9 / 100
第一章 着任します!男性保護特務警護官
第八話 三人目の警護官は襲撃者?
しおりを挟む
――五月の着任当日。
夕方に到着予定だった警護チーム最後の一人は待てど暮らせど一向にやって来ない。あっと言う間に日は落ちて、すでに真夜中となっていた。
現在、五月は自室で一人パソコンを操作中だ。もちろん、やっているのは最後の一人の所在確認である。事前に本部と簡単に連絡は取っていたが、着任初日だけあって他のことも忙しく。確認はほとんど進んでいなかった。
「はぁ、本当に参りましたわ」
無意識に愚痴が口をついて出るのもやむ無し。五月個人の荷物、片付け、そして深夜子が放置していた仕事の数々。家のセキュリティ設定から本部へ提出する書類などなど、初日から見事に実務の山。嫌な予感がばっちり的中であった。
深夜子は朝日とひたすらゲームを楽しんでいる始末。さすがに途中ぶち切れて、仕事に引き立てようとした。ところが、遊び相手を没収されそうになった朝日が悲しそうな瞳で見つめてくる為、あえなく断念。
甘やかさずにはいられない。魔性の警護対象に、戦慄を覚えながらもデレデレの五月である。
――そんな回想をしながら、キーボードを叩き続けていた指を止めて時計を見る。ちょうど深夜一時を回ったところだ。ため息の一つも出る時間ではあるが、着任遅れが出ている三人目を放置するわけにもいかない。
(え、と、着任Mapsデータは……これですわね。お名前は大和梅さん。二十一歳。北海区からの異動で……なっ!? この方もSランク? どうなっ……。いや、今はそんなことを考えている余裕はありませんわね)
気にはなるが全員合流が最優先。Mapsが担当同士で使う個人情報の相互通信用データを確認する。
モニターに映しだされた写真には『梅』、と言う名前からは想像もつかない巨体の女性が映っていた。身長185センチ、筋肉質な体つきだが胸も大きく腰もくびれてスタイルはいい。ワイルドな赤髪のショートヘアに猫科の猛獣を思わせる風貌。特徴的な八重歯はキバにも見える。それでいて容姿は整っており、美しく精悍な顔つきだ。
「やはり本部にも遅延連絡はなし。お持ちのスマホは――不通ですわね。これはどうされ――っ!?」
突如、ブザーオフにしていた通用門の呼び鈴が点滅した。連動させている五月のスマホもバイブ音を鳴らす。
時間を確認すると深夜二時前、完璧に不審な訪問者である。機能させておいて良かったと安堵しながら、五月は防犯カメラの映像をパソコンのモニターへと映し出す。
――そこには少女? の姿が映っていた。身長150センチも無く、この世界の成人女性として考えれば極端に低身長だ。身体つきも平坦で起伏が少なく、贔屓目に見て中学生と言ったところだろう。疑問はつきないが、五月はその少女の容姿をしっかりと確認する。
赤色よりの茶髪がクルリとうねったクセ毛のショートカット。ぱっちりとして猫科の動物を思わせるつぶらな瞳に、牙のような八重歯が逆に可愛らしい。例えるなら、元気いっぱいの猫娘と呼ぶべき顔立ちだ。
そんな少女がこんな時間に男性宅の通用門の呼び鈴を鳴らしてウロウロしている。――だけでなく、何やら家の周りもゴソゴソと調べまわっているようだ。
「空き巣狙い? ……いえ、ここは男性特区のゲーテッドタウン。空き巣程度が侵入できるはずがありませんわ。それにこの見た目……に惑わされてはいけませんわね。行動に対して明らかな違和感。相当に警戒が必よ――――っ!?」
怪しいどころではない。五月が思案していると、さらに別の警告音が響いた。
