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修道女、抱きしめようとして気づく
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特殊な訓練など受けていないメイラの思考は停止した。
暗い目をしたハリソン。
真っ青な空を背景に、ギラリと光る刃。
黄色味を帯びた乾いた土が、もわりと煙を上げて立ち込める。
「……ごめん、メイラねぇちゃん。俺」
少し離れた位置で膝を付き、切られた肩を庇うように背中を丸め……聞き取れないほどの小声で呟くのは、幼い頃にはそのオムツを手ずから替え、ひとさじひとさじ離乳食を食べさせた、大切な弟だと思ってきた少年。
「ねぇちゃんじゃなくて、ミーシャを選んだ」
マントの左半身が血の色に染まっている。顔色も、真っ青を通り越して白い。
「血、血が……!」
パニックに陥り、ろくに働かない頭で、それでも可愛い弟の怪我が気に掛かる。
そんなメイラに、死人のような顔色の少年が顔を伏せた。
「本当にごめん」
さっとその場から飛びのいた彼の背後には、周囲の砂の色に紛れるような服装の集団が立っていた。人数にして、こちらの三倍以上。集団というよりも、統率されたひとつの部隊だ。
彼らは無言でメイラたちを取りまき、衣擦れの音ひとつ立てずに刀身の短い剣を引き抜いた。
ギラギラと、眩い太陽の日差しが刃に反射する。
ひっ、とメイラの喉が鳴った。
素人でもわかるほどの殺気に、まるで直接肌が切り裂かれたように感じたのだ。
「少し埃が立ちますので、目を閉じていてください」
マローの声色が、普段通りなのが不思議だった。
三十人以上もの男たちに剣を突きつけられて、心臓が鷲掴みにされるような緊迫感に包まれているというのに、後宮近衛の女性騎士たちはまったく顔色も変えていない。
邪魔をしてはいけないと思いつつも、メイラはすがるようにマローの腕を握った。
女性のものにしては逞しい手が、そっとメイラの視界を塞ぎ、ふわりとフードを深くかぶせる。
メイラは促されるままぎゅっと目を閉じて、奥歯をガキリと噛んだ。
彼女たちを死地に連れてきてしまった。
単なる自己満足にすぎない安易な行動が、取り返しのつかないことになってしまった。
狙われていると、わかっていたのに。
父に、くれぐれも行動に注意しろと言われていたのに。
ザッと、音無き重い気配のようなものを感じて、息を飲んで頭を抱えた。
キン! と鋼が触れあう音。ざざざっと砂を蹴る音。
切迫した恐怖は、目を閉ざしていればなおのこと増す。
「……ッ!!」
これだけ近ければ、自身に向けられた殺気が良くわかる。
悲鳴もうめき声も聞こえない。しかし、人間と人間とがぶつかり合い、命のやり取りをする気配だけが鮮明に感じ取れた。
やがて漂ってきた血の匂いに、メイラはブルブル震えながら、悲鳴を上げてしまいそうな唇を両手で覆った。
嫌、……嫌!
マローたちは命を掛けて戦っているのに、自分はいったい何をしているのだろう。
小さくなって、丸くなって……まるで、蛇に睨まれた憐れなネズミのようだ。
なにも出来ないのだから、巣穴から出るべきではなかった。周りを巻き込んでまで、粋がって行動するべきではなかった。
メイラはぎゅっと頭を抱えて小さく丸くなったまま、事が早く終わるようにと願った。
この血の匂いが、メイラの知る誰かのものでありませんように。
どうか神様、彼女たちをお守りくださいと、奥歯を食いしばりながら必死で祈った。
どれぐらい経っただろう。
ぐ、と肩に手を置かれて、喉の奥で悲鳴を上げた。
「……しっ、お静かに。まだ敵がいます」
マローの声だ。
おそるおそる目を開けると、そこに居るのは普段通りの彼女たちだった。
息を荒げ、震えているのはメイラだけ。
見たところ、ともに居た全員が無事。かすり傷ひとつ負った様子はなかった。
「……あ」
「大丈夫ですか?」
「マ、マロー」
「お怪我は?」
「ルシエラ」
生臭い血の匂いが乾いた空気とまじりあって、酷い吐き気がした。
「移動しましょう。……すべて想定内ですので、ご安心ください」
想定内? ハリソンが敵と内通していたらしいのも? この、咽るような血の匂いも?
そんな訳はないと言い返そうとしたが、息を吸った瞬間、その意気はしゅるしゅると萎んだ。
メイラには、何を言う権利もない。
わがままを言って、彼女たちを必要以上の危険にさらしてしまったのだ。
ふと、騎士の一人が動いた。
無意識のうちにそれを目で追って、彼女が抜身の剣を地面に向けて突き刺すのを見た。
うめき声などは聞こえなかった。ただ、襲撃者のうちのひとりの息の根を止めたのだと知った。
眩暈がした。
吐き気と耳鳴りと、我慢しようとしたにもかかわらず、がたがたと膝が震え立っていられない。
ごく自然に、マローの身体が余計なものを見せないように動いた。
「失礼いたします」
広げた手に抱き寄せられて、弾力のある大きな胸に顔をうずめる。
ああどうして、自分はただ守られているだけの非力な女なのだろう。
敵の死に震えあがるなど、情けない。
見ようとしなくても、足元に血だまりがいくつもあって、乱雑に転がった男たちの死体が否応もなく視界に入ってくる。
怖い。どうしようもなく、恐ろしい。
しかしこんな状況下でも、近衛騎士たちの表情に動揺はない。
彼女たちは恐怖を感じないのだろうか。いや、そんなはずはない。心優しい彼女たちが、命のやり取りに思うところがないはずはない。
きっと、面に出さないようにしているのだ。特にメイラの目に入らないように。
彼女たちの想いを、無下にするわけにはいかなかった。
ゴクリと喉を鳴らして苦い唾を嚥下して、マローの胸から顔を離す。
「……どういう状況なの?」
我ながら、情けないほどに細く震えた声だ。
しかし近衛騎士たちは神妙な顔をして、その場に膝をついて頭を下げた。
「囲まれるまで気づかず申し訳ございません。ですが、こんなこともあろうかと準備はしておりました」
騎士姿のルシエラが、この殺伐とした背景にはそぐわない玲瓏たる美貌で言った。
「とりあえず修道院へ参りましょう。安全の確保はしておきましたので」
「え……」
それでは、道案内などいらなかったのではないか。
あらかじめハリソンが裏切るとわかっていたのか?
「まだ敵がいるようですので、退路をとります。子どもたちのことはご心配なく。こういう状況になった場合は、早々に避難させるように指示しておきました。おそらくはすでにもう街の方に移動しています」
「でも、ハリソンはミッシェルの事を言っていたわ。ミッシェルは孤児院の子よ」
「申し訳ございませんが、個々の名前までは把握できておりません。修道院の方にいる者に調べさせます」
本当にハリソンは暗殺者ギルドの者なのだろうか。
ミッシェルを脅しの材料に使われたのだろうか。
問い詰めたいことは幾つもあったが、今はそんな場合ではないと飲み込んだ。
ただ、こんな状況になっても、ハリソンに裏切られたとは思えなかった。もし子どもの命を楯に取られたら、メイラとて同じ行動を取っていたかもしれないと思うからだ。
「……急ぎましょう」
マローに急かされ、斜面を下る。
修道院でも火事があったのか、壁には黒い煤が付き、貴重な窓ガラスがそこかしこで割れているのが見える。
早く駆け付けたいと思うのに、なかなか足が前にすすまない。
幼いころから見慣れた家の、半壊状態という酷い有様に、心臓がギリギリと締め付けられるようだった。
「……来ましたね」
キンバリーの淡々とした声が聞こえた。
咄嗟に振り返ろうとしたメイラを、マローがひょいと片手で持ち上げた。
「失礼。走ります」
この街まで乗ってきた馬たちは、すでに前の襲撃の時に手綱を放っている。
下手にパニックになってしまえば、巻き込まれ事故に遭いかねないからだ。
しかし十分に訓練された軍馬たちは、乗り手を置いてさほど遠くには行っておらず、むしろ修道院めがけて走る女騎士たちに速足で寄ってきた。
マローはまるで曲芸をするかのような身軽さで、鐙に足を掛けることもなくその背に飛び乗った。
メイラは、「ひやぁ!」と上げかけた声を必死で飲み込み、舌を噛まないように顎に力を入れた。
暗い目をしたハリソン。
真っ青な空を背景に、ギラリと光る刃。
黄色味を帯びた乾いた土が、もわりと煙を上げて立ち込める。
「……ごめん、メイラねぇちゃん。俺」
少し離れた位置で膝を付き、切られた肩を庇うように背中を丸め……聞き取れないほどの小声で呟くのは、幼い頃にはそのオムツを手ずから替え、ひとさじひとさじ離乳食を食べさせた、大切な弟だと思ってきた少年。
「ねぇちゃんじゃなくて、ミーシャを選んだ」
マントの左半身が血の色に染まっている。顔色も、真っ青を通り越して白い。
「血、血が……!」
パニックに陥り、ろくに働かない頭で、それでも可愛い弟の怪我が気に掛かる。
そんなメイラに、死人のような顔色の少年が顔を伏せた。
「本当にごめん」
さっとその場から飛びのいた彼の背後には、周囲の砂の色に紛れるような服装の集団が立っていた。人数にして、こちらの三倍以上。集団というよりも、統率されたひとつの部隊だ。
彼らは無言でメイラたちを取りまき、衣擦れの音ひとつ立てずに刀身の短い剣を引き抜いた。
ギラギラと、眩い太陽の日差しが刃に反射する。
ひっ、とメイラの喉が鳴った。
素人でもわかるほどの殺気に、まるで直接肌が切り裂かれたように感じたのだ。
「少し埃が立ちますので、目を閉じていてください」
マローの声色が、普段通りなのが不思議だった。
三十人以上もの男たちに剣を突きつけられて、心臓が鷲掴みにされるような緊迫感に包まれているというのに、後宮近衛の女性騎士たちはまったく顔色も変えていない。
邪魔をしてはいけないと思いつつも、メイラはすがるようにマローの腕を握った。
女性のものにしては逞しい手が、そっとメイラの視界を塞ぎ、ふわりとフードを深くかぶせる。
メイラは促されるままぎゅっと目を閉じて、奥歯をガキリと噛んだ。
彼女たちを死地に連れてきてしまった。
単なる自己満足にすぎない安易な行動が、取り返しのつかないことになってしまった。
狙われていると、わかっていたのに。
父に、くれぐれも行動に注意しろと言われていたのに。
ザッと、音無き重い気配のようなものを感じて、息を飲んで頭を抱えた。
キン! と鋼が触れあう音。ざざざっと砂を蹴る音。
切迫した恐怖は、目を閉ざしていればなおのこと増す。
「……ッ!!」
これだけ近ければ、自身に向けられた殺気が良くわかる。
悲鳴もうめき声も聞こえない。しかし、人間と人間とがぶつかり合い、命のやり取りをする気配だけが鮮明に感じ取れた。
やがて漂ってきた血の匂いに、メイラはブルブル震えながら、悲鳴を上げてしまいそうな唇を両手で覆った。
嫌、……嫌!
マローたちは命を掛けて戦っているのに、自分はいったい何をしているのだろう。
小さくなって、丸くなって……まるで、蛇に睨まれた憐れなネズミのようだ。
なにも出来ないのだから、巣穴から出るべきではなかった。周りを巻き込んでまで、粋がって行動するべきではなかった。
メイラはぎゅっと頭を抱えて小さく丸くなったまま、事が早く終わるようにと願った。
この血の匂いが、メイラの知る誰かのものでありませんように。
どうか神様、彼女たちをお守りくださいと、奥歯を食いしばりながら必死で祈った。
どれぐらい経っただろう。
ぐ、と肩に手を置かれて、喉の奥で悲鳴を上げた。
「……しっ、お静かに。まだ敵がいます」
マローの声だ。
おそるおそる目を開けると、そこに居るのは普段通りの彼女たちだった。
息を荒げ、震えているのはメイラだけ。
見たところ、ともに居た全員が無事。かすり傷ひとつ負った様子はなかった。
「……あ」
「大丈夫ですか?」
「マ、マロー」
「お怪我は?」
「ルシエラ」
生臭い血の匂いが乾いた空気とまじりあって、酷い吐き気がした。
「移動しましょう。……すべて想定内ですので、ご安心ください」
想定内? ハリソンが敵と内通していたらしいのも? この、咽るような血の匂いも?
