195 / 207
修道女、獣に齧られそうになる
4
しおりを挟む
暗闇に慣れた目が、明け方とはいえ外の明るさに慣れるまでに時間がかかった。
しかも、マローの背中に赤子よろしく括りつけられたまま、ものすごい速さで振り回され、しばらくはぎゅっと瞼を閉じて耐えるしかなかった。
はっきりと状況を見てとれるようになったのは、剣を構えたマローが状況を見極めるべく動きを止めたからだ。
まだ揺すられている気がしながらも、なんとか薄目を開けると、寸前に目にした情景が夢でも幻でもなく現実としてそこにあった。
三人がかりで押さえつけられているスカーは無事だろう。しかし、うつぶせに倒れているダンは生きているのだろうか。
白々と明け始めた海を背景に、落葉した木々が狭い間隔で生え、土のほとんどない岩場に広がるのは、色あせた落ち葉と常緑の下生え。
そこに腰を落として座り込み、美しい髪が地に着くのも構わず頭を垂れているのは……
「ルシエラ!!」
名前を呼んだ瞬間に、赤い装束の男がにいっと笑った。
墨色の肌のせいか表情が読みにくく、ちらりと覗いた白い歯が、まるで獣が牙をむき出しにしているかのようだった。
その笑みを見た瞬間に、失敗を悟った。
ルシエラがどういう説明をこの男にしたのかはわからないが、メイラがその名前を呼ぶのは矛盾があったのだろう。
はっと息を飲み、手で口を塞いだ。
今更ながらに、この場が大勢に取り囲まれている事にも気づく。
「そこにいるお嬢さんも、物騒なものは捨てるんだな。見ての通り三十人以上の手練れがいる。この先の船着き場にも、山の上のほうにも」
メイラはぎゅっとマローの服を掴んだ。
ダンが死んだように横たわり、動き出そうとしたスカーを男たちが押さえつけ、梯子を昇ってきたテトラの首には、後ろから剣を付きつけられている。
身体が細かく震えはじめる。
呼吸が浅くなり、視界が緩む。
怖くて。恐ろしくて。
ダンは死んでしまったのだろうか。ルシエラは怪我でもしているのではないか。
スルリ、と鋼が滑る音がした。ひと際背の高い墨色の肌の男が、反りのある剣を抜いたのだ。
マローが改めて腰を低くし、剣を構える。
相手の力量を図るすべなど知らないが、こうやってメイラを背負っている状況で、まともな勝負になるとは思わなかった。
これ以上戦わせてはならない。
それは、こんな所まで彼女たちを連れてきてしまったメイラの責任だった。
「……マロー」
今にも相手に切りかかろうと、全身の筋肉を強張らせていたマローに、メイラはそっと耳打ちした。
「剣を下げて。今ここで戦って、何とかなる数なの?」
「安心してください。指一本触れさせはしません」
「マロー」
そっと、むき出しの首筋に額を当てた。
「わたくしも、あなたたちを失いたくないの」
マローが息を飲むのと、墨色の男が踏み込んでくるのとはほぼ同時だった。
ガキン、と鋼同士がぶつかった。
直線的な剣と、湾曲した剣では、長くつばぜり合うのは難しい。
ずるりと鋼同士が滑る音がして、競り負けたのはマローのほうだった。
それが純粋に力量的な勝負だったのか、メイラの懇願によるものかはわからない。
人ひとり背負っているとは思えない動きで、マローは男から距離を取った。油断なくまた剣を構え、背後を守るように立ち位置を調整する。
ぎゅっともう一度、マローの服を掴んだ。折角生き延びてくれた彼女を、ここまでメイラの為に尽くしてくれたダンたちを、これ以上危険にさらすわけにはいかなかった。
「……そこの御方」
立場的にも引くわけにいかないマローの背後から、メイラは思い切って声を上げた。
赤ん坊がごとく背負われた相手の言葉など、まともに取り合ってくれるかどうか怪しかったが仕方がない。
「申し訳ございませんが、剣を引いていただけないでしょうか」