なんと少女は堂々と通用門横の壁を越え、敷地内へと入って来るではないか!? 不審者どころか不法侵入の犯罪者確定――その刹那。五月の頭に愛らしい朝日の笑顔がよぎった。もしや、男性目当ての侵入? 強姦? いや、拉致の可能性もありえる。
とにかく迎撃をせねば。自分を美しいと褒めてくれた心優しい美少年を、朝日を護るのだ。守護らねばならぬのだ。
その想いに五月は冷静さを失っていた。それも致し方ない。何故なら、この世界の女性にとって自分の側にいるべき男性が奪われるなど、決して許されざる事である。男性は命より重い……! 深夜子のスマホに通知を入れて、急ぎ装備を整えて五月は部屋から駆け出した。
「――そこまでですわっ!」
庭のライトを全開にして不審者を照らす。防犯カメラの映像通り、小柄な猫娘がそこにいた。フード付きのパーカーにジーンズ。なんともカジュアルな出で立ちだ。
しかし、突然ライトに照らし出されたにも関わらず少女は一切動揺を見せない。どころか、五月の姿を確認すると無防備に近づいてくる。
「んだよ。いるならいるで出てくれっつーの。こちとら色々大変でよ。途中で財布なくすわ。スマホは引越しの運送便に――――って、うおあああっ!?」
問答無用! 五月が先制攻撃を仕掛けた。
特殊警棒で相手の胴体を狙って突きを繰り出す。その不意打ちに少女は驚きながらも即座に反応、素早く横飛びで左側へかわす。
明らかに素人ではない動きに五月の警戒レベルはさらに上がる。
「しっ!」
踏み込んだ右足を軸にして、五月は追撃の左回し蹴りを放つ。
突きをかわして油断している相手に見舞う得意のコンビネーション攻撃だ。
「うおっと」
――ところが、少女のか細い左腕にそれはあっさりと阻まれる。
「なっ!?」
五月は驚愕する。ガードされた事実よりも驚くべきはその感触。蹴りの威力が完全に殺された。いや、びくともしていない? あの小さな身体の、細い腕の、どこそんな力が!?
「おい、てめえっ! いきなりなんてことして来やがんだよっ!?」
一方の少女はあの攻撃に対しても、ぷんすかと文句をよこす程度の余裕な反応。
何がなんだかわからない。五月は格闘術も優秀な成績を収めており、それなりに自信を持っている。そんな自分の攻撃に対して、この反応……いったい何者――「まさかっ!?」五月の脳裏に最悪の想像がよぎった。
(何かしらの手段で移動中の大和梅さんを襲撃。持ち物を強奪して入れ替わる。つまり、SランクMapsが捕らえれるレベルの犯罪組織の一員。さらに、それが男性を狙うとなれば……海外の特殊工作員による男性拉致!?)
「――ですわね……貴女!?」
「妄想にも限度があんぞこらああああっ!? 俺だっ! 俺が大和梅だ。今日着任の三人目だっつーの!」
「「…………………」」
「――替え玉の工作員はだいたいそう言いますわ」
「聞く耳なしかああああっ!!」
地団駄を踏む少女に、ビシリと特殊警棒を五月が向ける。
「そもそも、もう少しマシな人員は用意できなかったんですの? 貴女のようなちんちくりんで替え玉とは片腹痛いですわ。す、で、に、私は大和梅さんの写真を確認済みですのよ!」
「ちっ、ちんちくりんだあ!? し、失礼かてめえっ! それは、あ、あれだ。ちょ、ちょーっとばかし写真映りが悪いだけじゃねえかよ」
バツが悪そうに、口を尖らせた少女が反論する。まるで拗ねている子供である。
「はいいっ!?」
そう言われ、五月は記憶にある写真の姿と目の前にいる本人を脳内で見比べる。……ビキッっと額に血管が走った。
「しっ、心霊写真の方がまだ可愛げがありますわああああっ!」
怒りの雄たけびと共に五月は特殊警棒の乱れ突きを繰り出した。
「のわあああああっ! て、てめえ! いい加減にしねえと身体でわからせてやんぞコラあっ!」
「ふっ、本性を現しましたわね! 覚悟なさいませ。今から貴女を拘束して、たっぷりと事情聴取して差し上げますわ。私の未来の夫となるべき殿方に手を出そうなど……死刑台までの片道キップも大サービスですわっ! この外道!!」
「ひっでえ言いようだなこんちくしょう!」
鼻息あらい五月による特殊警棒での突き、払い、間に加わる蹴りのコンビネーション。しかし少女はそれをしっかりと回避、ないしはガードする。
さらに――「おらっ、取ったぞ! 警棒ばっかぶん回しやがって」なんと、少女は五月の振り回す特殊警棒を素手で受け止め、その先を握り締めた。
何より恐るべきはその腕力。五月が引けども押せどもビクともしない。
――だが。
「ふっ、甘いですわね!」
カチリと五月が握り締める特殊警棒の持ち手からスイッチの音がした。
「なに――ふぎゃああああああっ!?」
放電による音と光が、少女の握り締めていた特殊警棒の先から放たれる。
五月が持つ警棒はMapsの標準配布品と違って、特別仕様のスタンガン警棒だ。もちろんこの世界の女性基準なので、日本人成人男性なら死ねるレベルの威力である。
ほんの十秒ほど感電させれば充分。まともに動けなくなるどころか気絶してもおかしくない。五月は勝利を確信して笑みを浮かべる。ああ、これで自分の美少年は護られ――。
「ちっ! 痛ってえな、おい?」
不意の一言――恐ろしい力で警棒ごと間合いに引きずり込まれる。
ありえない! あれを受けて平然としている? 化物の二文字と恐怖が五月によぎる。
まずい! これは一発貰わざるを得ない。すばやく警棒を手放し、五月はとっさに急所のカバーを試みた。
「おっ、ボディに一発はオッケーってか? いい判断だぜ! 俺が相手じゃなけりゃなあ」
そう言って何気なく振られた少女の拳だが、恐ろしいまでの威圧感が五月を襲った。え? これは食らってはいけない奴なのでは? しかし、もう遅い。耐えるしかない。覚悟を決め、五月が歯を食いしばったその時――。
「ほわっちゃあ」
ジャージ姿ですっ飛んできた深夜子の空中回し蹴りが少女の側頭部にヒットした。
「ぎゃふうっ!?」
五月の目の前から水平に数メートル先へとふっ飛んでいく。そのまま少女は自分の身体と同じ大きさくらいはあろう庭石へ激突。深夜子の蹴りのとんでもない威力に驚愕して五月は目を見開く。見れば庭石は粉々に爆散、これはタダではすまない……と言うか死んだのでは?
――しかし。
「おい、おい、おいおい! やってくれんじゃねえか? こんな気持ちいい蹴り喰らったのは久しぶりだぜ! ちょっとご機嫌になっちまったぞ、てめえ!?」
ライトに照らされる砂煙の中から、少女がぐいぐいと首を回しながら現れる。頭から出血しているようだが、五月にはまったく理解できないのだが、ダメージを受けているように見えない。
「おおっ!? あたしの不審者死ね死ねキックを受けて平気とは!? これはちょっと本き――あれ?」
「へっ! さっきのはてめえか? なかなかやんじゃねえか、ちょっと俺と遊んで――あれ?」
「「……あれ?」」
「あっ、梅ちゃん!? 梅ちゃんだ! おっひさ」
「げえっ、深夜子!? なっ、なななんでてめえがここにいやがるんだ!?」
「は? へ? な……んですの? ふえええええええっ!?」
少女こそ『大和梅』ご本人。深夜子の一期上で先輩後輩の間柄にしてSランクMapsだ。
こんな見た目ではあるが、御年二十一歳。れっきとした成人女性。ご覧の通り、その可愛らしい姿からは想像もつかない凶悪な身体能力の持ち主で、深夜子が入学するまではMaps養成学校最強の名を欲しいままにしていた怪物である。
