『悪魔飯!夏子と陽菜のこども食堂&福祉配食奮闘記!~ハイカロリー「めしテロ」日誌~』【こども食堂応援企画参加作品】

あらお☆ひろ

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第3話「三朗特製の「5種の魚の酒盗と塩辛」のじゃがバター~その2~」

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第3話「三朗特製の「5種の魚の酒盗と塩辛」のじゃがバター~その2~」

 尋ねた陽菜に対して三朗は伝票の裏にボールペンで「酒盗」と書いた。
「「酒を盗む」って書いて「酒盗《しゅとう》」。「塩辛」と似てるけど、熟成タイプの魚の内臓の「発酵食品」やねん。普通は、「まぐろ」と「かつお」が一般的やねんけど、うちの店でさばいてる「鯛」と「鯵《あじ》」のもあるから分けてあげるわな。「塩辛」は「生」から作るのに3日。「酒盗」は約1ケ月かかる分、長期保存も効くし、まあ、強いて言うなら「和製アンチョビー」ってなもんで、パスタや野菜と和えるのもええで。ちょっと食べてみるか?」
と小鉢に「まぐろ」、「かつお」、「鯛」、「鯵」と4種類の「酒盗」を入れカウンターに並べてくれた。

 夏子と陽菜は順に箸をつけていくと、都度、声を上げた。「わー、これは凄くまろやか~!」、「これは凄く味が深い!」、「あー、熱々ご飯に合いそう!」、「意外とさっぱりしてるなぁ!」と感想を述べあった。
 夏子が腕を組んで何か考え込んだ。(うーん、じゃがバターの塩辛のせだけやなくて、もうちょっとできるもんを考えるか…。ジャガイモと酒盗の組み合わせでできるもんは…。あっ、ひらめいた!)
「陽菜ちゃん、今からスーパー宮崎におつとめ品ないか聞きに行こうや!」
と立ち上がると、陽菜を連れて向日葵寿司を出て行った。

 しばらくすると、エコバッグを持って向日葵寿司に戻ってきた。
「三朗兄さん、これも塩辛にできます?できたら、塩麹《しおこうじ》で漬けるやつで頼みたいんです!小さい子や葉の無いお年寄りやと、イカやとかみ切られへん人もおるかわからへんから、もうひとつ用意しときたいんですけどどう思います?」 
 バッグの中身のパックと塩麹の瓶をカウンターに並べると、三朗は
「あー、新潟名物の「あれ」やな!ちょっとまってや!「かんずり」無しで作るレシピがあるか調べるわな。」
とスマホをいじると、にっこりと笑ってサムアップして見せた。
(※「かんずり」は新潟の妙高地方の唐辛子を発酵させた旨味たっぷりの伝統調味料で関西ではまず手に入らない。)

 昼の営業の暖簾を下ろした向日葵寿司の厨房で、夏子はスーパー宮崎でタダ同然で譲ってもらった、ややドリップのでかかった「トロサーモンの切り落とし」のパックを開けると三朗はざるに取り、流水でぬめりをとった。バットに並べると、日本酒をふりかけ、塩と砂糖を混ぜたものを表面に塗りラップをかけて冷蔵庫に入れた。
「三朗兄さん、子供も食べるからちょっと甘めの味つけでお願いしていいですか?「塩辛」っていうより「塩麹漬け」って感じでお願いします。あと、「いもピザ」も作ろうと思って、宮崎さんとこでうっかり常温放置して固まってしもた「ピザ用とろけるチーズ」も安くで譲ってもらってきたんで、その具でも使いたいんです。」
 夏子が言うと、稀世が横から顔を出して、
「ピザかー!サーモンの塩?漬けと酒盗のハーフ&ハーフがええかもしれへんな!紫蘇とサーモンと酒盗で作ったらきっと美味しいやろうなー!あと、この間のラフテーやハーブソーセージも合いそうやなぁ!どうや、作ってみたら?」
と意見を出してくれた。(うん、その案いただきや!まあ、姉さんは自分が食べたいもんを言ってはるだけやろうけどな!)と夏子は笑った。

 夏子は陽菜と西沢米穀倉庫に戻ると、試作品作成に取り組んだ。10キロと思っていた箱は15キロのもので、数えると80個のLサイズのジャガイモが入っていた。
 じゃがバターを作るためには、先にジャガイモを蒸しておくと、ホイルで包んでオーブンに20個並べて加熱できることが分かった。食べ盛りの体育会の中高生はお替りすることを予想して70個用意することにした。
 残りのジャガイモは3ミリ厚にスライスし、フライパンに敷き詰めて焼く「芋ピザ」も試した。ラフテースライスとハーブソーセージのハーフ&ハーブに紫蘇トッピングのピザは手堅い旨さで子供に受けると確信した。トマトソースでなくラフテーの煮汁を煮詰めて照り焼き風にしてみた。
 グリルで焼くサーモンと酒盗を載せたピザは大人の味だった。チーズは控えめにすることで、サーモンも程よく火が通り、酒盗との相性もばっちりだった。陽菜が夏子を褒めた。
「なっちゃん、どれも美味しいわ!子供もお年寄りも喜んでくれるで!なっちゃん、ホンマ天才やで!」