「メルベル!」
「マローも、少し落ち着いて?」
大柄なマローの肩幅から少し顔を出し、日が昇り始めた明るさの中、視界の暴力になりそうな真っ赤な服を着た男と視線を合わせる。
「そちらの目的をお伺いしても?」
男が真っ黒な眉をひょいと上げた。この距離からだと顔全体が黒すぎて、その目の色まではわからない。
「ほーう。なかなか肝が据わったお嬢さんじゃないか。地味な見た目だが、悪くない」
マローがむっとして反論しようとしたのを、慌てて止めた。
肝が据わっているとは到底思えないが、地味な見た目なのは確かだ。
「そこのルシエラお嬢さんが、『ご友人』を探して欲しいって頼みこんできてなぁ」
男はうなだれたままピクリとも動かないルシエラに顎をしゃくった。
「前金ももらったし言う事を聞いてやったわけだが、あっちにいけこっちにいけと振り回してくれた挙句、逃げ出そうとするからよ」
「……まあ」
メイラは美しい銀糸の髪を垂らして顔を伏せているルシエラに、気遣わし気な目を向けた。
「手荒なことをしたわけではありませんよね?」
座っているのだから、気絶しているわけではないだろうが、先ほどから身動きひとつしないのが気になる。
いやそもそも、振り回すのはともかく逃げ出すというのがわからない。
ルシエラであれば、あとくされなく上手に始末を着けそうなものだが……
「お姫様みたいにやさしーく扱ってやったさ。何しろ極上の金づるだからな? 最悪の場合娼館に売っても十分見合うツラだろう」
娼館に売られそうな気の毒な淑女……というよりは、平気で連れを奴隷商人に売り払いそうだと思ったが、もちろんそれは口に出さずに黙っておく。
「……ルシエラ?」
やはり返事はない。
もしかして、本気で具合が悪いのではないだろうか。心配になってきたところで、ぴくりと彼女の頭が動いた。
長い髪の隙間から、その美しい顔の造作が見てとれた。その長いまつげが伏せられて、目を閉じているのがわかる。
やはり意識がないのかもしれない。
「あのう……お約束していた支払いはいかほどでしょうか?」
一応、聞いてみる。
墨色の男は面白そうな顔をしてメイラを見て、軽く三本指を立てた。
金貨三枚ではもちろんないだろう。
白金貨三枚? 三千万ダラーものニンジンをぶら下げられれば、クライアントとして海賊を雇えるらしい。
「星金貨だぞ」
「え」
メイラは眉を寄せ胡乱な目つきで海賊王子を見てから、もう一度ルシエラに視線を落とした。
帝国の金銭の単位はダラー。流通している硬貨は主に金貨、銀貨、銅貨である。
白金貨は金貨百枚分、星金貨は千枚分に相当する。白金貨ですら一般市民の目においそれと触れるものではなく、星金貨など大きな商会あるいは国家間レベルの取引に利用されるぐらいのものだ。
メイラを探すために、三億ダラーを提示したのか。
驚くより先に、呆れてしまった。
くしくもそれは、後宮に上がる際にメイラが父に強請った金額と同じだった。平民であれば、その人生を十回は買える金額だ。
「ルシエラ……」
ため息と一緒に彼女の名前を呼ぶ。
ふと、髪で隠れているその口元が、笑みの形に歪んでいるのに気づいた。
それに気づいた瞬間、ドン! とどこかで爆音が聞こえた。
ぎょっとしたのはメイラだけではない。
敵対する面々の意識が、こちらから逸れた。
しかも、マローの背中に赤子よろしく括りつけられたまま、ものすごい速さで振り回され、しばらくはぎゅっと瞼を閉じて耐えるしかなかった。
はっきりと状況を見てとれるようになったのは、剣を構えたマローが状況を見極めるべく動きを止めたからだ。
まだ揺すられている気がしながらも、なんとか薄目を開けると、寸前に目にした情景が夢でも幻でもなく現実としてそこにあった。
