始まりから詰んでいる鬼ごっこ

もちごめ

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6*3人寄れば

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 これはキースが学園に入って三か月が過ぎた、ある晴れた日の摩訶不思議な珍事件である。





***

 「足りない……。ものすごく、足りない」

 「ん? 何が?」

   何がそんなに足りないのか、暗い顔をして足取り重く歩く姿は隣から見ていても生気の欠片もなく、生きる屍が歩いているようだ。

 それとは反対に目だけはギラギラとチラとちらつかせていて、ひとめ目が会えば肉食獣に食らいつかれてしまいそうな獰猛さを滾らせている。

 先ほどから通り過ぎていくクラスメイト達は、一定の距離を開けて一切見目を合わせないように疾風の如く過ぎ去っていく。
 俺だって、知り合いじゃねければ、いや、いつもつるんでいる相手じゃなければ一緒に歩くのはご遠慮したいと思うほどだ。



 それでも、俺は目の前で困っている人がいるのに見て見ぬふりをするような非情なことは絶対にしたくない。
 俺は時期国王になる人間だ。いつか”心優しき賢王”と呼ばれたい。
 

 手を差し伸べようではないか。


 ぶっちゃけ、このまま放っておくのも周りが迷惑を被ると思うし、何よりこの世の終わりみたいな顔をしている人間と一緒に歩いているとまるで今から冥界にでも向かっている感じがして嫌なんだよね……。


 仕方ない、理由を聞いてやるか……。



「今日の昼ごはんが足りなかったのか?」

 それならば、食堂の気のいいおばちゃんにこれからは大盛りを頼めばいい。

 良かった、これで問題解決だ。
 何だ、悩むほどの問題じゃない。あっさり解決した! と思ったのだが、実はそうではなかったらしい。


 「ミアが圧倒的に足りない」

 声に覇気もなく蚊の鳴くような声で呟かれた言葉は、隣にいた俺にはばっちりと聞こえてしまった。



 「……あっそう」


 むしろ聞きたくなかった。
 馬鹿らしい。


 そんなあほらしい理由で、お前は周りに陰鬱な雰囲気を撒き散らかしているのかよ!!
 今すぐ全部拾って綺麗に掃除してこいよ!
 




 俺だって、エマが足りないのに……。

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