『新人結婚パートナー紹介アドバイザー薄井幸奮闘記~彼氏歴無しの私が結婚アドバイザーってできるの?~』

あらお☆ひろ

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「エピローグ 幸の決心」

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「エピローグ 幸の決心」

 その日の夜は、村を挙げての五十木の歓迎会となった。女性陣も、五十木を受け入れ、この村での生活を説明した。五十木は、1週間の休暇を取ってきているので、今日は年が近い女性の家に世話になり、その後、いろんな家を泊まり歩きながら、昼には候補者の15名の男性と一緒に仕事をしたり、作業所の仕事を手伝うことになった。
 幸は「五十木さん…、まさか、北海道で婚活になるとは私も思ってなかったんです。でも過去にたくさんの実績があったんで少し安心してるんですけどどうですか?」と尋ねると、事前の電話で副島から説明を受け、数人の妻たちと電話でも話したと聞かされ、納得しての北海道行きと確認でき安心した。(あー、副島のおっちゃん、そこまでこなしてたんや。私にも教えてくれたらよかったのに…。心配して損したわ。)と思っていると、気のいい神標津酪農組合の男たちに「まだまだ嫁さんの募集はしてるから、機会があったらじゃんじゃん連れて来てよ!」と声をかけられた。

 次の日の昼、幸は五十木に「どうですか?私が言うのも変なんですけど、この村の人ってみんないい人ですよね。」と尋ねると、
「もう、三人程に絞ってるけど、1週間かけてゆっくりと見極めるわ。まあ、誰と一緒になるかは別として、この地に移るのは決めちゃってんねん。次に、大阪に戻るのは引っ越しの準備と「準幸」さんへの退会の御挨拶の時やね。薄井さん、無茶な願いかなえてくれてありがとうな。薄井さんもいい人と巡り合うとええな?それともいいステディーがもういてはるんかな?」
と言われ、幸は真っ赤になって返事をした。
「いやー、皆さんのお相手を見つけるのにいっぱいいっぱいで、自分の事までは手が回らないです。ただ、皆さんが笑顔で「退会」していかれるのを見て、「結婚」っていいなぁ、って思うようにはなってきてます。」

 「薄井さーん、ぼちぼち帰るで!五十木さんは、焦らんとゆっくり見極めや!迷いすぎて「ジャムの法則」にはまらんようにだけ気をつけるんやで!」
と副島が二人に声をかけると「じゃあ、五十木さんの健闘を祈ってます。」、「ありがとう。良い報告ができるように頑張るわな。」と二人は握手を交わすと、神標津町のメンバーと五十木に見送られて、レンタカーは釧路空港に向かって走り出した。
 
 帰りの飛行機の中で幸は副島に質問を連発した。神標津酪農組合との関係や、五十木との事前電話の内容を尋ねては丁寧にメモを取り、更に質問を重ねた。
「今後も、結婚願望が強い女性会員さんには神標津の人たちは紹介していいんですか?1対十数人って、ほぼ打率10割じゃないですか?」
「うーん、結婚までが仕事やと思ったらそれでええんやろうけど、おいちゃんはその後も夫婦関係が続くカップルを応援したいねん。五十木さんは、親が勧める縁談から「逃げたい」ってだけやなく、結婚に関する明確なビジョンがあったし、親元を離れたいって願望もな。せやから北海道の話を持ち出したんや。それにな…。」
と言葉を濁らせた。
「ん、今何か言いかけましたよね?何なんですか?いつも副島のおっちゃんは「大胆不敵」に動いてるようで、必ず「確信」を持ってことを進めるやないですか?今回の五十木さんは、私が裏釣書作って、おっちゃんの面談うけてない人やったのに、2,30分の電話だけでよく北海道行きを即決しましたよねー。何が決めてやったんですか?」
と突っ込むと、「仕方がない」といった顔で
「まあ、五十木さんが近日中に結婚することがわかってたってことかな…。まあ、薄井さんにもそこらへんはぼちぼちわかるやろ。おいちゃん、昨日は飲み過ぎたから、寝させてもらうわな。」
とだけ言って、幸の反対を向いて寝始めた。

