62 / 91
四章 二体目ですよ
六十一話
しおりを挟む
「どうやらあれで最後っスね」
オブジェが色を失い、活動を停めた。どうやら魔力切れみたいだね。
オブジェの前には最後のゴブリンが立っている。手に持っているのは棍棒よりちょっと細い木の枝だ。
魔力が足りなくて武器が貧相な枝になったのかと思ったけど、そういうわけじゃなかったようだ。
「ゴブリンマジシャン」
ポツリと泉ヶ丘さんがエネミーの正体を看破する。どうやらゴブリンにも魔法を使う個体がいるようだ。
魔法使う人って知性的なイメージがあったから意外だわ。ツクモも賢いしね。
でも、結局スキルの一つだからそういうのは関係無いのかも。
「うわ!?【火球】撃ってきたっス!」
ゴブリンマジシャンの持つ木の枝みたいな杖から、拳大の火の玉が打ち出された。驚いた吉根はそれを盾で叩き落とす。
威力はそんなに強くなさそうだね。
「ツクモ、【突風】」
「ちぅ!」
お返しとばかりにツクモが【突風】を放つ。
ゴブリンマジシャンはあっさり吹き飛ばされ、地面を転がる。
「トドメは任せろ!」
起き上がろうとするゴブリンマジシャンに駆け寄る市場君。
「あ、そこはダメだ!」
市場君とゴブリンマジシャンの間の床が他とは少し色が違う。俺は慌てて引き留めたけど、既に遅かったようだ。
「ぬわっ!?」
バチンっと音がして、トラバサミに引っ掛かる市場君。足首の辺りを挟まれ、見事にスッ転んだ。
「痛たたたた………」
すぐに起きようとする市場君だったけど、目の前には杖を構えたゴブリンマジシャンが立っていた。
「おっと、危ないっス」
ゴブリンマジシャンが【火球】を放つ寸前、背後に回り込んだ吉根が袈裟掛けに切り捨てる。
「大丈夫っスか?」
「あぁ、大丈夫だ。すまん、助かった」
ゴブリンマジシャンが倒れた後、入り口の扉が開き、罠も消え去った。もちろん、市場君の足のトラバサミも綺麗サッパリ消え去った。
市場君は吉根に手を借りて起き上がる。そこへ泉ヶ丘さんが小走りで走ってきて、心配そうに声をかける。
当然ながら、HPは多少減ってはいるようだけど、怪我なんかはしてないみたいだ。
「さて、おたのしみの宝箱っスね」
「そうだね」
市場君と泉ヶ丘さんがイチャイチャしてる間に、俺達は宝箱の側まで移動する。
何故かエネミーネストに出現するエネミーからはアイテムがドロップしない。
まぁ、もしドロップしたらしたで足元に散らばり過ぎて邪魔だし、拾うのも大変だろうからそれはそれでありがたい。
その分と言って良いのか分からないけど、宝箱の中身は豪華だという噂だ。
「これで宝箱が人食い箱だったら目も当てられないっスね」
「そういうのをフラグって言うらしいよ。エネミーネストの出入口は、中のエネミーが全滅しないと開かないらしいから、人食い箱はないと思うよ」
後ろを付いてくる天子田さんもウンウンと頷いているし、ツクモもちぅちぅと抗議の声をあげている。
ツクモは賢いな。
宝箱を一通りチェックすると、鍵も罠も仕掛けられてなかった。
それと【危険察知】や【魔物感知】も反応してないから人食い箱の心配もなさそうだ。
「じゃ、時間も無いしチャッチャと開けるよ」
「お願いっス」
慎重かつ手早く宝箱を開ける。
中身はそれぞれ指輪と水晶珠、ポーションだった。
水晶珠は多分スキル珠か転職の宝珠だろうな。なんのジョブかによるけど転職の宝珠だったら嬉しい。
指輪はどことなく武骨なデザインでカッコいい。
「これ、魔力を感じる。多分、魔道具」
「マジっスか!?」
「ミキ本当か!スゲェ」
沸き立つ俺達。魔道具は高値が付くからな。有用なら自分達で使えば良いし、これは嬉しい。
「あの、そろそろ帰らないと時間が危ないです」
「あ、本当だ。みんな、急ごう!」
「そっスね!」
「イカン、うかれすぎた」
天子田さんが冷静に時間を気にしててくれたから、俺達は遅刻を免れたのだっ。
オブジェが色を失い、活動を停めた。どうやら魔力切れみたいだね。
