『悪魔飯!夏子と陽菜のこども食堂&福祉配食奮闘記!~ハイカロリー「めしテロ」日誌~』【こども食堂応援企画参加作品】

あらお☆ひろ

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第3話「三朗特製の「5種の魚の酒盗と塩辛」のじゃがバター~その1~」

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第3話「三朗特製の「5種の魚の酒盗と塩辛」のじゃがバター~その1~」

 昼下がりの午後1時。ランチ客もまばらになった向日葵寿司のカウンター席に今日も夏子と陽菜がいる。
「三朗兄さん、この間、頼んだ「例のモノ」もう食べられる状況になった?陽菜ちゃんとめっちゃ楽しみにしてるねんけど!」
「そうそう、熱々飯に、パスタに、野菜炒めといろいろ試そうと思ってんのよ!何といっても、カロリー低いからたくさん食べても太れへんからな!なっちゃんと今年こそは「彼氏作るで!」ってダイエット始めることにしたんよ!」

 カウンター越しに三朗に夏子と陽菜が問いかけると、
「うーん、例のもんは、寄生虫のアニサキスが心配やから、最初に48時間完全冷凍にしてからになるねん。一度完全に凍らせて、丸二日おいて、冷蔵解凍してからの仕込み加工になるんよ。解凍後、胴は最初に塩で水抜きをして約1時間冷蔵。その後、酒で洗ってそこから1日半冷蔵庫に入れてさらに水抜きすんねん。ワタは塩にまぶして1日。その後、塩を落としてさらに半日ざるに入れて冷蔵庫で乾燥させて油抜きをするねん。それから肝に包丁入れて絞り出して、包丁でたたいて滑らかにして、ようやく身と合わせるんや。その時に僕の場合は味噌とみりんで味を調えるねんな。」
と説明してると、引き戸があいて商店街会長の菅野直とリカーショップ武藤の武藤金義が一緒に入ってきた。

 「三朗!なんや、ええもんの話しとったなぁ!さっきの話やと「スルメイカの塩辛」の話か?そんな話、なんで夏子と陽菜としとんねや?」
と入店一番、直が三朗に尋ねた。
「あー、直さん、この間の日曜日に、なっちゃんと陽菜ちゃんのお店のお客さんが、「ようさん釣りすぎたから!」ってクーラーボックス2杯分のスルメイカを届けてくれたんですって。そんで、なっちゃんとこの冷蔵庫に入り切れへんから、僕んとこに持ってきて、「半分あげるから、残りで塩辛作って欲しい!」っていうから、今作ってるんですよ!」
(あー、三朗兄さん、全部言ってしもた…。直さんやニコニコ商店街の人には内緒やって言うとけばよかった…。)夏子は思ったが、もう遅い。

 「三朗、クーラー2杯いうたら、何匹になんねん!」
「えー、ざっくり50杯になりますね!ちなみに「イカ」は「匹」やなくて「杯」って数えるんですけどね。うちは、干物と店で出す分と、あとは稀世さんとイカ素麺にして食べましたけど…。」
 直は、夏子と陽菜をじろりと睨んで、隣の席に座った。
「おい、夏子、陽菜!お前らおすそ分けも無しにふたりで全部食べるつもりやったんか?」
とどすの効いた声で言うと、夏子も陽菜も下を向いて黙り込んだ。

 「まあ、ええわ。夏子、陽菜、金義んとこに「芽」のでかかった北海道のジャガイモが段ボールひと箱あんねん。早く食べてしまわんと芽が出まくってやせてしまうから、今度の配食と給食で何とかせえ!」
といつもの無茶ぶりが出た。三朗が、間をとりなし武藤に尋ねた。
「武藤さん、段ボールひと箱って10キロってことでしょ?3キロで大体15個やから50個前後あるってことですよね。どないしはったんですか?」

 武藤は、少し困った顔をして三朗に答えた。
「以前、雇ってた子が故郷の農場を継ぐって帰って、送ってきてくれてたんやけど、わし、知っての通り一人暮らしでほとんど自炊もせえへんから、そのまま置いてて忘れとったんや。
 そしたら、直さんが「こども食堂と高齢者配食でなっちゃんと陽菜ちゃんに使わせたらええ」って言ってくれて、ここに来たらなっちゃんと陽菜ちゃんいてると思って一緒に来たんや。まあ、本バターも1キロ程つけてくれてんねんけど、バターソテーでもしろってことやったんかな?」

 (うーん、直さんも武藤のおっちゃんもむちゃくちゃや!こども食堂と高齢者配食で45人やのに、一人一玉もどないして食べるねん!カレーにしてもポテサラにしてもそんなに使われへんで!)と陽菜は頭を抱え込んだ。そんな陽菜の様子は無視して直の矛先は夏子に向いた。
「ところで夏子!お前らふたりで「スルメイカ」25杯もなにひとり占めしようとしとんねん!そんなにもろたんやったら、みんなで分け合うのが「仲間」ってもんやろ!お前、30回くらい投げ飛ばしたろか!」
と言われ、とっさに
「いやー、この間、道の駅でジャガイモのレシピもらって、「じゃがバターの塩辛のせ」って見たから、出来上がったら、こども食堂と高齢者配食でサプライズで出そうと思ってたんですよ。わー、武藤さんのジャガイモの話が出るなんて偶然ですねぇ…。」
と墓穴を掘った。(わー、なっちゃん何言うてんのよ!私らの1週間ダイエットの計画はどないなんの!)と陽菜は思ったが、遅かった。

 稀世が奥の洗い場から出てきて言った。
「あー、じゃがバターの「塩辛のせ」って、居酒屋でも出て来るけど美味しいもんなぁ!そうか、45人にふるまう予定であんなにたくさん持ち込んだんやな!みんな喜んでくれると思うわ!こりゃ、見直したで!」
(あー、もう取り返しつけへん!なっちゃんのばかー!)と陽菜はあきらめた。

 「稀世ちゃん、じゃがバターはよう聞くけど「塩辛のせ」っていうメニューがあるんか?」
「あー、直さん、食べたことないですか?武藤さん、いくつかジャガイモとバター持ってきてくださいよ。レンジとトースターで簡単にできますから、一度、食べてみてください!子供からおじいちゃん、おばあちゃんまでみんな喜ぶと思いますよ!」
との稀世の悪気の無い一言ですべてが決定した。
 5分後、武藤が持ち込んだジャガイモとバターと三朗が店で出している「塩辛」での試食で採用が決定した。
「三朗、夏子と陽菜のスルメイカはいつ仕上がるんや?」
「はい、明日には食べられます。じゃあ、明後日、金曜のうちの当番の日、たけのこご飯の「お稲荷さん」半分にしてじゃがバターをつけますか?」
「せやな、じゃあ、ジャガイモは西沢米穀の倉庫に持って行っとくから、仕込みは夏子と陽菜でやれよ!お前らにしたら、ナイスプレイや!今日のランチ代はわしが出したるから、他のアレンジメニューも考えとけよ!カラカラカラ」
と笑うと、武藤と一緒に出て行った。

 直が帰った後、落ち込む夏子と陽菜に三朗が助け舟を出した。
「なっちゃん、陽菜ちゃん、イカの塩辛はふたりの分はきちんと残すし、使わせてもらう分の引き換えに、僕の特製の「酒盗《しゅとう》」分けてあげるから、元気出してや!」
「ん、三朗兄さん「しゅとう」ってなんなん?」
と陽菜が尋ねた。

続く


「じゃがバターの酒盗のせ」

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