『私の神様は〇〇〇〇さん~不思議な太ったおじさんと難病宣告を受けた女の子の1週間の物語~』

あらお☆ひろ

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㉑「金沢の朝のスイーツ~黄金ソフトクリーム~」

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㉑「金沢の朝のスイーツ~黄金ソフトクリーム~」
 「ピピピピピピ、ピピピピピピ」7月25日午前5時半、希の枕元でガラケーが鳴った。(ん?こんな早い時間に誰や?あれ、私、昨日どないして帰ってきたんやろ?福山の自由軒から先の記憶がない。着替えんと、そのままの恰好やけど、もしかして…。)ガラケーを手に取ると、「健さん」と表示されている。
「もしもし、希です。」
「おー、おはようさん。起きとったか。よう寝られたか?二日酔いの頭痛はないか?今日は金沢やけどどないすんねや?しんどかったら、無理してついてこんでええで。6時34分新大阪のサンダーバード間に合うか?」
と言われ、今日は新大阪から金沢に行くことになっていたのを思い出した。

 「行く行く!健さん、私も行くから。今すぐ出るからおいていかんといて!マッハ2で着替えていくからね!絶対おいていかんといてや!」
というと、電話をしながら着替えに入った。
「じゃあ、新大阪に着く時間読めたら電話ちょうだいな。朝ごはんは買っておくからしっかりと顔洗っておいでな。在来線東改札前で待ってるからな。」
と健は電話を切った。(あー、昨日どないしてうちまで送ってもろたんか聞かれへんかったな…。まあ、迷惑かけてんのは間違いないからあったらきちんと謝ろ!)と思い、歯を磨くと今日は出血した。(あー、一昨日、出血なしでちょっと安心したけど、ここ2日続いて出血か…。あー、テンション下がるなぁ…。)

 新大阪駅に着くと、健はデリカステーションの買い物袋を手に東改札前に立っていた。
「おー、思ったより早よ着いたな。6時半にならんと、「旅弁当」の3店は開けへんから、デリカステーションの「エビカツサンド」と「だし巻きサンド」買ってるから分け分けしよか。どっちも旨いぞー!」
が今日、最初の言葉だった。
「健さん、昨日、私…」
と言いかけたが、健は特急券を希に渡すと、北陸方面行の12番ホームに速足で歩いて行った。

 2人掛けの指定席に着くと、健は一番にテーブルを出し、ふたつのサンドイッチの箱と2本の缶ビールを並べた。エビカツサンドもだし巻きサンドも分厚く、3組ずつが1人前になっている。
「希ちゃん、2個ずつ食べてええからな。二日酔いやったら、ビールは「迎え酒」。二日酔いやなかったら「進軍酒」や。カラカラカラ。」」
と笑いビールのタブを開けている。
「よう寝たからか、今日は大丈夫。「進軍酒」やな。ところで…」
 希は恐る恐る昨晩のことを聞いたが、結局、自由軒からずっと寝てしまっていたので、新大阪からタクシーで送ってもらったらしい。希は素直に謝ったが、そもそも健は気にしているそぶりはなく、笑顔で切り返した。
「まあ、サンドイッチ食べようや。おいちゃんは6時半前に出発するときは、いつもこのサンドイッチやねん。エビカツはプリップリ、だし巻きサンドはめっちゃジューシー。今日は、車の運転はあれへんから、ビールの御供付きのスペシャルバージョンやな。」



 9時13分、金沢駅に着くと、少し歩いて、レンタサイクル店に入った。ミニサイクルを2台借りると東にむかい、主計町かずえまち茶屋街の交差点でひがし茶屋街にむけて北上し浅野川を渡ると金箔のついたソフトクリームを手にした外国人観光客だらけの石畳の旧街を抜けた。最初の訪問先は、ひがし茶屋街東端の通称「毘沙門さん」の宇多須神社だった。
「希ちゃん、ここは「病気平癒」の大黒様を筆頭に十体の神様が祀られてて、御利益の多さでは金沢一のパワースポットやねんで!あーこれこれ、神水「利常公酒場の井戸」ってな、病に臥せった前田利常がこの井戸の「御神水」に酒を混ぜて体に振りかけたら病気が治ったってな!おいちゃんやったら、体にかけんと飲んで体の中から染み渡らせるけどな!まあ、例のごとく、井戸は閉じられてるから、手水舎で汲んで帰ろうな。」
と説明を受けながら、歩いていると希が悲鳴を上げた。
「きゃっ!健さん、あれ何?に、忍者がいてる?」



 庭の垣根の影や、建屋の通路下に何体ものリアルな忍者の人形が隠れていたのだった。健は、加賀藩はもともともてなしの気持ちが強い街なので、「逆立ちした獅子」の狛犬も含めて、この神社も参拝者を少しでも楽しませるつもりなのだろうと説明してくれた。
 最後に、拝殿で「神様へのお取次ぎ「ねがいごと箱」」に奉納する用紙に「病気が治って美味しいものをたくさん食べて飲んで長生きできますように。希。」」と住所、氏名、年齢、性別を書き込むと、可愛い梅の花のマークのついた封筒に初穂料1000円と併せて入れると、「お願い事箱」に奉納して手を合わせた。


 
 神社を出ると、来る途中に見かけた金箔ソフトクリームを食べに行こうということになった。たくさんある甘味屋の中で、健は一件の店を選んだ。
「金沢の金箔ソフトは「ゴールデンソフト」って呼ばれてんねんけど、この店はさらに凝ってて、北海道のジャージー牛の牛乳を使ってんねんで。ジャージー牛の牛乳は黄色がかってて、ゴールデンミルクって呼ばれてんねん。ホルスタイン種の牛乳より、乳脂肪分が多いのが特徴やな。本来「白さ」が「良し」とされるミルククリームにあえてこの牛乳を使うことで「ゴールデンミルク」のクリームに金箔のダブルゴールドにしてんねん。ちなみに、これを作ったんは、男の人か女の人かどっちかわかるか?」
「んー、やっぱりスイーツの美味しさにこだわるところは「女の人」とちゃうの?」
「うーん、希ちゃん、きちんとヒントを聞いてへんな?「Wゴールド」ちゅうことは「金ふたつ」やろ!となったら、答えは「男の人」に決まってるやないか!」
と股間に手をやり、持ち上げゆするしぐさをして見せた。
「きゃー、二十歳の女の子に、そのネタはあかんで!健さんそれって「セクハラ」やでー!でも、めっちゃ美味しいソフトクリームやから許したるわ!」
と希は思いっきり笑った。



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