三人がかりで押さえつけられているスカーは無事だろう。しかし、うつぶせに倒れているダンは生きているのだろうか。
白々と明け始めた海を背景に、落葉した木々が狭い間隔で生え、土のほとんどない岩場に広がるのは、色あせた落ち葉と常緑の下生え。
そこに腰を落として座り込み、美しい髪が地に着くのも構わず頭を垂れているのは……
「ルシエラ!!」
名前を呼んだ瞬間に、赤い装束の男がにいっと笑った。
墨色の肌のせいか表情が読みにくく、ちらりと覗いた白い歯が、まるで獣が牙をむき出しにしているかのようだった。
その笑みを見た瞬間に、失敗を悟った。
ルシエラがどういう説明をこの男にしたのかはわからないが、メイラがその名前を呼ぶのは矛盾があったのだろう。
はっと息を飲み、手で口を塞いだ。
今更ながらに、この場が大勢に取り囲まれている事にも気づく。
「そこにいるお嬢さんも、物騒なものは捨てるんだな。見ての通り三十人以上の手練れがいる。この先の船着き場にも、山の上のほうにも」
メイラはぎゅっとマローの服を掴んだ。
ダンが死んだように横たわり、動き出そうとしたスカーを男たちが押さえつけ、梯子を昇ってきたテトラの首には、後ろから剣を付きつけられている。
身体が細かく震えはじめる。
呼吸が浅くなり、視界が緩む。
怖くて。恐ろしくて。
ダンは死んでしまったのだろうか。ルシエラは怪我でもしているのではないか。
スルリ、と鋼が滑る音がした。ひと際背の高い墨色の肌の男が、反りのある剣を抜いたのだ。
マローが改めて腰を低くし、剣を構える。
相手の力量を図るすべなど知らないが、こうやってメイラを背負っている状況で、まともな勝負になるとは思わなかった。
これ以上戦わせてはならない。
それは、こんな所まで彼女たちを連れてきてしまったメイラの責任だった。
「……マロー」
今にも相手に切りかかろうと、全身の筋肉を強張らせていたマローに、メイラはそっと耳打ちした。
「剣を下げて。今ここで戦って、何とかなる数なの?」
「安心してください。指一本触れさせはしません」
「マロー」
そっと、むき出しの首筋に額を当てた。
「わたくしも、あなたたちを失いたくないの」
マローが息を飲むのと、墨色の男が踏み込んでくるのとはほぼ同時だった。
ガキン、と鋼同士がぶつかった。
直線的な剣と、湾曲した剣では、長くつばぜり合うのは難しい。
ずるりと鋼同士が滑る音がして、競り負けたのはマローのほうだった。
それが純粋に力量的な勝負だったのか、メイラの懇願によるものかはわからない。
人ひとり背負っているとは思えない動きで、マローは男から距離を取った。油断なくまた剣を構え、背後を守るように立ち位置を調整する。
ぎゅっともう一度、マローの服を掴んだ。折角生き延びてくれた彼女を、ここまでメイラの為に尽くしてくれたダンたちを、これ以上危険にさらすわけにはいかなかった。
「……そこの御方」
立場的にも引くわけにいかないマローの背後から、メイラは思い切って声を上げた。
赤ん坊がごとく背負われた相手の言葉など、まともに取り合ってくれるかどうか怪しかったが仕方がない。
「申し訳ございませんが、剣を引いていただけないでしょうか」
「メルベル!」
「マローも、少し落ち着いて?」
大柄なマローの肩幅から少し顔を出し、日が昇り始めた明るさの中、視界の暴力になりそうな真っ赤な服を着た男と視線を合わせる。
「そちらの目的をお伺いしても?」
男が真っ黒な眉をひょいと上げた。この距離からだと顔全体が黒すぎて、その目の色まではわからない。
「ほーう。なかなか肝が据わったお嬢さんじゃないか。地味な見た目だが、悪くない」
マローがむっとして反論しようとしたのを、慌てて止めた。
肝が据わっているとは到底思えないが、地味な見た目なのは確かだ。
