真実の愛とは、失ってみないと分からない

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子供という残酷な世界

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あれから時が経ち、小学5年生になった。
小学5年生、それは異性どうしが一緒にいることは恥ずかしいと感じ、異性と一緒にいることはおかしいと言って冷やかされる謎の風潮がある年代。
それは、時として子供としてのもろい心をズタズタに引き裂き、これから先の人生(性格)さえ変えてしまう恐ろしい風潮。そして、好きな人を手に入れるためなら、どんな事でもする奴らが出て来はじめる年代でもある。太一や香が通っている青崎小学校も例外ではなかった。

「太一、一緒に帰ろ。」

「うん。帰ろう!」

そう言って帰ろうとすると、とある二人の生徒が後ろから現れた。

「やーい、太一、香今日も一緒に帰るのかー。
お前ら、付き合ってるんじゃないのかー?」

「付き合ってない。別に一緒に帰る事ぐらいいいだろ。帰る場所が一緒なんだ。」

「そうだった。お前ら一緒に住んでるんだったな。


「やらしい。やらしい。やらしい。やらしい。」

一緒にいた、いかにもバカみたいな顔の男子が煽り立てる。

「なんで。一緒に帰ったていいじゃん。なに、逆にあんたたち羨ましいの?」

香は、イラつきながら言った。すると、男子二人組は言い訳をするようにそそくさと逃げて行った。
 香は、なんてたくましいんだと感心する。その一方、男子であるこの俺が女子である香に守ってもらうなんて惨めったらしくもあった。
なんかすごく悔しい。

そんな悔しい気持ちを抱きながら、帰宅する。

「ただいまー、今帰ったよ。」

「お帰り。帰ってきたとこ悪いんだけどさ、スーパーにお使い二人で言ってもらえない?」

「別にいいよ」

口を揃えて返事した。
俺たちがこんなすぐにお使いに行くって返事したのはもちろん良心っていうのもあるけどもう一つ理由がある。それは、お使いに行く人一人につき2000円のお小遣いがもらえるからだ。

俺たちは、お使い帳とお金それに、お小遣いを握りしめてスーパーへ走った。

俺たちがよく行くスーパーは、児童施設から歩いて15分程度歩くと着くこの島最大のショッピングセンターの中にある。

スーパーへ駆け込み、お使い帳に書いてあるものを全て買う。
そして、いよいよ自分たちの時間だ。
俺の気持ちは最高潮に達していた。
おもちゃを買おうかお菓子を買おうか、それともゲームセンターでゲームする?

2000円もあれば、なんでもできるぞ!
この時の俺たちにとって2000円は、大人でいう50000万円くらい豪華なものでそうそう手に入らないお金だ。

「香はどうする?」

そう聞くと、少し考えるような仕草をし答えた。

「今日、500円分のお菓子を買って、残りの1500円はとっておこうかな。そうすれば、また好きな時に好きなものを買えるでしょ。」

なんてやつだ。俺なんて今日どれだけ一杯の事に使って、どれだけ楽しむかしか考えてなかったのに。
こいつは今日の事だけじゃなく、その先の事まで考えてやがる。またまた、自分が香よりも劣っているのではないかと悔しい気持ちになる。

そして、俺も香の真似をして500円だけ使って残りは取っておく事にした。

「香、今日はそれぞれ違うお菓子を買って、夜、部屋で二人でお菓子パーティーをしよ?」

そうすれば、沢山のお菓子を食べれてお得だし。

「うん!もちろんいいよ!!」

満面の笑みで答えた。なぜか、その笑みは沢山のお菓子を食べられる事に対しての笑みではなかった気がした。

そして、家に帰ると食卓の上にはいつもとは比べものにならないほどの豪華な食事が用意されていた。

「こんな、豪華な料理どうしたの?今日は、何もない金曜日だよ?」

「日曜日にこの児童施設でお店を開くでしょ?その前祝いだよ。明日は、前日で忙しくて出来ないとおもうから。」

そういえば、そうだった。俺と香の高学年2人と低学年の4人で文房具やお菓子などを販売するお店を開くのだ。
そういう事なら、食べない訳にはいかないな。

「では、いただきます。」

児童指導員の佐々木さんの掛け声によってひぶたがきられた。
食卓に並べられた唐揚げ、フライドポテト、お寿司などに向かって一斉に箸が向かう。

「これ、僕が狙っていたやつ!!」

「早いもん勝ちですー。」

意地汚いと分かっていても止めることは出来ない。
遠慮したら食べる事が出来ないからだ。
そうして熱き闘いが終わったのは、食べ始めてから1時間が経った後だった。

児童施設内は闘いが終わり、静かな夜をむかえた。
一方、2人は静かだが着々にお菓子パーティーの準備を進めていた。

そして、その時はきた。消灯時間になり電気が消される。

トントントン

「香、俺だ。開けてくれ。」

「はーい」
バレてはいけないという緊張感が香の声を小さくする。

カチャ

香の部屋が開く。と、同時に香のいい匂いがほのかに廊下に立っている俺のところに漂ってくる。
ピンクを基調とする可愛い部屋に、人形がきれいに整頓されている。
これが、女の子の部屋か。いつも男勝りしている香からは想像がつかない。

部屋に入ると、青い生地にまばらに散らばるピンク色のハートマークのついたパジャマを着て部屋に迎え入れてた。

部屋の中に入ってなお、いつもと違う雰囲気になれず辺りを見渡していた。

「どうしたの?そんな、キョロキョロみて。」

「いや、いつもの香からは想像もつかないくらい女の子っぽい部屋だなと思って。」

「私の事をどういう風に思っているのよ。私だって可愛い事とか好きなんだからね。」

顔を赤くさせ、口を尖らせている。
今日はおかしい。香の行動全てが可愛く感じてしまう。

俺たちは、目を見つめあった。見つめあっていると、だんだん笑いが込み上げてくる。

「ハハハハ、お菓子食べ始めよ?」

「うん笑」

そうして、食べ始めた。お菓子を食べながら
最近の出来事、友達の色恋話、からかってくる奴らの悪口など、色々の話をした。
すごく楽しいひとときだった。もう、ずっとこの時間が続けばいいとも思った。

そして、気づいたときには日を過ぎていた。

「あ、ヤバい。もう、こんな時間だ」

急いで片付けをし、部屋に戻ってねた。

そして、土曜日は大忙しだった。
施設の大掃除に、品だし、飾り付けなどやることがいっぱいで気づいたときには、もう寝てしまっていた。

「起きて。開店の準備するよ。」

誰だ?今日は、日曜日だぞ?何もないだろう。

ん?日曜日?
自分が寝ぼけていたことに気づく。
まだ、ぼんやりとしている目を服の裾で擦り目を覚ます。
香は、もう着替えなどの身支度は出来ているようだ。

楽しみにし過ぎではないか?かくいう俺も相当楽しみにしていた。なぜなら、学校の友達が沢山来てくれるからだ。

俺は、服をおおざっぱに入れてあるタンスの上においてある綺麗に畳まれた服を手に取り、着替えを開始する。

何か横から視線を感じる。香だ。

恐る恐る自分の足元に目をやる。足元には、脱ぎ捨てられたズボンが捨てられていた。

「うわっ」

情けない声と同時に反射的に手でパンツを隠し、セクシー女優かって言いたくなるようなポーズをして、大事なところを隠した。

香が部屋にいることをすっかり忘れていた。
手や足は冷たいのに、頬だけが異様に熱い。

「は、は、早く部屋から出てってくれ。」

逃げるように、部屋を出て香は扉を閉める。

「な、な、何も見てないから。て、ていうか、もし見たとしてもあんたと私は兄弟みたいなもんだから平気でしょ?」
 
んなわけあるか!と、ツッコミをいれてしまいそうになってしまう。

部屋の外からは、香の声はしなくなった。
その一方、窓の外からは大勢の声が聞こえてくる。
ヤバい、もう開店する。
俺は、急いで身支度を整え部屋をでた。

急いで皆がいる玄関に行き、客を向かえる。
時計の針は、丁度10時を指していた。

佐々木さんの掛け声と同時に店がオープンし、人が流れ込んでくる。

近くのおばあちゃんやおじいちゃん。

「おばちゃん、おじちゃん来てくれたんだ。」

低学年の子たちの嬉しそうな声が店中に響きわたる。
この、おばちゃんとおじちゃんはよく低学年の子たちにお菓子をあげているらしい。

「みんなに会いにきたよ。みんな可愛らしい格好だねー。」

シワで口と鼻がくっつきそうな顔でにっこりと笑った。いつも学校に行くときは制服だから、私服の子供たちを見るのは新鮮ですごく嬉しいのだろう。

そうこうしている間に時は過ぎ、東に傾いていた太陽が真上に登っていた。

その時だった、頼もーという大きな声をあげ店に入ってくる団体がいた。
俺の友達たちだ。その後ろを、男子の行動をバカじゃないの?と、言わんばかりの顔で見ている女子た
 ちが入ってきた。香の友達だろう。

