武者修行の仕上げは異世界で

丸八

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第5章

在りし日の回想、もしくは来るべき日のプロローグ

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 物も言わず、久し振りの客人を送り出した後、ユリアは記憶メモリーの整理を始めた。
 気の遠くなるような長い時間をかけて体をほぼ修復し終えた彼女は、他にする事が無かったのだ。


 最初に起動したのはいつだっただろうか。
 それは、思い出すのも困難な遠い昔、ある恒星系の外れ。宇宙ステーションのドッグだった。

 第八次外宇宙移民船団の護衛艦、その統制プログラムの擬似人格として設計された彼女は、慌ただしい雰囲気の中、産声をあげた。

 彼女の創造主達は、倫理観を欠いた開拓の果て、自分達の住む惑星はおろか恒星系内の資源を殆ど食い潰してしまっていた。
 自分達の招いた事態に気付いた時は既に遅く、見渡す限りの荒野が広がるばかりであった。

 だが、彼等の頭には後悔の二文字は無く、直ぐに眼を恒星系の外へと向けた。

 彼等の科学力はそれを辛うじて可能にするレベルには達していたのだ。
 そんな彼等でもやはり外宇宙へ出ていくのは分の悪い賭けであった。
 それでも枯渇しかけの資源と、膨れ上がる人口の事を思うと、移民を推し進めるしかなかった。
 第一次外宇宙移民船団が出発して百年が経ったが、未だに有用な移民先等の芳しい報告は無かった。

 昨日までは。

 レーザー通信を送ってきたのは第三次外宇宙移民船団だった。
 微少な空間の歪みを発見したという内容だ。

 第一次、二次と送り出し、安全性を確認した直後の第三次外宇宙移民船団は当時の最高峰の頭脳と資源が惜しみ無く注がれたものだった。

 権力者や富豪と呼ばれる者が多い第三次外宇宙移民船団は、その分責任感が強く、故郷を憂う者も少なくなかった。

 しばらく該当宙域に駐留し、空間の歪みに対して調査を開始したという続報が入ったのは、三日後の事だった。
 幸運な事に、そこは小惑星帯アステロイドベルトであり、永住するのでないなら充分な資源が確保できると思われた。
 それから数年が経ち、もたらされる情報に母星にいた者達は喜びに沸き立った。

 空間の歪みは、どうやら虫食い穴ワームホールだったようだ。
 様々な研究と検証の結果、そこから何処か別の空間に繋がっていると判明した。
 その空間は彼等が知っている物理法則とは違う法則が働いているようだった。
 最大の違いは、光よりも速く移動できると言うことだ。
 そこからは早かった。
 人工的にワームホールを開けるのに、十年も掛からなかった。

「あの時は本当に皆が喜んでいたわね」

 建造中だった移民船団の母艦には、その技術が早速盛り込まれた。
 光速を超える事が出来なかった彼等には、ワームホールを用いた移動手段ワープはまさに福音であった。
 この一連の研究は思わぬ副産物をも生み出した。
 それは、生き物が持つ精神エネルギーの利用である。
 研究対象であったワームホールは、生き物が周辺区域に進入すると、それに呼応するかのように大きく拡がったのだ。
 当初、特定の電気信号に反応しているのかと思われていたが、無人機をいくら飛ばしてみてもワームホールが拡がる事はなかった。
 あくまでも生物が近寄った時だけ拡がるのだ。
 煮詰まった研究者達は目先を変えることにした。
 生物側ではなく、反応しているワームホール側を観測すると、ある物質が検知されたのだ。
 それこそまさに精神エネルギーを取り込み、増幅するという特性を持つ物質だったのだ。
 それを採取、解析することにより、彼等は生きている限り尽きないエネルギーを手に入れたのだった。

 第三次外宇宙移民船団は母星にこの情報を伝えると、すぐさまそのワームホールを広げて新天地へと旅立って行った。
 そこに地獄が待っているとも知らずに………。
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