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四章 二体目ですよ
七十一話
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『さて、世話をかけたの。お主には礼をしたいと思うのじゃが、何が良いかのう?』
竜はトグロを巻き直し、こちらを見下ろす。さっきより活力が漲っていて、迫力が増している。俺達なんか一口が食べられてしまいそうだ。
正直、お礼なんかよりツクモが心配だから、早く帰らせて欲しい。
『礼としてお主の従魔となってやっても良いが………』
こっちの思惑とは別に、竜は勝手に話を進める。
無視して帰れれば良いけど、その手段が無い。ここへ転移してきたのも、ツクモを介して竜が転移させたって話だしね。
かといって、竜の話を中断させるのも恐ろしい。今はわりと友好的に接してくれているけど、いつ気が変わるか分からない。
『そんなに恐がらなくて大丈夫じゃよ』
心外だと言わんばかりな台詞だ。
どうやら、竜はこちらの考えをある程度読む事が出来るみたいだ。迂闊に変な事は考えられないな。
なら、早く話を済ませよう。
「従魔となってくれるというのは………」
『そうじゃ、お主の生きている瞬き程の間くらいの時間、戯れに我が身を預けてみるのもまた一興』
竜が従魔か。もしそうなったら、学校中が大騒ぎになるな。
どう考えてももて余しそうだから、出来れば遠慮したい。
『だが、我が身を預けるにはお主は余りにも脆弱が過ぎる。もし魔力の無い地へと赴けば、百分の一程の力しか持たせておらぬ分身だとしても、瞬く間にお主の力を全て吸い取ってしまうじゃろう』
ああ、そう言えばツクモも地上だと俺から魔力を吸ってるんだったよな。
ツクモだからほとんど生活に支障は無いけど、それがこの竜から吸われるとなると無事じゃ済まないのは道理だ。
どう考えたって無理だ。
もう、お礼なんか良いから、普通に元の場所に帰してくれるだけで良いんだけどな。
『よし、ちょいと細工をさせてもらうぞ』
竜の瞳が怪しく光る。
それと同時に俺の足元に複雑な魔法円が描かれた。
「ぐうっ」
『ちょっとの辛抱じゃ』
いきなり殴られたような衝撃に襲われた。
体内に無理矢理膨大な力が注がれているようで、苦しさで立っていられなくなる。しかし、全身を締め付けられて、倒れる事も許されない。身体が強ばり、立ち尽くす事しか出来ない。
そんな状態がどれくらい続いただろうか。
頭が朦朧として、時間の感覚が全くない。
足元の魔法円が消え去ると、身体を拘束する力も無くなって、俺はその場に崩れ落ちる。
『ふむ、これで多少は容量が増えたようじゃの』
竜、エネミーとはやはり精神構造が違うんだろうな。何の感情もなく発せられる言葉に、朦朧とする意識の中でそう感じた。
『よしよし。ちょいと、人の真似事でもしてやろうかの』
竜の周りの抜け落ちていた牙が浮かび上がる。そこに髭なのか鬣なのか分からない毛が集まり捩れ、紐となって牙を貫いて環を作る。
光を発しながら環はぐんぐんと小さく縮んでいく。その分、内包する力は凝縮され、より強くなっている気さえする。
『これでどうじゃ』
最後に強く光った環は、ポンと気の抜ける音を出して、その姿を変えた。
竜鱗の鎧を着た男の子の姿だ。手には身長に不釣り合いな程長い柄の大刀、いわゆる青龍偃月刀を携えている。
ドラゴンの牙から造られる魔法生物に、竜牙兵と呼ばれるものがあると魔法概論の授業で習ったけど、多分目の前の男の子がそうなんだろうな。
『名付けて竜牙童子じゃ。お主の供として遣わそう』
「宜しくね、ご主人さま」
その声を最後に、朦朧としていた俺の意識はプツリと途切れたのだった。
竜はトグロを巻き直し、こちらを見下ろす。さっきより活力が漲っていて、迫力が増している。俺達なんか一口が食べられてしまいそうだ。
正直、お礼なんかよりツクモが心配だから、早く帰らせて欲しい。
『礼としてお主の従魔となってやっても良いが………』
こっちの思惑とは別に、竜は勝手に話を進める。
無視して帰れれば良いけど、その手段が無い。ここへ転移してきたのも、ツクモを介して竜が転移させたって話だしね。
かといって、竜の話を中断させるのも恐ろしい。今はわりと友好的に接してくれているけど、いつ気が変わるか分からない。
『そんなに恐がらなくて大丈夫じゃよ』
心外だと言わんばかりな台詞だ。
どうやら、竜はこちらの考えをある程度読む事が出来るみたいだ。迂闊に変な事は考えられないな。
なら、早く話を済ませよう。
「従魔となってくれるというのは………」
『そうじゃ、お主の生きている瞬き程の間くらいの時間、戯れに我が身を預けてみるのもまた一興』
竜が従魔か。もしそうなったら、学校中が大騒ぎになるな。
どう考えてももて余しそうだから、出来れば遠慮したい。
『だが、我が身を預けるにはお主は余りにも脆弱が過ぎる。もし魔力の無い地へと赴けば、百分の一程の力しか持たせておらぬ分身だとしても、瞬く間にお主の力を全て吸い取ってしまうじゃろう』
ああ、そう言えばツクモも地上だと俺から魔力を吸ってるんだったよな。
ツクモだからほとんど生活に支障は無いけど、それがこの竜から吸われるとなると無事じゃ済まないのは道理だ。
どう考えたって無理だ。
もう、お礼なんか良いから、普通に元の場所に帰してくれるだけで良いんだけどな。
『よし、ちょいと細工をさせてもらうぞ』
竜の瞳が怪しく光る。
それと同時に俺の足元に複雑な魔法円が描かれた。
「ぐうっ」
『ちょっとの辛抱じゃ』
いきなり殴られたような衝撃に襲われた。
体内に無理矢理膨大な力が注がれているようで、苦しさで立っていられなくなる。しかし、全身を締め付けられて、倒れる事も許されない。身体が強ばり、立ち尽くす事しか出来ない。
そんな状態がどれくらい続いただろうか。
頭が朦朧として、時間の感覚が全くない。
足元の魔法円が消え去ると、身体を拘束する力も無くなって、俺はその場に崩れ落ちる。
『ふむ、これで多少は容量が増えたようじゃの』
竜、エネミーとはやはり精神構造が違うんだろうな。何の感情もなく発せられる言葉に、朦朧とする意識の中でそう感じた。
『よしよし。ちょいと、人の真似事でもしてやろうかの』
竜の周りの抜け落ちていた牙が浮かび上がる。そこに髭なのか鬣なのか分からない毛が集まり捩れ、紐となって牙を貫いて環を作る。
光を発しながら環はぐんぐんと小さく縮んでいく。その分、内包する力は凝縮され、より強くなっている気さえする。
『これでどうじゃ』
最後に強く光った環は、ポンと気の抜ける音を出して、その姿を変えた。
竜鱗の鎧を着た男の子の姿だ。手には身長に不釣り合いな程長い柄の大刀、いわゆる青龍偃月刀を携えている。
ドラゴンの牙から造られる魔法生物に、竜牙兵と呼ばれるものがあると魔法概論の授業で習ったけど、多分目の前の男の子がそうなんだろうな。
『名付けて竜牙童子じゃ。お主の供として遣わそう』
「宜しくね、ご主人さま」
その声を最後に、朦朧としていた俺の意識はプツリと途切れたのだった。
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