『私の神様は〇〇〇〇さん~不思議な太ったおじさんと難病宣告を受けた女の子の1週間の物語~』

あらお☆ひろ

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⑩「散歩」

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⑩「散歩」
 十三から淀川の河川敷に出てふたりはゆっくりと歩いた。健は途中のコンビニで買ったビールのロング缶を持ち、飲みながら希の話に耳を傾けている。
「健さん、笑わんと聞いて欲しいねんけど、もしかして健さんって「神様」かなんかなん?」
と真顔で聞く希にむかってビールを吹きだした!
「ぎゃはははは!なんやそれ!おいちゃんが「神様」ってか?そりゃ、「世界神様連絡協議会日本支部大阪分室」から速攻クレームくるでなぁ!「笑わんと聞いてくれ」って、そりゃ無理やで!」
ともともと細い目をさらに細めて笑う健に、希は真面目な顔で言った。
「昨日、泣きながら「死ぬ」ことを考えてた、私が今こうして笑顔でおれるんは、健さんのおかげやねん。そんなふうに人の気持ちを変えられるんって「神様」くらいやないの?
 私昨日帰ってから、健さんが口にした「オーラ」って言葉が妙に引っかかっていろいろ調べたんやけど、健さんには私のオーラが見えてんの?それってどんなんなん?」
矢継ぎ早に、話す希に少し困った顔で健は足を止めた。

 河川敷の斜面に腰を下ろし、ビールをあおった健は、ゆっくりと希に話した。
「まあ、インドネシアでは、その人が信じれば、そこの「野草」も「石っころ」も「犬」も「ミミズ」もみんな神様やねんて。その観点で見れば、おいちゃんが希ちゃんの「神様」でもおかしくはないけどな。カラカラカラ。
 おいちゃんが言うオーラっていうのは、希ちゃんの醸し出す「気」の流れちゅうか、感情の「雰囲気」みたいなもんやな。
 「笑う門には福来たる」っていう言葉があるように、「どよよーん」としてたら「悪い気」を引き込んでしまうし、楽しく笑ってたら「いい気」が流れ込んでくるっていうことや。「病は気から」って言葉も一緒やな。「どよよーん」としとったら、本来「病気」じゃなくても「病気」になってしまうってなもんやな。
 だから、昨日、泣いてる希ちゃん見てたら放っておかれへんかったんや。まあ、おいちゃんのただのおせっかいと思っとってくれたらええで。どこぞの「神様」みたいに「お布施くれ!」、「壺買え!」とは言えへんからな。かわりにちょっと背中掻いてくれるか?カラカラカラ。」

 希は腑に落ちない顔をして、健の横に座って背中を掻いてあげた。そして昨日、ネットで調べたことを健に説明した。健は、ニコニコ笑いながら、その説明を聞いていた。
 一通り、聞き終えた後、健が希に尋ねた。
「希ちゃんは、昨日いろいろ調べて、「オカルト」とかいろいろ見たと思うんやけど「奇跡」ってあると思うか?」
 希は少し黙って、顔を上げて健に言った。
「うん、私はあると思う。科学万能の世の中でも説明しきれへんことってあるもんな。その中のひとつが「奇跡」なんやと思うねん。「オカルト」って怖いもんやと思ってたけど、そうやないんやね。科学と非科学をつなぐ理論や溝を埋めるんが「オカルト」とするんやったら、きっと月刊ミーとかに出てた奇跡体験っていうのは存在するんやと思うわ。ただ、その「奇跡」が私に来るとは思えへんねんけど…。」

 健はズボンの後ろのポケットから手帳を取り出し、希に聞いた。
「希ちゃん、明日は日曜やけどなんか予定は入ってんのか?あと、月曜日の学校の予定は?」
 明日は何の予定もなく、大学は前期試験が終わりこの1週間は授業が無いので自由がきくと返事をした。
「おいちゃん、明日、明後日と出張やねんけどな、三重県に「奇跡」を探しに行くねん。まあ、仕事半分趣味半分みたいな取材旅行やねんけど、時間あるんやったら一緒に行くか?簡単に言うと「がん封じ」をうたってる神社巡りやねんけどな。
 まあ、「白血病」も「がん」の一種やと思ったら、希ちゃんもご利益に預かれたらラッキーやろ。二日で7か所ほど巡る弾丸ツアーやけどどないや?7か所も参ったら、どこかの神さんが希ちゃんの病気もなかったことにしてくれるかしれへんしな。カラカラカラ。」
「えっ、健さんと一緒に二日間旅行に行けるん?行く行く、絶対に行く!ホンマにええの?私、健さんのお仕事の邪魔になれへん?あっ、でもそんなにお金持ってへんわ…。」

 健はにっこり笑って首を横に振った。
「お金はいらへんよ。その代わり、アシスタントとして、おいちゃんの書いた原稿をワープロで打ったり、写真を整理して欲しいねん。大したバイト賃は払われへんけど、「顎足枕あごあしまくら(※「食事」、「交通費」、「宿泊費」の意味)はおいちゃん持ちやからそこは心配いれへんで。」
と聞き、立ち上がってぴょんぴょん跳ねまわって喜ぶ希の姿を見ながら、携帯を取り出し、電話をかけた。電話は1分で終わった。
「何の電話やったん?」
「ん、明日の旨いもんのサプライズや。完全予約制やから、1人前追加ができるか確認いれてん。まあ、何を食べるんかは、明日の夕方のお楽しみやで。まあ、日本ではめったに食べられへんもんやってとこまでは教えといたるわな。旨いもん食べて、ほんまもんの「神様」お参りしたら、きっと病気もどっかに飛んでいくやろ!ホンマに病気が飛んで行ったら、月刊ミーに投稿しいや!採用賞金が入ったら奢ってくれな。カラカラカラ。
 明日は、ようさん歩くからズボンとスニーカーでおいでな。朝は、早いから今日は早めに晩御飯すませて解散や。
 なんやかんやで長話してしもたし、ええ時間になってしもた。最後にもう一回背中掻いてもろたら、ぼちぼち行こか。」

 ふたりは立ち上がり、明日の訪問先について健から説明を受けながら、淀川の河川敷を出て南へ歩いて行った。



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