夕方に到着予定だった警護チーム最後の一人は待てど暮らせど一向にやって来ない。あっと言う間に日は落ちて、すでに真夜中となっていた。
現在、五月は自室で一人パソコンを操作中だ。もちろん、やっているのは最後の一人の所在確認である。事前に本部と簡単に連絡は取っていたが、着任初日だけあって他のことも忙しく。確認はほとんど進んでいなかった。
「はぁ、本当に参りましたわ」
無意識に愚痴が口をついて出るのもやむ無し。五月個人の荷物、片付け、そして深夜子が放置していた仕事の数々。家のセキュリティ設定から本部へ提出する書類などなど、初日から見事に実務の山。嫌な予感がばっちり的中であった。
深夜子は朝日とひたすらゲームを楽しんでいる始末。さすがに途中ぶち切れて、仕事に引き立てようとした。ところが、遊び相手を没収されそうになった朝日が悲しそうな瞳で見つめてくる為、あえなく断念。
甘やかさずにはいられない。魔性の警護対象に、戦慄を覚えながらもデレデレの五月である。
――そんな回想をしながら、キーボードを叩き続けていた指を止めて時計を見る。ちょうど深夜一時を回ったところだ。ため息の一つも出る時間ではあるが、着任遅れが出ている三人目を放置するわけにもいかない。
(え、と、着任Mapsデータは……これですわね。お名前は大和梅さん。二十一歳。北海区からの異動で……なっ!? この方もSランク? どうなっ……。いや、今はそんなことを考えている余裕はありませんわね)
気にはなるが全員合流が最優先。Mapsが担当同士で使う個人情報の相互通信用データを確認する。
モニターに映しだされた写真には『梅』、と言う名前からは想像もつかない巨体の女性が映っていた。身長185センチ、筋肉質な体つきだが胸も大きく腰もくびれてスタイルはいい。ワイルドな赤髪のショートヘアに猫科の猛獣を思わせる風貌。特徴的な八重歯はキバにも見える。それでいて容姿は整っており、美しく精悍な顔つきだ。
「やはり本部にも遅延連絡はなし。お持ちのスマホは――不通ですわね。これはどうされ――っ!?」
突如、ブザーオフにしていた通用門の呼び鈴が点滅した。連動させている五月のスマホもバイブ音を鳴らす。
時間を確認すると深夜二時前、完璧に不審な訪問者である。機能させておいて良かったと安堵しながら、五月は防犯カメラの映像をパソコンのモニターへと映し出す。
――そこには少女? の姿が映っていた。身長150センチも無く、この世界の成人女性として考えれば極端に低身長だ。身体つきも平坦で起伏が少なく、贔屓目に見て中学生と言ったところだろう。疑問はつきないが、五月はその少女の容姿をしっかりと確認する。
赤色よりの茶髪がクルリとうねったクセ毛のショートカット。ぱっちりとして猫科の動物を思わせるつぶらな瞳に、牙のような八重歯が逆に可愛らしい。例えるなら、元気いっぱいの猫娘と呼ぶべき顔立ちだ。
そんな少女がこんな時間に男性宅の通用門の呼び鈴を鳴らしてウロウロしている。――だけでなく、何やら家の周りもゴソゴソと調べまわっているようだ。
「空き巣狙い? ……いえ、ここは男性特区のゲーテッドタウン。空き巣程度が侵入できるはずがありませんわ。それにこの見た目……に惑わされてはいけませんわね。行動に対して明らかな違和感。相当に警戒が必よ――――っ!?」
怪しいどころではない。五月が思案していると、さらに別の警告音が響いた。