そんな訳はないと言い返そうとしたが、息を吸った瞬間、その意気はしゅるしゅると萎んだ。
メイラには、何を言う権利もない。
わがままを言って、彼女たちを必要以上の危険にさらしてしまったのだ。
ふと、騎士の一人が動いた。
無意識のうちにそれを目で追って、彼女が抜身の剣を地面に向けて突き刺すのを見た。
うめき声などは聞こえなかった。ただ、襲撃者のうちのひとりの息の根を止めたのだと知った。
眩暈がした。
吐き気と耳鳴りと、我慢しようとしたにもかかわらず、がたがたと膝が震え立っていられない。
ごく自然に、マローの身体が余計なものを見せないように動いた。
「失礼いたします」
広げた手に抱き寄せられて、弾力のある大きな胸に顔をうずめる。
ああどうして、自分はただ守られているだけの非力な女なのだろう。
敵の死に震えあがるなど、情けない。
見ようとしなくても、足元に血だまりがいくつもあって、乱雑に転がった男たちの死体が否応もなく視界に入ってくる。
怖い。どうしようもなく、恐ろしい。
しかしこんな状況下でも、近衛騎士たちの表情に動揺はない。
彼女たちは恐怖を感じないのだろうか。いや、そんなはずはない。心優しい彼女たちが、命のやり取りに思うところがないはずはない。
きっと、面に出さないようにしているのだ。特にメイラの目に入らないように。
彼女たちの想いを、無下にするわけにはいかなかった。
ゴクリと喉を鳴らして苦い唾を嚥下して、マローの胸から顔を離す。
「……どういう状況なの?」
我ながら、情けないほどに細く震えた声だ。
しかし近衛騎士たちは神妙な顔をして、その場に膝をついて頭を下げた。
「囲まれるまで気づかず申し訳ございません。ですが、こんなこともあろうかと準備はしておりました」
騎士姿のルシエラが、この殺伐とした背景にはそぐわない玲瓏たる美貌で言った。
「とりあえず修道院へ参りましょう。安全の確保はしておきましたので」
「え……」
それでは、道案内などいらなかったのではないか。
あらかじめハリソンが裏切るとわかっていたのか?
「まだ敵がいるようですので、退路をとります。子どもたちのことはご心配なく。こういう状況になった場合は、早々に避難させるように指示しておきました。おそらくはすでにもう街の方に移動しています」
「でも、ハリソンはミッシェルの事を言っていたわ。ミッシェルは孤児院の子よ」
「申し訳ございませんが、個々の名前までは把握できておりません。修道院の方にいる者に調べさせます」
本当にハリソンは暗殺者ギルドの者なのだろうか。
ミッシェルを脅しの材料に使われたのだろうか。
問い詰めたいことは幾つもあったが、今はそんな場合ではないと飲み込んだ。
ただ、こんな状況になっても、ハリソンに裏切られたとは思えなかった。もし子どもの命を楯に取られたら、メイラとて同じ行動を取っていたかもしれないと思うからだ。
「……急ぎましょう」
マローに急かされ、斜面を下る。
修道院でも火事があったのか、壁には黒い煤が付き、貴重な窓ガラスがそこかしこで割れているのが見える。
早く駆け付けたいと思うのに、なかなか足が前にすすまない。
幼いころから見慣れた家の、半壊状態という酷い有様に、心臓がギリギリと締め付けられるようだった。
「……来ましたね」
キンバリーの淡々とした声が聞こえた。
咄嗟に振り返ろうとしたメイラを、マローがひょいと片手で持ち上げた。
「失礼。走ります」
この街まで乗ってきた馬たちは、すでに前の襲撃の時に手綱を放っている。
下手にパニックになってしまえば、巻き込まれ事故に遭いかねないからだ。
しかし十分に訓練された軍馬たちは、乗り手を置いてさほど遠くには行っておらず、むしろ修道院めがけて走る女騎士たちに速足で寄ってきた。
マローはまるで曲芸をするかのような身軽さで、鐙に足を掛けることもなくその背に飛び乗った。
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