「そこのルシエラお嬢さんが、『ご友人』を探して欲しいって頼みこんできてなぁ」
男はうなだれたままピクリとも動かないルシエラに顎をしゃくった。
「前金ももらったし言う事を聞いてやったわけだが、あっちにいけこっちにいけと振り回してくれた挙句、逃げ出そうとするからよ」
「……まあ」
メイラは美しい銀糸の髪を垂らして顔を伏せているルシエラに、気遣わし気な目を向けた。
「手荒なことをしたわけではありませんよね?」
座っているのだから、気絶しているわけではないだろうが、先ほどから身動きひとつしないのが気になる。
いやそもそも、振り回すのはともかく逃げ出すというのがわからない。
ルシエラであれば、あとくされなく上手に始末を着けそうなものだが……
「お姫様みたいにやさしーく扱ってやったさ。何しろ極上の金づるだからな? 最悪の場合娼館に売っても十分見合うツラだろう」
娼館に売られそうな気の毒な淑女……というよりは、平気で連れを奴隷商人に売り払いそうだと思ったが、もちろんそれは口に出さずに黙っておく。
「……ルシエラ?」
やはり返事はない。
もしかして、本気で具合が悪いのではないだろうか。心配になってきたところで、ぴくりと彼女の頭が動いた。
長い髪の隙間から、その美しい顔の造作が見てとれた。その長いまつげが伏せられて、目を閉じているのがわかる。
やはり意識がないのかもしれない。
「あのう……お約束していた支払いはいかほどでしょうか?」
一応、聞いてみる。
墨色の男は面白そうな顔をしてメイラを見て、軽く三本指を立てた。
金貨三枚ではもちろんないだろう。
白金貨三枚? 三千万ダラーものニンジンをぶら下げられれば、クライアントとして海賊を雇えるらしい。
「星金貨だぞ」
「え」
メイラは眉を寄せ胡乱な目つきで海賊王子を見てから、もう一度ルシエラに視線を落とした。
帝国の金銭の単位はダラー。流通している硬貨は主に金貨、銀貨、銅貨である。
白金貨は金貨百枚分、星金貨は千枚分に相当する。白金貨ですら一般市民の目においそれと触れるものではなく、星金貨など大きな商会あるいは国家間レベルの取引に利用されるぐらいのものだ。
メイラを探すために、三億ダラーを提示したのか。
驚くより先に、呆れてしまった。
くしくもそれは、後宮に上がる際にメイラが父に強請った金額と同じだった。平民であれば、その人生を十回は買える金額だ。
「ルシエラ……」
ため息と一緒に彼女の名前を呼ぶ。
ふと、髪で隠れているその口元が、笑みの形に歪んでいるのに気づいた。
それに気づいた瞬間、ドン! とどこかで爆音が聞こえた。
ぎょっとしたのはメイラだけではない。
敵対する面々の意識が、こちらから逸れた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】王妃を廃した、その後は……
かずきりり
恋愛
私にはもう何もない。何もかもなくなってしまった。
地位や名誉……権力でさえ。
否、最初からそんなものを欲していたわけではないのに……。
望んだものは、ただ一つ。
――あの人からの愛。
ただ、それだけだったというのに……。
「ラウラ! お前を廃妃とする!」
国王陛下であるホセに、いきなり告げられた言葉。
隣には妹のパウラ。
お腹には子どもが居ると言う。
何一つ持たず王城から追い出された私は……
静かな海へと身を沈める。
唯一愛したパウラを王妃の座に座らせたホセは……
そしてパウラは……
最期に笑うのは……?
それとも……救いは誰の手にもないのか
***************************
こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる