『私の神様は〇〇〇〇さん~不思議な太ったおじさんと難病宣告を受けた女の子の1週間の物語~』

あらお☆ひろ

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⑦「京橋の夕食~「まつい」のどて焼きと串カツ~」

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⑦「京橋の夕食~「まつい」のどて焼きと串カツ~」
 最初のアテとして、土手焼きと牛すじが並べられた。健は、牛すじを串から外すと土手焼きの中に落とした。
「よく混ぜて食べてみいや。コラーゲンたっぷりでお肌もすべすべになるで!旨いぞー!好みで一味をかけてな。じゃあ、改めて希ちゃん、二十歳の誕生日おめでとう!ウエルカムトゥー「親父ワールド」!」
とふざけて言い、グラスのビールで乾杯をした。今回も最初のひとくちは「7」まで数えてのどごしと胃袋でビールを味わった。土手焼きの味噌だれに漬かった巨大な牛すじは今まで食べたことのない食感と味覚でやはり、「大人の味」がした。

 さわがしい店の雰囲気の中で、全員が笑顔で飲み、楽しそうに頬張っている。少し見ているだけで「二度漬け禁止」のルールは分かった。串カツを「どぼっ」っと漬ける人もいれば、軽く通してキャベツでソースをすくって皿の上でカツに追い足しする人もいる。串カツは、串の種類で値段が違うことが分かり、飲み物やおでんは、色の違う札がカウンターの前に並べて勘定することも分かった。健から
「絶対に串や骨は床の落としたらあかんで。食い逃げ扱いになるからな。カラカラカラ。」
と笑いながら注意を受けた。



 みんな、約10分から15分で1000円ほどの勘定で次から次へと入れ替わっていく。串カツは、最初に昼にも食べた「アスパラ」を頼んだ。健も一緒に頼んだので2本のアスパラのフライが希の前の皿に並んだ。希の初の「ソース通し」は、大成功の味だった。
「ぎょへー、さらに美味しい!健さん、やっぱり揚げたての方が一段と美味しいな!他は何がお勧めなん?」

 健が、にぎやかな店内で希の耳元で次々とおすすめを伝えていく。希はそれに合わせて、カウンターの中の調理担当の「まつい」のオリジナルTシャツを着た男性にどんどんと注文をかけていく。どれを食べても美味しく、ビールも進んだ。
 あっという間に、大瓶は空になり、「健さん、もう一本ええかな?」と確認して、追加を頼んだ。それからおでんを頼み、日本酒にもチャレンジした。



 あっという間に15分が経った。まだまだ、食べたかったが、店の前にたむろする席が空くのを待つ人達が目に入った。「長居しないのがここのマナーやで。次に行こか!」と、店員に「お勘定頼んまっさ!」と健が声をかけた。ふたりで勘定は2800円だった。
「希ちゃん、次は「生レバー」食べに行こか!」
と後の平成24年7月に禁止されてしまう「牛の生レバー」を食べに別の店に移った。

 健は、焼肉店に入ると、メニューブックを開くことなく、聞いたことのない「言葉」を次々と店員に伝えていった。
「健さん、今、何を頼んでたん?生レバー以外、一個もわかるもん無かったんやけど。ここ焼き肉屋やろ?普通はロースとかカルビとちゃうの?あと「マッコリ」って何?グラスふたつって言ってたから飲みもんやとは思うねんけど…。」
望みが尋ねると、
「うーん、焼肉って言っても、ここはホルモン専門店やからなぁ。希ちゃん、将来の為に一つ覚えといたらええこと教えといたるわな。大阪では「ほうるもの」がなまって「ホルモン」になったっている俗説があるけど、それは間違いで、「ホルモン」は「ドイツ語」やねん!試験に出るから覚えとけよ!カラカラカラ。
 まあ、冗談はさておき、横隔膜の「ハラミ」は普通の焼肉屋でも出るけど、今頼んだんは、「肺」や「心臓」や「腎臓」やからな!まあ、冥途の土産に食べといて損はないやろ。もしかしたら、天国はインド仏教が仕切ってたら「牛」は神さんの使いやから食べられへんでな。
 あと「マッコリ」っていうのは韓国のどぶろく酒みたいなもんや。飲みやすいから飲みすぎへんように気をつけてや。酔っぱらって寝てしもたら、ホテルに連れ込んで犯してまうぞ!カラカラカラ。」
と笑って答えた。

 マッコリがカメで出てきた。付属の柄杓ひしゃくでグラスに入れて飲んだ。色的には「カルピス」のようだが、しっかりとお酒の味がした。「飲みすぎたらダメ」と言われていたが、ついついお替りが進んでしまった。健にカメは取り上げられてしまい、続きはウーロン茶になった。
 続けて出てきた「生レバー」は、ごま油と塩で美味しくいただいた。その次は「牛肉のユッケ」でうずら卵の黄身でゆっくりと味わった。今でも希は、時々、15年前のこの店を思い出すことがある。ちなみに生レバー、生肉の禁食ルールだけでなく、この店も2年にわたる「はやり病」による外食自粛で残念ながら閉店してしまっている。



 余談だが、令和の今、生レバーを食べようと思うと、京橋では国道を挟んだ反対側の焼肉店で「写真撮影不可」、「SNS等の発信厳禁」の約束でないと出てこない「超裏メニュー」になり普通の店でお目にかかることは無い。ユッケは、HACCP工場でパッケージングされたパックユッケが枚方市駅近くにある焼き肉店で食べられると聞いているが、めったなことで夜に枚方市駅に出ることは無いのでこの15年、食べられてはいない。

 その後、出てきたホルモンは、どちらも初めて食べる食感と味で楽しめた。「ハチノス」、「ハツ」、「マメ」等々とひとつひとつ健が冗談を交えながらどこの部位なのかを説明してくれた。希は「シマチョウ」のプルプル感が気に入り、お替りを頼んだ。
 炭火でゆっくり焼くホルモンで時間は、ゆっくりと過ぎ、気がつけば7時半になっていた。程よく、酔いが回り、死ぬことも忘れてご機嫌になった希がふざけて
「健さん、私、このまま死んだら「処女」まま、あの世に行ってしまうことになんねん。さっき酔っぱらったら、私をホテルに連れ込んで犯すぞって言ってたけど、今日は、楽しませてもらったし、自主的な「お礼」で健さんに私の「処女」あげよか?」
と言うと、
「おいちゃん、ロリコンとちゃうから遠慮しとくわな。「処女」はええから、またあとで「背中」掻いてくれるか?お酒が回って血の巡りが良くなったんか、「背中」かゆいねん。まあ、そろそろお開きの時間やしな。カラカラカラ。」
と軽くいなされた。

 店を出るときに、希が言った。
「健さん、明日も会えるかな?一晩、これからの事考えるから、相談に乗ってほしいねん。時間と場所は合わせるからお願い。それとも健さん、こんなガキを相手にすることができへんくらい忙しいんかな?」
 ちょっとすねた態度を見せた希に健は名刺を渡した。健によく似た顔のちょっとかわいくない裸の人形(?)が描かれていた。名刺に書かれた「よろず相談承ります!」の文字が妙に目立っていた。
「明日もおいしいもん一緒に食べよか。午前中は仕事やけどあとは空いてるから。もし出かける気になったらおいちゃんの携帯に電話ちょうだい。今日は、寄り道せんと、まっすぐ帰るんやで。じゃあ、最後に「背中」掻いてもらおか。」




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