オブジェの前には最後のゴブリンが立っている。手に持っているのは棍棒よりちょっと細い木の枝だ。
魔力が足りなくて武器が貧相な枝になったのかと思ったけど、そういうわけじゃなかったようだ。
「ゴブリンマジシャン」
ポツリと泉ヶ丘さんがエネミーの正体を看破する。どうやらゴブリンにも魔法を使う個体がいるようだ。
魔法使う人って知性的なイメージがあったから意外だわ。ツクモも賢いしね。
でも、結局スキルの一つだからそういうのは関係無いのかも。
「うわ!?【火球】撃ってきたっス!」
ゴブリンマジシャンの持つ木の枝みたいな杖から、拳大の火の玉が打ち出された。驚いた吉根はそれを盾で叩き落とす。
威力はそんなに強くなさそうだね。
「ツクモ、【突風】」
「ちぅ!」
お返しとばかりにツクモが【突風】を放つ。
ゴブリンマジシャンはあっさり吹き飛ばされ、地面を転がる。
「トドメは任せろ!」
起き上がろうとするゴブリンマジシャンに駆け寄る市場君。
「あ、そこはダメだ!」
市場君とゴブリンマジシャンの間の床が他とは少し色が違う。俺は慌てて引き留めたけど、既に遅かったようだ。
「ぬわっ!?」
バチンっと音がして、トラバサミに引っ掛かる市場君。足首の辺りを挟まれ、見事にスッ転んだ。
「痛たたたた………」
すぐに起きようとする市場君だったけど、目の前には杖を構えたゴブリンマジシャンが立っていた。
「おっと、危ないっス」
ゴブリンマジシャンが【火球】を放つ寸前、背後に回り込んだ吉根が袈裟掛けに切り捨てる。
「大丈夫っスか?」
「あぁ、大丈夫だ。すまん、助かった」
ゴブリンマジシャンが倒れた後、入り口の扉が開き、罠も消え去った。もちろん、市場君の足のトラバサミも綺麗サッパリ消え去った。
市場君は吉根に手を借りて起き上がる。そこへ泉ヶ丘さんが小走りで走ってきて、心配そうに声をかける。
当然ながら、HPは多少減ってはいるようだけど、怪我なんかはしてないみたいだ。
「さて、おたのしみの宝箱っスね」
「そうだね」
市場君と泉ヶ丘さんがイチャイチャしてる間に、俺達は宝箱の側まで移動する。
何故かエネミーネストに出現するエネミーからはアイテムがドロップしない。
まぁ、もしドロップしたらしたで足元に散らばり過ぎて邪魔だし、拾うのも大変だろうからそれはそれでありがたい。
その分と言って良いのか分からないけど、宝箱の中身は豪華だという噂だ。
「これで宝箱が人食い箱だったら目も当てられないっスね」
「そういうのをフラグって言うらしいよ。エネミーネストの出入口は、中のエネミーが全滅しないと開かないらしいから、人食い箱はないと思うよ」
後ろを付いてくる天子田さんもウンウンと頷いているし、ツクモもちぅちぅと抗議の声をあげている。
ツクモは賢いな。
宝箱を一通りチェックすると、鍵も罠も仕掛けられてなかった。
それと【危険察知】や【魔物感知】も反応してないから人食い箱の心配もなさそうだ。
「じゃ、時間も無いしチャッチャと開けるよ」
「お願いっス」
慎重かつ手早く宝箱を開ける。
中身はそれぞれ指輪と水晶珠、ポーションだった。
水晶珠は多分スキル珠か転職の宝珠だろうな。なんのジョブかによるけど転職の宝珠だったら嬉しい。
指輪はどことなく武骨なデザインでカッコいい。
「これ、魔力を感じる。多分、魔道具」
「マジっスか!?」
「ミキ本当か!スゲェ」
沸き立つ俺達。魔道具は高値が付くからな。有用なら自分達で使えば良いし、これは嬉しい。
「あの、そろそろ帰らないと時間が危ないです」
「あ、本当だ。みんな、急ごう!」
「そっスね!」
「イカン、うかれすぎた」
天子田さんが冷静に時間を気にしててくれたから、俺達は遅刻を免れたのだっ。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
193
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる