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6:ささやかな招待(6)
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「うっ……ううっ……。うまい……です。……うまい……」
海斗は、喉の奥からこぼれそうになる言葉を、その一言に必死で押し込めた。食べ物が喉をとおるたびに涙がこぼれてくる。
「そうか、泣くほどうまかね~」
父・晃がぽん、と海斗の肩に手を置く。その温もりが引き金になり、涙がさらに溢れた。圭子がティッシュ箱を差し出す。
「ほら、これ使いんしゃい」
海斗は一礼して受け取ると、不格好に鼻をかみ、また無我夢中で飯をかき込んだ。
ご飯の友は、高菜の炒め物。ちくわが入っているのは、高菜チャーハンの素にもなるから。沖島食堂定番の逸品だ。
懐かしさに涙と食欲が、混然一体となって暴れ出す。
「やだ……食べ方がなんだか海斗に似とうねえ。私まで涙が出てきちゃったよ」
圭子は自分の目元もティッシュで押さえた。
「ほんとや。これくらいの年齢の頃の、あいつを思い出すばい」
晃のしみじみとした言葉に、里玖が遠慮がちに、けれどしっかりと海斗を見つめて言い添えた。
「海斗……というのは、七海の父親の名前なんです」
――わかってる。わかってるよ。……だって、それは俺だから。
海斗は言葉の代わりに、懐かしい味をひたすら口に運んだ。
「私たちの息子でね~。海上自衛隊におったんよ~」
――知ってる。全部知ってる。……だって、それは俺だから。
「里玖ちゃんのお腹に七海ができたばかりのときに……行方不明になっちゃって」
圭子は涙をこらえながら説明する。晃も、箸を持つ手を震わせていた。
「私たちはずっと帰ってくるのを待っとるんやけど……」
その言葉が、最後の一押しだった。海斗の胸の奥でギリギリまで張り詰めた何かがぷつんと切れた。
「うっ……うっ……ううう……ふぇ」
箸が手から滑り落ちる。
「……うぉわあああああぁ~~~ん!」
海斗は、顔を覆って声を上げた。
金髪の、見ず知らずの若者が、他人の家の食卓で突然子供のように号泣し始めた光景に、一同は目を丸くして固まった。
「ううっ……ひっ……ぐす……俺……俺は、海斗なんや!」
しゃくり上げながらの告白。涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃだ。
「……信じてくれんかもしれんけど……俺は、海斗なんだよぉ……!」
七海は驚きのあまり、目を丸くしてスプーンが止まり、里玖は「何を言っているの?」という怪訝な、どこか恐怖すら混じった顔をしている。
だが。――実の両親である晃と圭子は違った。二人は最初こそ驚いて顔を見合わせていたが、泣きじゃくる海斗に向ける眼差しが、次第に、ゆっくりと、優しさに満ちていく。
圭子は海斗にもう一度ティッシュ箱を差し出した。
「……ずっと、なんか、そんな気がしとったよ」
その声は、驚くほど穏やかだった。隣で晃も、深く、何度も頷いた。
「なっ……そんな……でも……朝倉君は朝倉君ですよ……!?」
里玖だけが、必死に理性の壁を守ろうと声を上げる。
「う……ん。理屈はわからんばってん……なんか他人に思えんとよ。なあ海斗」
海斗は泣きながら叫んだ。
「とおちゃん!かあちゃん!」
次の瞬間、ちゃぶ台の横で三人は抱き合っていた。
晃の腕は力強く、圭子の手は海斗の背中を優しくさすってくれる。
顔は変わってしまったけれど、息子は息子……そんな風に無条件で認めてくれる親ならではのぬくもりに海斗は泣きに泣いた。
……里玖はただ、信じられないという顔で、三人を見つめるしかなかった。
海斗は、喉の奥からこぼれそうになる言葉を、その一言に必死で押し込めた。食べ物が喉をとおるたびに涙がこぼれてくる。
「そうか、泣くほどうまかね~」
父・晃がぽん、と海斗の肩に手を置く。その温もりが引き金になり、涙がさらに溢れた。圭子がティッシュ箱を差し出す。
「ほら、これ使いんしゃい」
海斗は一礼して受け取ると、不格好に鼻をかみ、また無我夢中で飯をかき込んだ。
ご飯の友は、高菜の炒め物。ちくわが入っているのは、高菜チャーハンの素にもなるから。沖島食堂定番の逸品だ。
懐かしさに涙と食欲が、混然一体となって暴れ出す。
「やだ……食べ方がなんだか海斗に似とうねえ。私まで涙が出てきちゃったよ」
圭子は自分の目元もティッシュで押さえた。
「ほんとや。これくらいの年齢の頃の、あいつを思い出すばい」
晃のしみじみとした言葉に、里玖が遠慮がちに、けれどしっかりと海斗を見つめて言い添えた。
「海斗……というのは、七海の父親の名前なんです」
――わかってる。わかってるよ。……だって、それは俺だから。
海斗は言葉の代わりに、懐かしい味をひたすら口に運んだ。
「私たちの息子でね~。海上自衛隊におったんよ~」
――知ってる。全部知ってる。……だって、それは俺だから。
「里玖ちゃんのお腹に七海ができたばかりのときに……行方不明になっちゃって」
圭子は涙をこらえながら説明する。晃も、箸を持つ手を震わせていた。
「私たちはずっと帰ってくるのを待っとるんやけど……」
その言葉が、最後の一押しだった。海斗の胸の奥でギリギリまで張り詰めた何かがぷつんと切れた。
「うっ……うっ……ううう……ふぇ」
箸が手から滑り落ちる。
「……うぉわあああああぁ~~~ん!」
海斗は、顔を覆って声を上げた。
金髪の、見ず知らずの若者が、他人の家の食卓で突然子供のように号泣し始めた光景に、一同は目を丸くして固まった。
「ううっ……ひっ……ぐす……俺……俺は、海斗なんや!」
しゃくり上げながらの告白。涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃだ。
「……信じてくれんかもしれんけど……俺は、海斗なんだよぉ……!」
七海は驚きのあまり、目を丸くしてスプーンが止まり、里玖は「何を言っているの?」という怪訝な、どこか恐怖すら混じった顔をしている。
だが。――実の両親である晃と圭子は違った。二人は最初こそ驚いて顔を見合わせていたが、泣きじゃくる海斗に向ける眼差しが、次第に、ゆっくりと、優しさに満ちていく。
圭子は海斗にもう一度ティッシュ箱を差し出した。
「……ずっと、なんか、そんな気がしとったよ」
その声は、驚くほど穏やかだった。隣で晃も、深く、何度も頷いた。
「なっ……そんな……でも……朝倉君は朝倉君ですよ……!?」
里玖だけが、必死に理性の壁を守ろうと声を上げる。
「う……ん。理屈はわからんばってん……なんか他人に思えんとよ。なあ海斗」
海斗は泣きながら叫んだ。
「とおちゃん!かあちゃん!」
次の瞬間、ちゃぶ台の横で三人は抱き合っていた。
晃の腕は力強く、圭子の手は海斗の背中を優しくさすってくれる。
顔は変わってしまったけれど、息子は息子……そんな風に無条件で認めてくれる親ならではのぬくもりに海斗は泣きに泣いた。
……里玖はただ、信じられないという顔で、三人を見つめるしかなかった。
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