69 / 91
四章 二体目ですよ
六十八話
しおりを挟む
ライトに照されてぼんやりと浮かび上がったのは、巨大な竜のシルエットだった。
緑にも青にも見える鱗に覆われた蛇身、鋭い爪をもつ手、二本の角がある頭部には鬣が生えている。
トグロを巻いているから分かりにくいけど、全長は50mどころじゃないだろう。威圧感がハンパない。今もビビって足が震えてる。
しかし、そんな恐ろしい姿だけど、どことなく生気が無い。ぐったりと横たわる頭、目は閉じられ、デカイ口からは荒い呼吸音が漏れている。
周りを照らせば抜け落ちたであろう鱗や爪、鬣なんかが散らばっている。
身体の方も鱗が剥げていたり、抉れたような傷があった。みるからに瀕死って感じだ。
「何か病気なのかな?」
「ちぅ」
俺の呟きに、ツクモが違うというように首を横に振る。そして、俺の肩から飛び降りると竜に駆け寄り、頭の上に登り始めた。
頭だけで俺の身長よりデカイけど、鱗がゴツゴツしてるから登りやすいみたいだ。
「お、おい、ちょっと」
竜がいつ襲ってくるか気が気じゃない俺はツクモを止めようとするけど、そんな事は気にしないとばかりにチョロチョロと登っていく。
今のところ【危険察知】は反応してないけど、さっき過信したばかりに転移罠に引っ掛かったから安心なんか出来ない。
そんな俺の気持ちをよそに、ツクモは角の近くで立ち上がり、両手で手招きをする。場違いだとは思うけど、可愛い仕草だ。
それより俺もいかなきゃダメなの?
例え死にかけだとしても、寝返りされただけでもブチッといっちゃいそうだけど。
周囲に魔力が無いから特殊攻撃なんてほとんど出来ないだろうけど、巨大な質量っていうのはそれだけで脅威なんだよ。
「ちぅ」
「う、分かった。行くよ」
小首を傾げて両手を合わせるツクモ。いつの間にこんなあざといポーズを覚えたんだろ?
あまりの可愛さにやられた俺は、しぶしぶながらも竜に近付いていく。
「ちぅ」
真横まで来ると本当にデカイな。側頭部が断崖絶壁に見える。
覚悟を決めてよじ登っていく。
登るのに邪魔になるから、ウエストポーチのベルト部分に棒を挟み、ライトは手首に輪ゴムで止めておく。
魔力が無くてステータスが無効になってるから苦戦すると思ったけど、わりと楽に登っていけるな。
「ちぅ」
「そこに何かあるのか?」
頭に登りきったら、ツクモが鬣の方を指差していた。
手首からライトを外して、ツクモが指差してる方を照す。すると、鬣がもぞもぞと動いているのが見える。
もう少し近付くと、【危険察知】が反応した。
「ヤバいな。ツクモ、あんまり近寄るなよ」
「ちぅ」
周囲に魔力が無い今、ツクモは見た目の通り少し大きめのネズミに過ぎない。もし、戦闘になった場合、簡単に潰されてしまうだろう。
まぁ、それは俺もなんだけどね。
しかし、ツクモは逃げるでもなく、もぞもぞ動いている場所を指差し続ける。
仕方ないから俺はしっかり見ようと、鬣を棒でかき分けてライトを当てる。
「ゥゲッ!」
そこにいたのは巨大な虫だった。ノミのような甲虫のようなよく分からない虫だ。かなりの大きさで、20cm以上はある。
それがジュクジュクになった竜の傷口から何かを啜っていた。正直、見ていて気持ち悪い。そんなのが十匹以上鬣の中に固まって蠢いていた。集合体恐怖症だったら閲覧注意だよ、これは。
「ちぅ!」
「え?こいつをどうにかしろって?」
「ちぅ!」
またもやツクモが可愛いお願いポーズをする。ちょっと調子に乗ってるなとは思うけど、可愛くお願いされたらついついやってしまう。
幸い光が苦手らしく、ライトで照すと逃げようと身じろぎするから、その隙に棒で払い落とす。
多分この気持ち悪い虫もエネミーだから、魔力の無い環境だと弱体化しているのだろう。思ったより簡単に払い落とす事が出来た。
緑にも青にも見える鱗に覆われた蛇身、鋭い爪をもつ手、二本の角がある頭部には鬣が生えている。
トグロを巻いているから分かりにくいけど、全長は50mどころじゃないだろう。威圧感がハンパない。今もビビって足が震えてる。
しかし、そんな恐ろしい姿だけど、どことなく生気が無い。ぐったりと横たわる頭、目は閉じられ、デカイ口からは荒い呼吸音が漏れている。
周りを照らせば抜け落ちたであろう鱗や爪、鬣なんかが散らばっている。
