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修道女、額づく人を見慣れてきたことに気づく
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手早く用意を整えた陛下が、慌ただしく出立の時を迎える。
送り出す最後の瞬間まで、メイラは陛下の側をついて離れなかった。
侍従が肩にかけた服のボタンを留め、ベルトの位置を修正し……泣かずにいることは難しかったが、震える指で甲斐甲斐しく世話を焼く。
陛下は時折宥めるようにメイラの髪を撫で、安心させようと微笑みかけてくれるが、そんな表情を見るたびにまた涙があふれてくる。
まだ、フェイクの情報である可能性はあった。
しかし、その真偽を確かめてから動くのでは遅すぎるのだそうだ。
すでにもう帝都が囲まれているのであればそれなりの、まだであれば早急にそうならないよう手を打たなければならない。
十年前の内乱で大勢の皇族が亡くなったが、中には他国に亡命した者もいた。今回旗印として名前が挙がっているガリオン皇子はそのうちの一人で、陛下の御兄弟のひとりだという。
確かに、今の帝国を落とすのであれば、後継者のいない陛下を弑するのが最も効率が良く、次点は帝都を攻め落とすことだろう。前者はともかくとして、後者であっても、たとえば国内の有力貴族を味方に引き入れ、陛下の皇位を剥奪するなどすれば、あながち現実不可能だとは言えない。
とにかく、現状がどうなっているのか確認し、一刻も早く体勢を整えることが必要だった。
それには、いつまでも帝都から遠いハーデス公爵領にいるわけにはいかない。。
名残惜しむような時間はもちろんなく、愁嘆場の挨拶もなく、陛下は最後にぎゅっとメイラを抱きしめ、それがふたりの別れだった。
離宮を出た時、そこには華やかな色合いの集団がいた。
昨夜のことを思い出し、すわ刺客かと誰もが身構えたが、「何をしておる!!」と父が大音声で怒鳴ったことでもわかるが、それは父の第二正室をはじめとする五人ほどの女性たちだった。
「も、もうしわけございませぬ! 慮外者のわたくしたちをどうかおゆるしください!!」
美しい女性たちが、ドレスが汚れるのも構わず土の上に膝を付き、涙ながらに訴える。
普段の彼女たちの態度を知っていれば、唖然とするより恐怖心すら覚えるような状況だった。
「下がれ」
米神に血管を浮かせた父が、足を止められてしまった陛下の傍らからズンズンと前に出る。
「あなた!!」
「お前への沙汰はすでに伝えてあるはずだ」
「そんな、あんまりでございます。長年お仕えしてきたわたくしに対して……」
「すまないが公、かまっている時間はない」
「はい、陛下。申し訳ございません。どうかご出立を」
「ああ偉大なる皇帝陛下、哀れな女にどうかご慈悲を!!」
進行方向を塞がれているので先に進めなかったのだが、遠慮のない近衛騎士たちが強引に彼女たちを脇へ退かす。
「陛下!!」
緑色のグラデーションの美しい外出用のドレスを身にまとったリリアーナが、ドレスに負けないほど美しい顔を涙でぬらし、通り過ぎる陛下の足に縋りつこうとした。
「きゃあっ」
刺客かもしれないと警戒している茶色い髪の近衛が、容赦なく剣を抜き彼女の前に突き立てると、心ある者であれば憐れを感じずにはいられない声色で悲鳴を上げ、尻餅をついた。
並外れた美貌の姫が、涙にぬれて地に伏せる様は、まるで舞台の一幕のように見ごたえのある情景だったが、陛下は振り返るどころか、すれ違いざまに視線をやることもなかった。
陛下、陛下と女性たちの憐れを誘う声が上がる。
戦場へと行く夫を送り出すべく玄関口まで出ていたメイラは、一顧だにしない陛下のその様子に感心すればいいのか、昨日までの彼女たちの振る舞いとのギャップに慄けばいいのかわからず、鳥肌の立った腕を軽く上下にさすった。
その指先は、自覚していなかったが細かく震えている。自身が怖れ、怯えているのは、あの集団ではなく、これから陛下が向かうことになる戦場だ。
どうかご無事でと、心の中で何度も願う。
この手はどうして剣を握ることが出来ないのだろうと、もう何度目になるかもしれない悔しさを噛み締め、無事を祈ることしかできない不甲斐なさに、また涙が溢れそうになる。
「……御方さま、お身体を冷やしてはなりません。部屋に戻りましょう」
やがて陛下が用意された騎馬に乗り、一度こちらを振り返った。
「待って、陛下が何か仰って……」
距離があって、良く見えない。
涙で視界がふさがれているせいでもある。
やがて陛下は騎馬の首を門扉の方へ向け、あっという間に見えない位置まで遠ざかってしまった。
「わからなかったわ」
もちろん声が届く距離ではなかったが、泣いてさえいなければ唇の動きで最後になんと仰っていたのかわかったかもしれないのに。
泣いてはいけない。
泣いてはいけない。
メイラは大きく息を吸って、陛下に握らされたハンカチでそっと目元を拭った。
「……お前! お前がぁぁぁっ!!」
不意に、視界の片隅から何かが飛んできた。
すっと前に出たのはルシエラ。もはや気弱な女性を取り繕う事もなく、第二正室の手から飛んできた物を叩き落として昂然と顎を上げる。
音を立てて道の上に落ちたのは、重量があり当たれば怪我をしそうな扇子だった。
「お前が陛下に告げ口をしたのでしょう?!」
「いい加減にしないかっ!!」
一斉に口々にメイラを責め始めた女性たちだが、父の大音声に一瞬にして黙らされた。
今、メイラの周りを固めているのは、後宮近衛の女性騎士たちだ。数的には少数で、その周囲を取り囲む父の配下たちの半分にも満たない。
そんな彼女たちが剣の柄に手を置き、油断なく身構える中、深くため息をついた父が配下の騎士たちに何かを合図した。
「妾妃メルシェイラさま」
離宮の玄関口は、五段ほどの階段状になっている。
メイラがいるのはその一番上で、ドレスの集団は一番下、父は階段の途中に立っていた。
その段を下まで降りた父が、メイラの真正面に立ちなんと片膝を折って頭を下げたのだ。
「あなた?!」
「数々の御無礼、どうかお許しください」
蹲る女性たちだけではなく、メイラも唖然として声も出ない。
父の配下の騎士たちも、それに倣って一斉に片膝を地につけ騎士としての最敬礼の姿勢を取るものだから、声どころか思考能力まで停止してしまった。
「大人しく実家に戻り、謹慎でもしておればこれ以上何も言うことはなかったのだが」
静かに立ち上がった騎士の一部が、メイラと同じように唖然としている女性たちの腕を掴み、これ以上余計な真似ができないようにした。
普段、男性には丁寧にエスコートされることに慣れている彼女たちは、乱暴とまでは言わないが、強引に腕を掴まれて小さな悲鳴を上げる。
父はメイラに向かって頭を下げ続け、第二正室や孫のリリアーナの声にも反応しなかった。
「もう二度と、お目汚しはさせません」
「あなたっ!!」
「お望みであれば、自裁させますが」
女性たちの口から口々に悲鳴が上がった。まさか、これほどの怒りを父が抱いているとは思ってもいなかったのだろう。
「あ、あなた。嘘ですわよね? そんなことを仰らないでくださいませ」
「儂はもはやそなたの夫ではない」
「あなた!!」
あんまりにもあんまりな愁嘆場に、メイラの唇からため息が零れた。
ここは巻き込まれるのを防ぐためにも、如才なく「お任せします」と我関せずを貫くべきなのはわかっていた。
「お父さま」
しかし、庇うわけではないが、これまで表立って動いてこなかった父にも非はあると思うのだ。
「お父さまは口数が少なすぎ、毒舌が過ぎ、他者を顧みなさすぎます」
「……」
膝をついた父の、眉間の皺が深くなる。
「ご夫婦のことなのですから、よく話し合ってください」
メイラは若干早口になって、自分でも何を言っているのかわからないアドバイスのようなものを垂れ流して冷や汗をかく。
そして改めて気づいた。
自身が、今現状もっとも高い位置に立っていて、周囲の者たちに頭を下げさせているという現状に。
ぶるり、と膝が震えた。
一瞬でも、何も感じずその場所に立っていられたのが信じられなかった。
送り出す最後の瞬間まで、メイラは陛下の側をついて離れなかった。
侍従が肩にかけた服のボタンを留め、ベルトの位置を修正し……泣かずにいることは難しかったが、震える指で甲斐甲斐しく世話を焼く。
陛下は時折宥めるようにメイラの髪を撫で、安心させようと微笑みかけてくれるが、そんな表情を見るたびにまた涙があふれてくる。
まだ、フェイクの情報である可能性はあった。
しかし、その真偽を確かめてから動くのでは遅すぎるのだそうだ。
すでにもう帝都が囲まれているのであればそれなりの、まだであれば早急にそうならないよう手を打たなければならない。
十年前の内乱で大勢の皇族が亡くなったが、中には他国に亡命した者もいた。今回旗印として名前が挙がっているガリオン皇子はそのうちの一人で、陛下の御兄弟のひとりだという。
確かに、今の帝国を落とすのであれば、後継者のいない陛下を弑するのが最も効率が良く、次点は帝都を攻め落とすことだろう。前者はともかくとして、後者であっても、たとえば国内の有力貴族を味方に引き入れ、陛下の皇位を剥奪するなどすれば、あながち現実不可能だとは言えない。
とにかく、現状がどうなっているのか確認し、一刻も早く体勢を整えることが必要だった。
それには、いつまでも帝都から遠いハーデス公爵領にいるわけにはいかない。。
名残惜しむような時間はもちろんなく、愁嘆場の挨拶もなく、陛下は最後にぎゅっとメイラを抱きしめ、それがふたりの別れだった。
離宮を出た時、そこには華やかな色合いの集団がいた。
昨夜のことを思い出し、すわ刺客かと誰もが身構えたが、「何をしておる!!」と父が大音声で怒鳴ったことでもわかるが、それは父の第二正室をはじめとする五人ほどの女性たちだった。
「も、もうしわけございませぬ! 慮外者のわたくしたちをどうかおゆるしください!!」
美しい女性たちが、ドレスが汚れるのも構わず土の上に膝を付き、涙ながらに訴える。
普段の彼女たちの態度を知っていれば、唖然とするより恐怖心すら覚えるような状況だった。
「下がれ」
米神に血管を浮かせた父が、足を止められてしまった陛下の傍らからズンズンと前に出る。
「あなた!!」
「お前への沙汰はすでに伝えてあるはずだ」
「そんな、あんまりでございます。長年お仕えしてきたわたくしに対して……」
「すまないが公、かまっている時間はない」
「はい、陛下。申し訳ございません。どうかご出立を」
「ああ偉大なる皇帝陛下、哀れな女にどうかご慈悲を!!」
進行方向を塞がれているので先に進めなかったのだが、遠慮のない近衛騎士たちが強引に彼女たちを脇へ退かす。
「陛下!!」
緑色のグラデーションの美しい外出用のドレスを身にまとったリリアーナが、ドレスに負けないほど美しい顔を涙でぬらし、通り過ぎる陛下の足に縋りつこうとした。
「きゃあっ」
刺客かもしれないと警戒している茶色い髪の近衛が、容赦なく剣を抜き彼女の前に突き立てると、心ある者であれば憐れを感じずにはいられない声色で悲鳴を上げ、尻餅をついた。
並外れた美貌の姫が、涙にぬれて地に伏せる様は、まるで舞台の一幕のように見ごたえのある情景だったが、陛下は振り返るどころか、すれ違いざまに視線をやることもなかった。
陛下、陛下と女性たちの憐れを誘う声が上がる。
戦場へと行く夫を送り出すべく玄関口まで出ていたメイラは、一顧だにしない陛下のその様子に感心すればいいのか、昨日までの彼女たちの振る舞いとのギャップに慄けばいいのかわからず、鳥肌の立った腕を軽く上下にさすった。
その指先は、自覚していなかったが細かく震えている。自身が怖れ、怯えているのは、あの集団ではなく、これから陛下が向かうことになる戦場だ。
どうかご無事でと、心の中で何度も願う。
