『私の神様は〇〇〇〇さん~不思議な太ったおじさんと難病宣告を受けた女の子の1週間の物語~』

あらお☆ひろ

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㉗「新世界の遅い昼食~じゃんじゃん横丁の串カツ~」

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㉗「新世界の遅い昼食~じゃんじゃん横丁の串カツ~」
 JR玉造駅から再び新今宮駅に戻ってきた。朝イチに病院を出て、二回の御祈祷を受けてきたのですっかりお昼は過ぎて午後2時半になっていた。「ぐぐーっ」と大きな音で希のお腹が鳴いた。
 新今宮の駅から通天閣に向けて約6分。飲食店が立ち並ぶ新世界にやってきた。1956年完成した、地下3階、展望階2階の108メートルの高さのタワーが希と健を迎えた。「大阪城」と並ぶ大阪のランドマーク「通天閣」の「股」の下をくぐり、賑やかな飲食店街を一通りまわった。平日にもかかわらず、結構込み合っている店が多い。
「わー、健さん、ここが「新世界」ってとこなん?なんか、すごく「怖いところ」ってイメージしてたから、ひとりじゃよお来えへんかったんやけど、全然普通の街やん!きゃーっ、あっちもこっちも、串カツやさんがいっぱい!健さん、何食べんの?どこで食べんの?串カツ?お好み?おうどん?それとも意表をついて洋食?ケラケラケラ。」
と楽しそうに周りをきょろきょろと見回している。



 健は、新世界を一回りして、大きな筆書き風の文字で「味自慢 串カツ、どて焼き専門店 串かつじゃんじゃん」と書いた目立つ看板と白い大きな像が入り口の横に置かれた店の前で立ち止った。
 希は、入り口横の、背もたれのある椅子に座った白い等身大の太った像に目を奪われた。
「わー、大きい顔!私の10倍はあるな!目とお腹は健さんに似てるかな!ケラケラケラ。手は小さいのにでっかい足!他のお店の前にもよく似た像が置いてあったけど、これって宇宙人かなんかのキャラクターなん?それとも招き猫や信楽のタヌキみたいなもの?
 ん、「BILLIKEN」?って書いてあるけど「びるりけん」ってどういう意味なんかな?「THINGS AS THEY」?「それらのようなこと」?うーん、英語は苦手やからよう解らんわ。」
と像の前で首をひねっていた。
「まあ、それよりもお腹をうめる方が先やろ!4時には病院に行かなあかんねんからな!まあ、まずは「病気退散!お祓い&お参りツアー」終了の乾杯やろ!」
と健は店に入っていった。



 カウンター席にどっかと座ると、「飲むやろ?」と確認をとると、生ビールの大ジョッキを2杯注文した。「ドン」と希と健の前に870ccの旧規格のビアジョッキが置かれた。現在の大ジョッキと違って、15年前の大ジョッキはジョッキだけで500グラム近くあり、ビールが入ると1.3キロを超えるもので「飲む満足感」を見た目と持ち手で感じることができた。
「1、2、3、4、5、6、7、ぷはーっ!」
同時にふたりで息を吐いた。希がメニューを見ようとすると、健に取り上げられてしまった。いつもと同じように、健にお任せのオーダーとなった。
「さそり、カンガルー、コオロギ、カエル、トカゲ出したってんか。あと、追っかけでチョコバナナと練乳イチゴな。」
(ん?サソリにワニ?なにそれ?あとコオロギやトカゲって言ってたな?何かの隠語なんやろか?前読んだ「新世界」が舞台の漫画では、「きついお酒」のことを「ばくだん」っていうって書いてあったし「ふぐ」のことを当たったら死ぬからって「鉄砲」っていうってテレビ番組でも言ってたもんな。ここのメニューも大阪独特の言い方なんかな?それにしても、「チョコバナナ」に「練乳イチゴ」って今日はスイーツつきやねんな!)と勝手に解釈していた希の前に、油切り用の網の乗った四角いステンレスのパッドが置かれた。

 「きゃーっ!何これー!健さん、変なもん出てきたでー!」
と大きな声を上げてしまい、店の親父さんに「ギロッ」と睨まれた。健は、半分あいたビアジョッキをカウンターに置くと、最もまがまがしい形をしたものを人差し指と親指でつまむと希の顔の前に近づけた。
「きゃっ、(もごもごもご)」
再び、悲鳴を揚げそうになったところ、健の左手で唇を抑えられた。「希ちゃん、声が大きいで…、しーっ!」と小声で囁いた。








