に将のほうが面食らっている。
ウブな由紀子は、男子に……しかも将に頭を撫でられて、本当にショックだったのだ。
クラスで一番大人っぽくて近寄りがたい『イケメン』の将に。
由紀子は、どうしていいかわからなくて、ついに、嗚咽を始めた。
「あー、将が真田を泣かせたー」
「なーかせた~」
井口やカイトが、小学生のようにはやし立てる。
「えー、何、俺のせい? もー、泣くなよぉ、ユキコォ」
将は頭をかいたり、由紀子の顔をのぞきこんだりして、弱り果てている。
あわてる将が可笑しくて、聡はクスッと笑った。
その騒ぎの中、客室の電話が鳴る。
電話をとった聡に受話器の向こうで、看護士の山口の
「アキラ先生、ちょっとお話があるんですけど」
という声が聞こえた。
部屋が騒がしいので、意味を聞き取るだけでせいいっぱいだったが、なんだか深刻な声に聞こえた。
聡は、隣にいた相棒の兵藤に「ちょっと呼び出されたから行ってくるね」と断って、部屋を出る。
山口はなぜか部屋の前の廊下で聡を待っていた。
「アキラ先生、ちょっと……」
聡の姿を見つけると、声をひそめて手招きした。
「よかった、今ちょうど、生徒がお風呂から出てくれたところなんですよ。次の生徒は入れてません」
唯一客室のバスルームが使える聡と山口の部屋は、一人で風呂に入りたい生徒が交代でやってきていたのだ。
山口は部屋のドアを開けると、あたりを用心深く見回すようにして、聡と一緒に客室に入った。
聡と山口の客室は和洋室になっているのだが、和室のほうに床が延べられて、ショートカットの女生徒がそこで眠っていた。
聡は、最初、それが誰だかわからなかった。
が、窓側のソファに置いてある長い黒髪のウィッグを見つけ、驚いてもう一度その寝顔を見た。
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