身体の方も鱗が剥げていたり、抉れたような傷があった。みるからに瀕死って感じだ。
「何か病気なのかな?」
「ちぅ」
俺の呟きに、ツクモが違うというように首を横に振る。そして、俺の肩から飛び降りると竜に駆け寄り、頭の上に登り始めた。
頭だけで俺の身長よりデカイけど、鱗がゴツゴツしてるから登りやすいみたいだ。
「お、おい、ちょっと」
竜がいつ襲ってくるか気が気じゃない俺はツクモを止めようとするけど、そんな事は気にしないとばかりにチョロチョロと登っていく。
今のところ【危険察知】は反応してないけど、さっき過信したばかりに転移罠に引っ掛かったから安心なんか出来ない。
そんな俺の気持ちをよそに、ツクモは角の近くで立ち上がり、両手で手招きをする。場違いだとは思うけど、可愛い仕草だ。
それより俺もいかなきゃダメなの?
例え死にかけだとしても、寝返りされただけでもブチッといっちゃいそうだけど。
周囲に魔力が無いから特殊攻撃なんてほとんど出来ないだろうけど、巨大な質量っていうのはそれだけで脅威なんだよ。
「ちぅ」
「う、分かった。行くよ」
小首を傾げて両手を合わせるツクモ。いつの間にこんなあざといポーズを覚えたんだろ?
あまりの可愛さにやられた俺は、しぶしぶながらも竜に近付いていく。
「ちぅ」
真横まで来ると本当にデカイな。側頭部が断崖絶壁に見える。
覚悟を決めてよじ登っていく。
登るのに邪魔になるから、ウエストポーチのベルト部分に棒を挟み、ライトは手首に輪ゴムで止めておく。
魔力が無くてステータスが無効になってるから苦戦すると思ったけど、わりと楽に登っていけるな。
「ちぅ」
「そこに何かあるのか?」
頭に登りきったら、ツクモが鬣の方を指差していた。
手首からライトを外して、ツクモが指差してる方を照す。すると、鬣がもぞもぞと動いているのが見える。
もう少し近付くと、【危険察知】が反応した。
「ヤバいな。ツクモ、あんまり近寄るなよ」
「ちぅ」
周囲に魔力が無い今、ツクモは見た目の通り少し大きめのネズミに過ぎない。もし、戦闘になった場合、簡単に潰されてしまうだろう。
まぁ、それは俺もなんだけどね。
しかし、ツクモは逃げるでもなく、もぞもぞ動いている場所を指差し続ける。
仕方ないから俺はしっかり見ようと、鬣を棒でかき分けてライトを当てる。
「ゥゲッ!」
そこにいたのは巨大な虫だった。ノミのような甲虫のようなよく分からない虫だ。かなりの大きさで、20cm以上はある。
それがジュクジュクになった竜の傷口から何かを啜っていた。正直、見ていて気持ち悪い。そんなのが十匹以上鬣の中に固まって蠢いていた。集合体恐怖症だったら閲覧注意だよ、これは。
「ちぅ!」
「え?こいつをどうにかしろって?」
「ちぅ!」
またもやツクモが可愛いお願いポーズをする。ちょっと調子に乗ってるなとは思うけど、可愛くお願いされたらついついやってしまう。
幸い光が苦手らしく、ライトで照すと逃げようと身じろぎするから、その隙に棒で払い落とす。
多分この気持ち悪い虫もエネミーだから、魔力の無い環境だと弱体化しているのだろう。思ったより簡単に払い落とす事が出来た。
11
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに
千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】
魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。
ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。
グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、
「・・・知ったからには黙っていられないよな」
と何とかしようと行動を開始する。
そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。
他の投稿サイトでも掲載してます。
※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる