「君を一生愛すから」って言ってたのに捨てられた

豆子

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考えてみた1

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 エリックの用意してくれた家は立派なものだった。立派すぎて二人で住むには広すぎた。部屋数どれだけあるんだこれ。掃除できるのかこれ。どこもかしこも埃だらけにする自信しかないんだが。
 初日から広すぎる屋敷を持て余した俺は、とりあえずそれなりの広さの応接間のような場所をこの屋敷内での拠点とすることにした。調度品として大きなソファが二つと机に暖炉もあるし、棚の上には時計、引き出しの中には羽ペンとインクなども用意されていて、イアンとこれからの人生設計を建てるのにちょうど良い。
 城から運んできた荷物を部屋の隅に置いて、羽ペンとインク、紙を手にソファに腰掛ける。イアンにも向かいのソファに腰掛けるよう言ったが、頑なに俺の側に立って離れない。これまで城で俺の護衛をしていた時とまるで一緒だ。

「イアン、俺はもう城から追い出された身だからこれまでみたいに護衛しなくていいんだぞ。疲れるだろうしソファに座りなよ」
「いいえ。これまでどおり何があってもお守りできるようお側に控えております」

 イアンは真面目だ。真面目すぎる。
 こんな街外れのお屋敷を襲う人間なんていないだろうに、イアンは真面目に無表情に俺の側に控えている。
 イアンにこれ以上言っても無駄なのは分かりきっている。イアンは一度決めたことは頑として曲げない男だ。二十年間一緒にいてイアンが一度決めたことを翻したりしたり変えるところを見たことがない。仕方ないか。後でイアンにはゆっくり休んでもらうとして、俺は今やるべきことをしなければ。
 俺は羽ペンにインクを染み込ませ、紙に日本語で書きつけた。
 
『第二の人生設計』

 羽ペンで書くのはどうにも慣れず、設計の字が滲みて歪んでいるがまあ良いか。大事なのは見てくれじゃない。中身だ中身。羽ペンを持ち直し、第一の目標を書き記した。
 
 第一の目標『仕事を見つける』

 エリックからの手切れ金があるとはいえ無限ではない。使いたいままに使っていたらあっという間になくなってしまうことは馬鹿な俺でも分かる。城で暮らしていた頃は生活費のことなんて考えもしなかったが、王子の恋人という肩書きを失った俺はただの三十路のおっさんなのだ。自分で金を稼ぎ、生活をしていかなければならない。
 そうは言っても三十路の箱入りおじさんを雇ってくれるようなところはないだろう。だが案ずることなかれ。ここに来るまでの馬車の中で俺はちゃんと考えていたのだ。

「そう、手切れ金を元手にレストランを開くってね!」

 我ながら良いアイディアだ。
 俺には現代日本の知識がある。これをフル活用しない手はない。
 この国の料理は正直言ってあんまり美味しくない。塩辛かったり脂っこかったり甘すぎたりと、日本人の舌には味が濃すぎるのだ。最初城で振る舞われた料理を食べて、あまりの味の濃さに驚いた。半分も食べられなくて、エリックや神官たちが「神子の食欲がないようだ!医師を呼べ!」と大騒ぎになって大変だった。
 それから城での料理は俺の慣れ親しんだ味に合わせて薄味にしてくれて、食べられるようになったっけ。
 故郷の味が恋しくて、母さんが作ってくれた肉じゃがやオムライスの味を思い出しながら、料理人にアレコレ注文つけて似たようなものを作らせたりもした。
 エリックも俺の故郷に寄せた味のご飯を食べて美味しいって笑ってくれたなあ。懐かしい。ここ十年くらいは一度も食卓を共にしなかったけど。
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