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「裏釣書」
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「裏釣書」
副島が先に渡した釣書に赤ペンでチェックを入れたものが手渡された。男性の自己紹介欄には「過去女性との交際暦なし。素人童貞。最後の失恋は高校3年。その後は片思いはあったが告白せず。女性と話すのは会社の女性とコンビニ店員くらい。子供は好き。一人暮らし歴5年。自炊」と書き加えられ、趣味欄には「スポーツ観戦」の横に「東京出身でヤクルトファン、交流戦のオリックス戦には行く。ヤクルトファンは隠してる」、「映画鑑賞」の横には「テレビ放映かレンタルDVDで年2,3本。最後に見たのは天気の子」、「食べ歩き」の欄には「はしご酒くらい。店にはこだわりはない。FC店が多い」、「読書」には「少年マンガ、週刊誌立ち読み。」とぶっきらぼうにメモが書き込まれていた。
女性の「自己紹介欄」に「最後の交際は大学1年。短期交際。ふられる。若いと言うのは後輩女子社員のみ。仕事は続けたいので早めに子供は欲しい。」、そして「旅行」、「ゲーム」、「野球観戦」、「マンガ」の横には「社員旅行と盆正月の帰省」、「イケメン養成ゲームのみ」、「スワローズファン。10年以上の高津監督推し」、「BL同人誌、コミケは毎年参加。読専」とある。
(うーん、これはちょっと「詐欺釣書」やな…。まあ、一回会ったらさようならかな?)2度赤ペンのチェックを見直し、
「あかんかったと思います。どっちも嘘がありますからね。赤ペンチェックは互いに読んでないわけでしょ?会ったら最後じゃないですか?互いに「見合い受け」しそうなことを書いてるだけですよね。」
と答えた。
「あー、やっぱりそない思うか。それが普通の感覚や。でも、この二人は3月後には結婚したんやで。」
という緑の言葉に「えっ、ほんまですか?いったい何がきっかけで?」と幸は驚いた。
「そこが副島さんの凄いところや。互いに別々に電話をして、年収や年齢や他の希望に沿えへん部分のネゴシエーションに入ったんやな。
男には「もうすぐ30歳」、「出産後は復職希望」って女の子やけど、高津監督推しのスワローズファンやねん。野球については熱く語るし、もともとよおしゃべる子やから人見知りやって言うあんたでもスワローズの話やったらできるやろ。彼女は「にわか」やなくてコアファンやからな。あと早く子供は欲しいねんて。あんた、家事は手伝えるよな。上場会社やから復職すれば共稼ぎやから生活費は十分余裕出ると思うで。まあ、彼女暦なしの素人童貞って言うのはええように伝えなあかんけどな。年上でリードしてくれる姐さん女房は金の草鞋を履いてでも探せって昔はよく言ったもんや。」と連絡をしたんや。
女には「プログラマーでリモート勤務も可能な男の子がおんねん。2つ年下で女慣れしてへんから、しっかりリードしたったらええと思うねん。幸い、大阪では珍しい「隠れスワローズファン」やねん。東京出身やからなほんまもんやと思うで。子供も好きで、5年の一人暮らしで一通りの家事は自分でやりよるし、出産後の育児も手伝いよるやろ。あんたが復職すれば、家庭の収入は安定するから、2人は育てられるんとちゃうか?もし不安やったら、最初のデートはおっちゃんがつきあったるけどどないや?」って感じでな、オプションのデート同行サービスをしたったんやな。もちろん、話が盛り上がるように二人の食や飲みの好みも予め聞いてて、話が盛り上がるような店を選ぶんやな。
そして、共通の話題と、結婚後のイメージをつけるために副島さんはちょこっと「予習」して、「姐さん女房」に関しては「25歳年上の嫁のペタジーニ選手」の話を入れて、野球選手に多い「姐さん女房の選手」を紹介するんや。