「いらっしゃい。来てくれてありがとう。」

俺と香は、皆をもてなす。だが、皆はなぜかビックリした顔で立ち尽くしている。

「な、なんだよ、その服と髪型は。」

「今日、お店を開いただろう?だから、少しオシャレしなって言って、佐々木さんがセットしてくれたんだ。」

「いいな、いいな。俺もオシャレしてぇー」

皆から羨ましがられるのは、悪い気分ではない。
むしろいい気分だ。まるで、皆と比べ特別な存在になれたような気分になった。

俺は、いい気分のままお店を案内する。

「こっちが文房具売り場で、あっちがお菓子売り場。」

皆が皆好きなものを買い、嬉しそうにしながら帰っていった。

そうして、お店は夕日に彩られながら閉店を向かえた。
閉店したからといって、俺たちの仕事が終わった訳ではない。お菓子や文房具を置くために使った机や床に落ちているゴミを片付ける仕事が残っている。

俺たちは、慣れない大きなほうきで床を掃除し始めた。
ほうきは、俺たちの身長と比べかなり大きく、ほうきで掃くのも一苦労だった。
ようやく全ての仕事が終わり、布団に入ったのは10時を過ぎていた。
大変な仕事をした後の布団は疲れているせいか、いつもよりも数倍フカフカに感じられ、いつの間にか寝てしまっていた。

俺たちは大変な行事が終わり、またいつも通りの平穏な毎日が来ると思っていた。だが、その平穏な
毎日とは裏腹にこの日をきっかけに、香の人生を大きく変える大きな事件が起きた。

その事件が起こったのは、この日から2週間が経過した、月曜日の朝だった。

朝、俺たちはいつも通り学校に行くと、香の国語の教科書がビリビリに破かれていた。
それは、あの人気ものの香が受けるはずがないイタズラだった。
俺は、何が起こっているのかが分からずただ、立ち尽くしていた。
ふと、我にかえるとすぐになんとかしないとという衝動から香の手を引っ張り職員室に走った。

ビリビリに破かれた教科書を先生に見せると、先生は青ざめていた。この先生は、若い女の人でこういう経験がないのだろう。先生は、朝の会で皆にこの事を言い犯人を探そうとした。探そうとするだけで、それ以外の事は何もしてくれない。

そして、それからは何事もなく1日が過ぎ、下校時間になった。
俺は、香と帰ろうとしたがどこにもいない。
香を探すため、一通り学校を周ったがどこにもいなかった。
きっと先に帰ったんだろうと思い、一人で帰宅した。帰宅をした後、佐々木さんに香が帰って来たか尋ねる。だが、返答は帰って来てないとの事だった。だったら、一体どこにいる?
辺りは、もう真っ暗で女の子の小学生が一人で外にいると危ない。
俺は、良くない事を考えてしまう頭を自分の小さな拳で思いっきり殴り玄関口を開ける。
すると、服がボロボロになって泣いている香がうずくまっていた。

「香、どうした?何があった?」

問いかけても返事がない。ただ、泣いてうずくまっているだけ。
俺は、何度も問い返す。
すると、口を開き鼻水が混じっている鼻声ではなし始めた。

「私と仲良かった子が、お店開いた時に来ててさ。
その時に、太一に一目惚れしたんだって。
で、その後私に太一に彼氏がいるか聞いて来たんだ。
それで、私は知らない。気になるなら、自分で聞けばって言ったの。そしたら、調子乗ってるとか言われて仲間外れにされたり、教科書破かれたりした。
で、今日の放課後、先生にちくったのが気に入らなかったらしくて、女子トイレで仲良かった4人に囲まれて蹴られた。」

はい?何を言っているのか分からない。今の話の中に香が悪い部分なんてあったか?いや、ない。
自問自答し、冷静になると混乱から怒りに変わった。今からでも、俺があの4人のところに殴りに行こうとすると

「待って。行かないで。」

香が俺を止めた。香の必死に止めようとする様に、
俺に落ち着きをもたらした。

「佐々木さんに言って、先生に伝えてもらおう。
もし、なんかあっても絶対守るから。ね。」

優しく言うと、震えた声で小さく頷く。
そして、俺は優しく香の頭を撫でた。
あの日、香が俺にしてくれたように。

そして、佐々木さんに言い、佐々木さんから先生へと連絡が行き、4人組の両親が学校に呼び出されるほどに大きくなっていった。

そして、数日後あの4人は学校に来なくなった。
聞いた話によると、女子少年院に送られたらしい。

あの4人がいなくなってともかく良かったが、この事件以降、香は俺以外の友達とは怖くて話せなくなってしまった。
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