 じゃがいもの泥を落とし、70個にあらかじめ切れ目を入れ、濡らした新聞紙でくるむと蒸し器で一気に蒸した。芋ピザの30センチベースも14枚作り、ハつ切りで全員に2枚づつあたるように準備した。いくつか試作のじゃがバターの具も考えてみた。芋ピザと同様に、ラフテーもよく合うことが分かった。(ラフテーとハーブソーセージと紫蘇をのせてさらにチーズで完璧やな!)試作をふたりで食べて、意見を出し合った。

 翌々日、向日葵寿司の「こども食堂」、「高齢者配食」の当番日、夕方4時に夏子と陽菜は仕込みに入った。じゃがバターは「塩辛のせ」と「ラフテーのせ」の札を出し、発泡スチロールの保温箱を用意した。芋ピザは、フライパンで焼く「ハーブソーセージ&ラフテーピザ」とグリルで焼く「サーモン塩麹漬け(鮭塩辛)&三朗特製の3種(鯛、鯵、鰹)の酒盗のピザ」の準備を済ませた。

 4時半になると、配達係の子供たちと一緒に稀世が、「イカの塩辛」と「サーモン塩麹漬け」、「3種の酒盗」と「タケノコご飯の稲荷寿司」を納品しに来た。
「へーえ、じゃがバターは「塩辛」と「ラフテー」の2種類でお替りもあり!ピザも「ラフテー&ハーブソーセージのピザ」と「サーモン塩麹漬けと酒盗のピザ」で一人2枚か!それにお稲荷さんやから結構なボリュームやな!
と夏子と陽菜に持ってきた酒盗を手渡すと、出来上がりのピザをプラパックに詰める子供たちの作業を見ながら、出来上がりを手に取り、勝手に味見に入った。

 「がおっ!塩辛じゃがバターめっちゃ旨い!さすが「私のサブちゃん」の仕込みやなー!塩辛の塩味加減と金義さんが持ってきてくれた「本バター」ががっつりジャガイモにマッチしてるわ!ラフテーのじゃがバターは、こんもり盛ったチーズが最高やな!甘めのラフテーの汁がバターと混ざってジャガイモに染み込んでこりゃなんぼでもイケてしまうわ。ただ、お替りが効けへんところが残念やな。」
とひとりでニコニコしながら完食すると、夏子と陽菜が2種類のピザを持ってきた。
「稀世姉さん、こっちもお願いしますね!」
と手渡すと、(えーと、ピザは一人2枚やったな!じゃあ、さっそく「いただきます」やな!「おー、これも旨い、旨い!なんぼでもイケてしまう「悪魔飯」に認定間違いなしや!」と一気に2枚食べきったところに、次のピザをふたりが持ってきた。

 「あれ、稀世姉さん、さっきのピザカットしてくれました?あれ、どこに置いて…」
「あー、なっちゃん、2枚、先にいただいたで!どっちもめっちゃ美味しかったわ!子供やおじいちゃん、おばあちゃんも絶対喜んでくれると思うで!うん、絶対や!」
と屈託のない笑顔で答えた稀世に口をとんがらせて文句を言った。
「姉さん、8枚切りにせんと全部食べてしもたんですか?さっき、じゃがバターも食べてはりましたけど、じゃがバターが一つ250キロカロリー、ピザは8枚切りで150キロカロリーの設定で作ってるから、全部食べたら3400キロカロリーですよ!もう、超デブ化しますよ!」

 稀世はともかく、今日も「なっちゃん、めっちゃ美味しいわ!ぼくと結婚して!」、「陽菜ちゃん、今日の料理も最高や!わしといっしょにならへんか?」と子供と年寄りにモテモテの夏子と陽菜であった。        
 夏子と陽菜に、試食の件を直にばらされ、自腹でジャガイモを買いに行き、ピザを2枚焼き直す稀世に、三朗が真剣な顔をして言った。
「稀世さん、僕は今の稀世さんが好きなんです。変に大きくならないで下さいね。」
「うえーん、サブちゃんに嫌われたらもう生きて行かれへん!でも食べてしまうのが、なっちゃんと陽菜ちゃんの「悪魔飯」やねんなー。くすん。」
泣きながら調理をする稀世を見て、みんなが楽しそうに笑った。

第3話 おしまい


「じゃがバターの酒盗のせ」


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