女が2歳年上は「今では普通」、「女性上位の夫婦関係も全然普通」と言いつつ、ただ「女は30過ぎると一気に引き合いは減る」、かつ「人見知りや草食系男子のニーズは少ない」ってな感じで互いの「デメリット先攻」をかけるんやな。「聞いた話では二人とも、人を自分から嫌ったことがないって言うのがええやんか!おっちゃんも、過去にモテまくった奴は、今もモテるって勘違いして離婚しよるから嫌やねん。」てなもんや。まあなんつっても、「スワローズ」って共通点からのスタートがミソやな。
さらに事前に調べた「誕生日」や「氏名」での「相性占い」で「占いを信じる確証バイアス」のバーナム効果を植え付けた後に、「良い相性」を示す、「星占い」、「手相占い」、「姓名占い」を並べて止めに「四柱推命」や。「風水」の「五行」の相性って凄くヒットするんよ。有名人で同じ五行のカップルも事前に調べていったら、「偽薬効果」とも言われる「プラシーボ効果」と「シナジー効果」で1+1が2でなく3でも5にもなりよる。
「正常性バイアス」がかかったら、それまで「欠点」やった部分は勝手に無視し始めて、全て自分に都合の良い情報ばかりを集める「確証バイアス」にターボがかかるわな。カラカラカラ。」
「ふーん、心理学で習ったことが「婚活サポート」で使えるんですね。恋愛で「心理学は役に立たない」って思ってました…。」
と幸が呟くと、副島がぽそっと言った。
「本人が使うと「正常バイアス」がかかってあかんねや。第三者が使ってこその心理学や。まあ、うちの秘密はそこじゃないんやけどな。まあ、そこは今、話しても信じられへんやろうから追々にな。」
そこに紅音が戻ってきた。一人の若い男を連れている。
「どう、薄井さん、うちで働く気になってくれたんかな?」
の問いに幸は頷くと
「それは良かった。ちょうど、うちのホームページやシステムやってくれてるSEの子が打ち合わせで来てくれてたから紹介しておくわ。今葉一人君。今25歳やったかな?この間まで3人でシステム会社やってたんやけど、その会社で二人の男女ができてしもて、その二人で別にソフトハウス立ち上げて、顧客をごっそり持っていかれてしもたんやて。一人君とこに残されたシステムやコンピュータのリースが残ってるから数少ない顧客のうちの仕事で頑張らなあかんねんて。まあ、これからちょこちょこ顔を合わすことになるから覚えといたってな。」
と幸に一人を紹介すると同時に「うちの新しい事務員の薄井幸さん。仲良くやったってな。」と一人にも幸を紹介した。
紅音は、副島に「薄井さんの社保の手続きと、就業規則の説明しとってもろてええかな?」と頼むと緑と一人を連れて応接室を出ていった。二人っきりになった幸は
「ところでさっき言ってた「四柱推命」や「風水」って何ですか?黄色い財布を持ってたら金運が良くなるってやつですか?それに、そこに置いてあるでっかい水晶玉って何ですか?社長ってスクライング使い(※水晶占い師)なんですか?」
と真剣な顔で尋ねた。
「カラカラカラ、「スクライング」なんて言葉を知ってるんかいな。まあ、この水晶は魔よけみたいなもんや。「絶対結婚できへん」ような奴が来たときに、「うちで結婚できるビジョンが見えませんので、他所に行かれた方がいいですよ」っていうときの小道具や。まあ、「四柱推命」は大切なことやからちょっと説明しとこか。「風水の太陰太極図」っていうのにはきちんとした意味があるんやで。ただのサーファーのトレードマークとちゃうからな…。」
と副島はおもしろおかしく風水について解説を加えていった。
気が付くと夕方5時を迎えていた。紅音が応接に入ってくるなり
「じゃあ、明日から出勤ちゅうことで頼むわな。歓迎会は明日の晩にやろか。薄井さんは「飲める」口か?」
と幸に言った。「そんなに強くはないですけど、飲むのは好きです。」と答えると
「オッケー!じゃあ、明日は飲みに行こか。朝は朝8時50分出社で頼むわな。今日はお疲れさん。」
と入り口まで送ってくれると、「副島のおっちゃんは相談事があるからちょっとつきあってや。」と再び社内に戻っていった。
(あー、なんか不思議な会社やけど何とかホームレスにならんとすんだわ。せっかくやから、「風水」の本でも古本屋で買って帰ろか…。)と年甲斐もなくスキップして駅のロータリーを古川橋の先にある大型の古本屋にむかって行った。
