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第2話「2次元の彼R《リターンズ》」

②「如志と弾嗣」

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② 「如志と弾嗣」

 3月31日午後10時。年度締めの打ち上げで居酒屋でひと騒ぎした後、大阪CPTSコンピュータ・プログラマー・トレーニング・スクールの先輩同僚の富良礼舞久利ふられ・まくりが「飲み足りへんから、如志ちゃんの部屋で飲みなおすで!」一方的に言い出した。「いきなり言われても困りますよ」と断る如志と梨継を無視して如志のマンションに強引にやってきた。
 
 1年前の大阪CPTSが参加した「生成AIによる同時通話型「医療カウンセリング」システム」を如志が偶然に街のリサイクルショップで手に入れた破産管財物のNEC社製のスーパーコンピュータ「TSUBASA」に残されていた「生成AI対話型プログラムCGTT《コンピュータ・ゲネレーティブプログラム・トーキング・トランスフォーマー》」を元に、オンライン診療、オンラインカウンセリングの「AI自動会話プログラム」を制作した時以来、3人で飲む機会は多い。
 
 舞久利25歳、如志24歳、弾嗣22歳という事もあり、わずかな年の差ではあるが、姉御肌の舞久利が3人の中ではリーダーシップをとることが常である。今日も居酒屋で2時間程飲んだ後、突然思い出したように「宅飲み」提案をあげたのだった。
「酒代は私が出すし、宅配ピザも私が持つわ。明日はラボは休み!如志ちゃんの部屋に行くのも久しぶりやから「AIイケメンチャット」を久しぶりにやらせてや!今回は「佐藤二郎」さんのパラメータでやらしてもらいたいから、弾嗣、セッティング頼むで!」
 酒が入り、ご機嫌な舞久利を止める手立てはなく、如志は渋々オッケーを出さざるを得なかった。(舞久利さんが部屋にきたら「あの事」ばれてしまうよね…。きっと、いろいろと聞かれるんだろうな…。)如志は少し気が重かった。
 
 舞久利は如志のマンションの玄関に入った瞬間に「レーダースイッチ」が入った。玄関に置かれた男物のサイズのサンダルに目が行った。「ごめん、先におトイレ借りるわな。」と「偵察」の為にトイレとセットになったユニットバスに入ると、トニックシャンプーと洗面台の前に置かれたコップにささる2本の歯ブラシを発見した。
 部屋に戻ると、リビングの端に置かれたパイプハンガーにかけられた男物のジャケットを見つけた。最後にパソコンデスクの横に置かれた、いつも弾嗣が使っているパソコンバッグが視界に入り「確信」した。
「如志ちゃん、弾嗣と同棲してるやろ!なんでそんな大事な事、私に言えへんねや!ちなみに、もう「やったん」?」

 如志は真っ赤になって否定した。食卓に3人で座ると舞久利はワインボトルを開け、3つのグラスに注いだ。1杯目乾杯が終わると如志の「弁明・・」が始まった。
 3週間前に、梨継のマンションで給水施設のトラブルによる大規模な漏水事故が起こり、梨継の部屋も水浸しになったという。全室、壁紙、フローリングの張替えが必要とのことだったが、年度末のリフォーム業者繁忙期という事もあり、復旧の見込みが立たなかった。
 共益費、駐輪場代込みで月額「3万円」という激安家賃で選んだ築45年のマンションの屋上には、最近はあまり見なくなった大きな高置水槽による受水漕式吸水装置があり、その送水パイプが破損し、数十トンの水が老マンションを一気に襲い、ひとたまりもなかったという。

 「うーん、3月は「玉薄」やからねぇ…。4月に入れば、転勤や卒業で開いた部屋が出てくるんやけどね。でも、お客さんの今の家賃で部屋を探そうとすると、めちゃくちゃ古い木造文化住宅か事故物件くらいしかあれへんと思うで。ケラケラケラ。」
と数軒回った不動産屋で一笑にされ続け、家主から出た2か月分の「詫び料」は一時的に退避したビジネスホテル代と荷物を預かってもらうレンタルコンテナの保証金であっという間に無くなった。
 その話を聞いた如志が、「しばらくの間だったら、うちに来る?」と助け船を出したのが1週間前だったとのことだった。

 舞久利の興味津々ないやらしい視線に耐えられず、梨継は食卓を外れた。ソファーに移動するとソファーテーブルの上に置いてあった、旧式の分厚いタブレットの裏ブタを精密ドライバーで外し、中をいじりだした。
 食卓に残された如志は逃げることもできず、舞久利の「尋問」が続いた。男性経験豊富な舞久利には、1週間も一つ屋根の下に暮らしておきながら「やっていない」という如志の言葉が信じられなかった。
「如志ちゃんは美人でグラマーやし、弾嗣はイケメンやろ。弾嗣も大学を卒業して、今は如志ちゃんのラボの助手で付き合いももう1年で知らん間柄やないやん。なんで「せえへん」の?」
とグイグイ攻め込んでくる舞久利の圧力に耐えられず、ワインを一気にぐっと飲み、ボトルを無理やり空にすると「あー、ワイン無くなっちゃいましたね。ピザが来るまでに、私、お酒買いに行ってきますね!」と逃げるように部屋を出ていった。

 部屋に残された舞久利の攻撃目標が弾嗣に変更された。タブレットを修理している弾嗣をロックオンすると、ソファーに移動して弾嗣の隣に座った。
 弾嗣に対する舞久利の尋問は厳しかった。しかし、舞久利の期待する「色気」のある話は何も出てこなかった。せいぜい、連絡なしに予定より早く帰宅した弾嗣が風呂上がりでバスタオル一枚の如志と鉢合わせしたとか、弾嗣が「世話になって何もしないのは申し訳ない。」と家事分担を申し出て、洗濯をした際に、如志の生下着を見てドキドキしたことなど、「男と女」、「身体と身体」といった舞久利が期待する「ネタ」は何も出てこなかった。
 寝るのも如志は寝室のベッド、弾嗣はリビングのソファーで別々に寝ているという。
「あんた、それでええの?なんぼ草食系と言っても如志ちゃんと一緒に居って、「チュー」の一つも無しかいな?」
と嘆くと満面の笑みで弾嗣は返答した。
「いやぁ、「AI快撥」を楽しくやってる如志さんのかわいい笑顔を間近で見られるだけで十分幸せですよ!」

 (うーん、弾嗣の前で「イケメンチャットゲーム」する如志ちゃんも如志ちゃんやけど、その様子を見て「かわいい」って満足してる弾嗣も弾嗣やな。普通は怒るよな…。)と言葉を失った舞久利に「これで僕らの潔白をわかってもらえましたね。」とさわやかに言う弾嗣に舞久利は叫んだ。
「お前ら中坊か!」


今日のおまけ!

最近参加させてもらってる「RBFC」の皆さんから、「部屋でくつろぐ如志ちゃん(ぷちエロ)」ってリクエストが来てました。
「メガネ」のプロンプトを外して、作画の自由度があがったのでこんな感じで作ってみました!







※ちょっと見えてる「おぱんちゅ」と「おへそ」がポイントです(笑)!


そして、舞久利ちゃんの尋問で照れる弾嗣(〃▽〃)ポッ!




もちろん舞久利ちゃんも描きましたよー!





最後は、私の妄想の「AI快撥」のアバター!



※実はもう一枚、お気に入りの「パンツ姿」の「AI快撥」のイラストもあるんですけど、下半身が「ギャランドゥ(笑)」しちゃってるんでここでのアップはNG(笑)!

(@^^)/~~~



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