 希は目を白黒させて、黙って頷いた。大きく深呼吸して、ビールを一口飲み、両手でジョッキをカウンターに置いた。
「け、健さん…、これって、ほんまもんの「さそり」なん?「さそりのカツ」ってこと?毒に当たって死んだりせえへん?」
と真剣な顔で聞いてくる希の言葉に、健は微笑んで「さそり」の鋏の片方をポキンと折ると、バリバリとかみ砕いて食べて見せた。
「あー旨い!なかなかほんまもんの「さそり」を出す店は少ないからな。おいちゃんの知ってる店では、「ここ」と横浜の「珍獣屋」くらいやからなぁ。(※15年前当時)まあ、その横浜の店では、「ウーパールーパー」や「カブトムシ」に「オオグソクムシ」、そんで「G」まで食べられるけどな。カラカラカラ。」

 希は健の話を聞いてぞっとした。(「ウーパールーパー」に「カブトムシ」…。「G」ってあの北海道にはおれへん(※15年前当時)って言われる「G」やんな…?まあ、今の問題は目の前の「さそり」や!健さんは美味しそうに食べてるよな…。思い切って食べてみるか…。)と覚悟を決め、健から片手の取れたサソリを受け取った。
 (今の私に怖いもんなんか無い!南無八幡!)と鋏を口に入れた。「さくっ」、「ぱりっ」と口の中で乾いた音が響いた。(ん、エビフライの尻尾の味?)「バリバリ」と頭からかじっていくと、口の中に香ばしい味と香りが広がった。(ぎょへー!美味しい!「塩」が合うかも?)とカウンターの前に置いてある「食卓塩」をふりかけ、体の半分まで食べた。
「健さん、美味しい!これ、めっちゃ美味しいわ!ちなみに、「尻尾」食べても大丈夫なん?毒とかないやんなぁ?」
と尋ねると健が小さく頷いた時、ピロリンと健の携帯のメールの着信音が鳴った。

 健がメールをチェックしている間に、希は「さそり」を完食すると、「カンガルー」を「二度漬け禁止」のソースにくぐらすと一気に食べた。(うん、いける!なかなか美味しいわ!)続いて「トカゲ(※実際にはヤモリ)」は目をつぶって口に入れた。(えっ、これも普通に美味しいやん!これも「きゃー!」やな。見た目さえ気にせえへんかったら、美味しい!問題はこれやな…。)と「コオロギ」が二匹刺さった串を手に取って見つめた。
「健さん、これも食べなあかん?」
「モチのロンや。おいちゃんらの中学校の頃は買い食いする店もあれへんかった「イナゴ」を新聞紙やテストのわら半紙で焼いて食べたもんや。油で揚げてる分、食べやすいと思うで!東南アジアでは、コオロギは普通に食べられてる食材やしな。それとも食べんのやめてもう出るか?」
と健にいなされ、思い切ってソースにつけた。(えい!死ぬこと考えたら、「コオロギ」くらいなんじゃい!)と口に入れ、咀嚼した瞬間、「まさに「苦虫をかみ砕いたような」表情の」希のしかめっ面は、満面の笑みに変わった。
「旨い!旨いでこれ!」

 その後出てきたバナナの串カツにチョコがかけられた「チョコバナナ」、イチゴの串カツに練乳がかかったカツも美味しかった。その時点で大ジョッキは空になった。健が、追加で注文したスズメと名古屋コーチンのひよこは「毛をむしったそのままの形」で気味悪かったが、頭がい骨がぱりぱりと割れる食感は最高だったし、カエルは鶏のささみのようにさっぱりしていてソースによく合った。
 生パン粉にラードを混ぜたオリジナルの油で揚げた串カツは、何本食べても胃にもたれることは無く、ひと串毎に無料のキャベツで口の中がリセットされるので、店の名の通り「じゃんじゃん」食べることができた。時刻は3時45分になり、最後に健が頼んでくれたのは「ワニの手」だったが、もう「無敵状態」の希を驚かせるものではなくなっていた。
 午後3時50分、ふたりで「御馳走様」をして、店を出た。(さあ、いよいよ勝負や。今まで元気つけてくれた健さんの為にも「泣くのは無し」でいくで!)希は頬を叩いた。



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