副島が先に渡した釣書に赤ペンでチェックを入れたものが手渡された。男性の自己紹介欄には「過去女性との交際暦なし。素人童貞。最後の失恋は高校3年。その後は片思いはあったが告白せず。女性と話すのは会社の女性とコンビニ店員くらい。子供は好き。一人暮らし歴5年。自炊」と書き加えられ、趣味欄には「スポーツ観戦」の横に「東京出身でヤクルトファン、交流戦のオリックス戦には行く。ヤクルトファンは隠してる」、「映画鑑賞」の横には「テレビ放映かレンタルDVDで年2,3本。最後に見たのは天気の子」、「食べ歩き」の欄には「はしご酒くらい。店にはこだわりはない。FC店が多い」、「読書」には「少年マンガ、週刊誌立ち読み。」とぶっきらぼうにメモが書き込まれていた。
女性の「自己紹介欄」に「最後の交際は大学1年。短期交際。ふられる。若いと言うのは後輩女子社員のみ。仕事は続けたいので早めに子供は欲しい。」、そして「旅行」、「ゲーム」、「野球観戦」、「マンガ」の横には「社員旅行と盆正月の帰省」、「イケメン養成ゲームのみ」、「スワローズファン。10年以上の高津監督推し」、「BL同人誌、コミケは毎年参加。読専」とある。
(うーん、これはちょっと「詐欺釣書」やな…。まあ、一回会ったらさようならかな?)2度赤ペンのチェックを見直し、
「あかんかったと思います。どっちも嘘がありますからね。赤ペンチェックは互いに読んでないわけでしょ?会ったら最後じゃないですか?互いに「見合い受け」しそうなことを書いてるだけですよね。」
と答えた。
「あー、やっぱりそない思うか。それが普通の感覚や。でも、この二人は3月後には結婚したんやで。」
という緑の言葉に「えっ、ほんまですか?いったい何がきっかけで?」と幸は驚いた。
「そこが副島さんの凄いところや。互いに別々に電話をして、年収や年齢や他の希望に沿えへん部分のネゴシエーションに入ったんやな。
男には「もうすぐ30歳」、「出産後は復職希望」って女の子やけど、高津監督推しのスワローズファンやねん。野球については熱く語るし、もともとよおしゃべる子やから人見知りやって言うあんたでもスワローズの話やったらできるやろ。彼女は「にわか」やなくてコアファンやからな。あと早く子供は欲しいねんて。あんた、家事は手伝えるよな。上場会社やから復職すれば共稼ぎやから生活費は十分余裕出ると思うで。まあ、彼女暦なしの素人童貞って言うのはええように伝えなあかんけどな。年上でリードしてくれる姐さん女房は金の草鞋を履いてでも探せって昔はよく言ったもんや。」と連絡をしたんや。
女には「プログラマーでリモート勤務も可能な男の子がおんねん。2つ年下で女慣れしてへんから、しっかりリードしたったらええと思うねん。幸い、大阪では珍しい「隠れスワローズファン」やねん。東京出身やからなほんまもんやと思うで。子供も好きで、5年の一人暮らしで一通りの家事は自分でやりよるし、出産後の育児も手伝いよるやろ。あんたが復職すれば、家庭の収入は安定するから、2人は育てられるんとちゃうか?もし不安やったら、最初のデートはおっちゃんがつきあったるけどどないや?」って感じでな、オプションのデート同行サービスをしたったんやな。もちろん、話が盛り上がるように二人の食や飲みの好みも予め聞いてて、話が盛り上がるような店を選ぶんやな。
そして、共通の話題と、結婚後のイメージをつけるために副島さんはちょこっと「予習」して、「姐さん女房」に関しては「25歳年上の嫁のペタジーニ選手」の話を入れて、野球選手に多い「姐さん女房の選手」を紹介するんや。
女が2歳年上は「今では普通」、「女性上位の夫婦関係も全然普通」と言いつつ、ただ「女は30過ぎると一気に引き合いは減る」、かつ「人見知りや草食系男子のニーズは少ない」ってな感じで互いの「デメリット先攻」をかけるんやな。「聞いた話では二人とも、人を自分から嫌ったことがないって言うのがええやんか!おっちゃんも、過去にモテまくった奴は、今もモテるって勘違いして離婚しよるから嫌やねん。」てなもんや。まあなんつっても、「スワローズ」って共通点からのスタートがミソやな。