 「ん?結婚することがわかってたってどういう事?きちんと教えてくださいよー!」
幸は不満顔で副島の肩をゆするが、完全「無視」を決め込んだ副島は狸寝入りを続けたので幸は諦めた。
 (状況分析をすると、五十木さんと顔を合わせたのは、申込時の面談を受けた私と紅音社長が最初に受付をして…。あっ、そういえば珍しく最初から「入会OKよ」って言われたような気が…。いや、でも、紅音社長は五十木さんが来たときに応接であいさつしただけやから、それこそ2,3分の面談やったはず…。そんな判断を下す時間はあれへんかったはず。うーん、私には理解できへん何かがあるはずなんやろうけど全然想像できへん。あー、私ももう寝る!)と幸も諦めて目をつぶった。

 五十木から連絡が来たのは、5日後だった。
「薄井さん、結婚決めたよ。三人で決めあぐねてたんやけど、最終的には三人のご両親と会わせてもらって、スムーズに私を受け入れてくれた家に決めたわ。会社の退職手続きや引っ越し手続きしに明日、大阪に帰るから「準幸」さんにも顔出させてもらうわな!」
「おめでとうございます!喜んでお待ちしてますよ。ところで、つかぬことを御伺いしますが、うちの社長や副島とは面識おありだったんですか?」
「ん?変なこと聞くんやな。そんなもんあったら、高い会費納めんと直接お願いしてるやん。あの派手な社長さんは申し込みの日に初めて会ったし、副島さんは北海道行きの前日の電話が最初やで。なんか、問題でも?」
「いや、気にしないでください。では、明日お待ちしてますから。」
電話を切って、ますます疑問が膨らんだ。(ん、結局は社長もおっちゃんもろくに五十木さんを見極めんと判断したってこと?今までそんなことあれへんかったのに…。うーん、これはおっちゃんに直接聞くしかないか…。)

 翌日、幸が一人と事務所でシステムの改良についてノートパソコンを開いて打ち合わせをしてるところに、五十木が現れた。髪は後ろで束ねられ、化粧はうっすらとした北海道仕様のナチュラルなものに変わっていた。
「よー、薄井さん!これおみやげな!おっ、隣の男の子は薄井さんのステディーか?えらいいい雰囲気やんか?ぱっと見た目、年下って感じやけどやるやん!」
と神標津酪農組合の手作りバターとローストビーフの入った紙袋を幸に手渡すと、幸と一人を冷やかした。一人は真っ赤になってうつむいてしまっている。
「あー、五十木さん、いらっしゃい!こちらは、うちのシステムやってくれてるSEの今葉君です。仕事仲間ですから「ステディー」とかふざけないでください。今葉君が困ってしまいますから…。」
幸が五十木を注意したが、「彼氏の方は、まんざらでもないみたいやで。客観的に「ラブラブオーラ」が二人から出てたもんな~!あー、薄井さんにあやかり、あやかり!」とふざけて幸に手を合わせた。

 「失礼します。打ち合わせはまたの機会にお願いします。」
一人はノートパソコンを閉じるとそう言い残し、五十木に会釈をするとそそくさと事務所を出ていった。
「ふーん、彼も「草食系男子」ってやつやな?でも、ああいう「女に免疫無し」の「純粋培養草食男子」もええもんやで。薄井さんも「擦れたイケメン」よりもさっきの彼みたいな方がお似合いやと思うでな!」
と好き勝手言われるがままだった。その一方的な会話の中で(私と一人君か…。今まではそんなこと考えたことも無かったけど、職場内恋愛みたいなもんかな?このひと月の間、やたらと一緒に居る機会が多かったし、そういわれると意識してしまうよな…。)と幸も将来を想像して顔を赤らめた。