この手はどうして剣を握ることが出来ないのだろうと、もう何度目になるかもしれない悔しさを噛み締め、無事を祈ることしかできない不甲斐なさに、また涙が溢れそうになる。
「……御方さま、お身体を冷やしてはなりません。部屋に戻りましょう」
やがて陛下が用意された騎馬に乗り、一度こちらを振り返った。
「待って、陛下が何か仰って……」
距離があって、良く見えない。
涙で視界がふさがれているせいでもある。
やがて陛下は騎馬の首を門扉の方へ向け、あっという間に見えない位置まで遠ざかってしまった。
「わからなかったわ」
もちろん声が届く距離ではなかったが、泣いてさえいなければ唇の動きで最後になんと仰っていたのかわかったかもしれないのに。
泣いてはいけない。
泣いてはいけない。
メイラは大きく息を吸って、陛下に握らされたハンカチでそっと目元を拭った。
「……お前! お前がぁぁぁっ!!」
不意に、視界の片隅から何かが飛んできた。
すっと前に出たのはルシエラ。もはや気弱な女性を取り繕う事もなく、第二正室の手から飛んできた物を叩き落として昂然と顎を上げる。
音を立てて道の上に落ちたのは、重量があり当たれば怪我をしそうな扇子だった。
「お前が陛下に告げ口をしたのでしょう?!」
「いい加減にしないかっ!!」
一斉に口々にメイラを責め始めた女性たちだが、父の大音声に一瞬にして黙らされた。
今、メイラの周りを固めているのは、後宮近衛の女性騎士たちだ。数的には少数で、その周囲を取り囲む父の配下たちの半分にも満たない。
そんな彼女たちが剣の柄に手を置き、油断なく身構える中、深くため息をついた父が配下の騎士たちに何かを合図した。
「妾妃メルシェイラさま」
離宮の玄関口は、五段ほどの階段状になっている。
メイラがいるのはその一番上で、ドレスの集団は一番下、父は階段の途中に立っていた。
その段を下まで降りた父が、メイラの真正面に立ちなんと片膝を折って頭を下げたのだ。
「あなた?!」
「数々の御無礼、どうかお許しください」
蹲る女性たちだけではなく、メイラも唖然として声も出ない。
父の配下の騎士たちも、それに倣って一斉に片膝を地につけ騎士としての最敬礼の姿勢を取るものだから、声どころか思考能力まで停止してしまった。
「大人しく実家に戻り、謹慎でもしておればこれ以上何も言うことはなかったのだが」
静かに立ち上がった騎士の一部が、メイラと同じように唖然としている女性たちの腕を掴み、これ以上余計な真似ができないようにした。
普段、男性には丁寧にエスコートされることに慣れている彼女たちは、乱暴とまでは言わないが、強引に腕を掴まれて小さな悲鳴を上げる。
父はメイラに向かって頭を下げ続け、第二正室や孫のリリアーナの声にも反応しなかった。
「もう二度と、お目汚しはさせません」
「あなたっ!!」
「お望みであれば、自裁させますが」
女性たちの口から口々に悲鳴が上がった。まさか、これほどの怒りを父が抱いているとは思ってもいなかったのだろう。
「あ、あなた。嘘ですわよね? そんなことを仰らないでくださいませ」
「儂はもはやそなたの夫ではない」
「あなた!!」
あんまりにもあんまりな愁嘆場に、メイラの唇からため息が零れた。
ここは巻き込まれるのを防ぐためにも、如才なく「お任せします」と我関せずを貫くべきなのはわかっていた。
「お父さま」
しかし、庇うわけではないが、これまで表立って動いてこなかった父にも非はあると思うのだ。
「お父さまは口数が少なすぎ、毒舌が過ぎ、他者を顧みなさすぎます」
「……」
膝をついた父の、眉間の皺が深くなる。
「ご夫婦のことなのですから、よく話し合ってください」
メイラは若干早口になって、自分でも何を言っているのかわからないアドバイスのようなものを垂れ流して冷や汗をかく。
そして改めて気づいた。
自身が、今現状もっとも高い位置に立っていて、周囲の者たちに頭を下げさせているという現状に。
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