さらに事前に調べた「誕生日」や「氏名」での「相性占い」で「占いを信じる確証バイアス」のバーナム効果を植え付けた後に、「良い相性」を示す、「星占い」、「手相占い」、「姓名占い」を並べて止めに「四柱推命」や。「風水」の「五行」の相性って凄くヒットするんよ。有名人で同じ五行のカップルも事前に調べていったら、「偽薬効果」とも言われる「プラシーボ効果」と「シナジー効果」で1+1が2でなく3でも5にもなりよる。
「正常性バイアス」がかかったら、それまで「欠点」やった部分は勝手に無視し始めて、全て自分に都合の良い情報ばかりを集める「確証バイアス」にターボがかかるわな。カラカラカラ。」
「ふーん、心理学で習ったことが「婚活サポート」で使えるんですね。恋愛で「心理学は役に立たない」って思ってました…。」
と幸が呟くと、副島がぽそっと言った。
「本人が使うと「正常バイアス」がかかってあかんねや。第三者が使ってこその心理学や。まあ、うちの秘密はそこじゃないんやけどな。まあ、そこは今、話しても信じられへんやろうから追々にな。」
そこに紅音が戻ってきた。一人の若い男を連れている。
「どう、薄井さん、うちで働く気になってくれたんかな?」
の問いに幸は頷くと
「それは良かった。ちょうど、うちのホームページやシステムやってくれてるSEの子が打ち合わせで来てくれてたから紹介しておくわ。今葉一人君。今25歳やったかな?この間まで3人でシステム会社やってたんやけど、その会社で二人の男女ができてしもて、その二人で別にソフトハウス立ち上げて、顧客をごっそり持っていかれてしもたんやて。一人君とこに残されたシステムやコンピュータのリースが残ってるから数少ない顧客のうちの仕事で頑張らなあかんねんて。まあ、これからちょこちょこ顔を合わすことになるから覚えといたってな。」
と幸に一人を紹介すると同時に「うちの新しい事務員の薄井幸さん。仲良くやったってな。」と一人にも幸を紹介した。
紅音は、副島に「薄井さんの社保の手続きと、就業規則の説明しとってもろてええかな?」と頼むと緑と一人を連れて応接室を出ていった。二人っきりになった幸は
「ところでさっき言ってた「四柱推命」や「風水」って何ですか?黄色い財布を持ってたら金運が良くなるってやつですか?それに、そこに置いてあるでっかい水晶玉って何ですか?社長ってスクライング使い(※水晶占い師)なんですか?」
と真剣な顔で尋ねた。
「カラカラカラ、「スクライング」なんて言葉を知ってるんかいな。まあ、この水晶は魔よけみたいなもんや。「絶対結婚できへん」ような奴が来たときに、「うちで結婚できるビジョンが見えませんので、他所に行かれた方がいいですよ」っていうときの小道具や。まあ、「四柱推命」は大切なことやからちょっと説明しとこか。「風水の太陰太極図」っていうのにはきちんとした意味があるんやで。ただのサーファーのトレードマークとちゃうからな…。」
と副島はおもしろおかしく風水について解説を加えていった。
気が付くと夕方5時を迎えていた。紅音が応接に入ってくるなり
「じゃあ、明日から出勤ちゅうことで頼むわな。歓迎会は明日の晩にやろか。薄井さんは「飲める」口か?」
と幸に言った。「そんなに強くはないですけど、飲むのは好きです。」と答えると
「オッケー!じゃあ、明日は飲みに行こか。朝は朝8時50分出社で頼むわな。今日はお疲れさん。」
と入り口まで送ってくれると、「副島のおっちゃんは相談事があるからちょっとつきあってや。」と再び社内に戻っていった。
(あー、なんか不思議な会社やけど何とかホームレスにならんとすんだわ。せっかくやから、「風水」の本でも古本屋で買って帰ろか…。)と年甲斐もなくスキップして駅のロータリーを古川橋の先にある大型の古本屋にむかって行った。
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