召喚勇者は怪人でした

丸八

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二章

23話

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 この世界に来てから早くも一週間が経過した。今はゴーレムダンジョンでレベル上げ兼資金稼ぎをしている。

「四階層のアイアンゴーレムはなかなか美味しいな」

 当たり前だけど、美味しいと言っても食べてるわけじゃない。

 経験値がマッドゴーレムより格段に高いし、素材の値段も高い。

 ゴーレムコアの値段はマッドゴーレムと変わらないが、身体を構成している鉄は魔力を豊富に含んでいるから、それなりに高く売れるんだ。

 まぁ、重量がかなりあるので、普通ならたいして持ち帰れないが、俺には亜空間倉庫があるので余裕だ。

 高ランクの冒険者ならもっと稼げる場所があるらしく、空いているのも嬉しいポイントだ。疎らというよりガラガラなんだよなぁ。

 俺はソロで活動してるから、あんまり人が少なすぎても、もしもの時が心配ではある。

「おっ、次のが来たな」

 褐色のゴーレムがノッシノッシと曲がり角から現れた。

 俺は魔力弾を放ち、こっちに注意を向ける。胸部を浅く傷つけられたゴーレムは、無機質な顔をこちらに向けて進行方向を変えた。

 アイアンゴーレムは思ったよりも足が速い。

 まぁ、その重量に比べれば、だけどね。

 充分対応可能な速度で走るアイアンゴーレムへと、俺も魔力刃を纏わせた短剣を構える。

 ゴーレムの繰り出したパンチを躱して、背後に回り込む。

「ふっ」

 軽く息を吐き、手にした短剣を一閃させる。魔力刃は難なくアイアンゴーレムの腕を肩ごと切り裂いた。

 短剣を振るう度に、ゴーレムの頭が、脚が、残った腕が飛んでいく。

 残ったのは、ゴーレムコアを露出させた胸部だけだった。

 こんなにあっさりと切り裂けるのは、《武芸百般》というスキルのお陰みたいだ。これは、制御装置の機能で、俺のステータスを見たことで判明したんだ。

 日本にいた時に習った武道の影響なんだろうと勝手に思っている。多分、大きく違ってはいないだろう。

 ゴーレムコアを胸部から引き抜くと、機能の停止したゴーレムの残骸を亜空間倉庫へと投げ入れるのだった。
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