 そこに「おー、五十木さん、この5日の間にすっかり「道産娘どさんこ」にならはったな。明るく健康的で幸せの明るいピンクのオーラが出てるで!おーめでーとさーん!」と副島が入ってきた。幸は「ピン」ときた!
 五十木は副島にも丁寧に礼を伝え、「礼金」の支払いを済ませ退会手続きを済ますと深々とお辞儀をして出ていった。
 事務所で二人っきりになったのを見計らって、副島に尋ねた。
「おっちゃん?さっき「ピンクのオーラが出てるで」って言うてたけど、おっちゃんには「人のオーラが見えてんの?」せやから、結婚する人とできへん人の見極めができんの?」
 副島は冷蔵庫から麦茶を出しながら幸に言った。
「そんなん見えるかいな?これから結婚する五十木さんへの「リップサービス」やがな。薄井さんがそんなバイアスに掛かってどうすんねん。そんなもんが見えたらADアドバイザーの仕事は全員「霊能者」か「巫女」にとられてしまうがな。それとも薄井さん、生駒山か恐山にでも籠って「シャーマン(※霊能力者)」目指してみっか?カラカラカラ。
 アホなこと言うてんと、今晩のデート同行者の資料だしてや。今日は、おいちゃんはオブザーバーで薄井さんメインでいくからしっかりと打ち合わせやで!」
「はーい、そりゃそうですよね。「風水」や「占い」は「統計」ですもんね。つい、「超能力」に目が向いてしまいました。ケラケラケラ。生駒山や恐山で無く、ここでおっちゃんに修行つけてもらって、一人前のADを目指すって決心しましたから!はい、これが今日の二人の「裏釣書」です。
 共通の趣味の「ニッチな深夜枠のオリジナルアニメ」で話を進めようと思いますので、もし私が詰まったら援護射撃お願いしますね!」
幸が副島に笑い返すと、新規申し込みの電話のベルが鳴った。

おしまい(中締め)


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感想 19

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みんなの感想(19件)

蒼井輪
2025.07.31 蒼井輪

「あらお☆ひろ」先生、皆さんからの感想へのお返事忘れてますよー!
:(;゙゚''ω゚''):

今週末のRBFCで「幸ちゃん」もお題になってるのでお願いしますよー!
忙しくても、赤井先生はきちんとやってますよ。
「あらお☆ひろ」先生も読者さん大切にしてくださいねー!

よろひこー!
ヾ(*´∀`*)ノ

解除
のーの&ぽよぽよ&たぬ吉

「のーの」でーす!

昨日のRBFC女子部で幸ちゃんの話題で盛り上がりましたよー!
みんなでカミングアウトすると、半分弱のメンバーが独身!
めっちゃ意外でしたねー。

準幸を参考に婚活するって話も合って面白かったです。
自分の偏差値を客観的に把握して、
見た目よりも一緒にいて楽しい、疲れない人
ってね。

そのうち誰かが
この作品が元で結婚しましたー!
って聞いてみたいね!

遅れましたが投票しましたよー!
ヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪

解除
あーくん
2025.07.18 あーくん

「準幸」楽しく読み終わらせていただきました。
みんなも書いてますけど、ドキュメンタリーの強さっていうのか、リアル赤井先生の活躍が生で伝わってきました(笑)。
「かもめの新兵」さんや「たぬ吉R&D&P」さんのカップリングの時もいろいろ動かれてましたもんね。

「かもめの新兵」さんの時は、チームみりおたに相当量の「作戦」を投下してくれてました。
「たぬ吉」さんの方は感動秘話がいっぱいでしたね。
基本的に縁の下の力持ち的に表に出ず、気が付いたら「プロポーズ」する気にさせられちゃってたってね(笑)。

そんな活躍もいつかノベル化して欲しいです!
あらお☆ひろ先生の新作も楽しみにしていまーす!
°˖☆◝(⁰▿⁰)◜☆˖°

解除

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