なんと少女は堂々と通用門横の壁を越え、敷地内へと入って来るではないか!? 不審者どころか不法侵入の犯罪者確定――その刹那。五月の頭に愛らしい朝日の笑顔がよぎった。もしや、男性目当ての侵入? 強姦? いや、拉致の可能性もありえる。
とにかく迎撃をせねば。自分を美しいと褒めてくれた心優しい美少年を、朝日を護るのだ。守護らねばならぬのだ。
その想いに五月は冷静さを失っていた。それも致し方ない。何故なら、この世界の女性にとって自分の側にいるべき男性が奪われるなど、決して許されざる事である。男性は命より重い……! 深夜子のスマホに通知を入れて、急ぎ装備を整えて五月は部屋から駆け出した。
「――そこまでですわっ!」
庭のライトを全開にして不審者を照らす。防犯カメラの映像通り、小柄な猫娘がそこにいた。フード付きのパーカーにジーンズ。なんともカジュアルな出で立ちだ。
しかし、突然ライトに照らし出されたにも関わらず少女は一切動揺を見せない。どころか、五月の姿を確認すると無防備に近づいてくる。
「んだよ。いるならいるで出てくれっつーの。こちとら色々大変でよ。途中で財布なくすわ。スマホは引越しの運送便に――――って、うおあああっ!?」
問答無用! 五月が先制攻撃を仕掛けた。
特殊警棒で相手の胴体を狙って突きを繰り出す。その不意打ちに少女は驚きながらも即座に反応、素早く横飛びで左側へかわす。
明らかに素人ではない動きに五月の警戒レベルはさらに上がる。
「しっ!」
踏み込んだ右足を軸にして、五月は追撃の左回し蹴りを放つ。
突きをかわして油断している相手に見舞う得意のコンビネーション攻撃だ。
「うおっと」
――ところが、少女のか細い左腕にそれはあっさりと阻まれる。
「なっ!?」
五月は驚愕する。ガードされた事実よりも驚くべきはその感触。蹴りの威力が完全に殺された。いや、びくともしていない? あの小さな身体の、細い腕の、どこそんな力が!?
「おい、てめえっ! いきなりなんてことして来やがんだよっ!?」
一方の少女はあの攻撃に対しても、ぷんすかと文句をよこす程度の余裕な反応。
何がなんだかわからない。五月は格闘術も優秀な成績を収めており、それなりに自信を持っている。そんな自分の攻撃に対して、この反応……いったい何者――「まさかっ!?」五月の脳裏に最悪の想像がよぎった。
(何かしらの手段で移動中の大和梅さんを襲撃。持ち物を強奪して入れ替わる。つまり、SランクMapsが捕らえれるレベルの犯罪組織の一員。さらに、それが男性を狙うとなれば……海外の特殊工作員による男性拉致!?)
「――ですわね……貴女!?」
「妄想にも限度があんぞこらああああっ!? 俺だっ! 俺が大和梅だ。今日着任の三人目だっつーの!」
「「…………………」」
「――替え玉の工作員はだいたいそう言いますわ」
「聞く耳なしかああああっ!!」
地団駄を踏む少女に、ビシリと特殊警棒を五月が向ける。
「そもそも、もう少しマシな人員は用意できなかったんですの? 貴女のようなちんちくりんで替え玉とは片腹痛いですわ。す、で、に、私は大和梅さんの写真を確認済みですのよ!」
「ちっ、ちんちくりんだあ!? し、失礼かてめえっ! それは、あ、あれだ。ちょ、ちょーっとばかし写真映りが悪いだけじゃねえかよ」
バツが悪そうに、口を尖らせた少女が反論する。まるで拗ねている子供である。
「はいいっ!?」
そう言われ、五月は記憶にある写真の姿と目の前にいる本人を脳内で見比べる。……ビキッっと額に血管が走った。
「しっ、心霊写真の方がまだ可愛げがありますわああああっ!」
怒りの雄たけびと共に五月は特殊警棒の乱れ突きを繰り出した。
「のわあああああっ! て、てめえ! いい加減にしねえと身体でわからせてやんぞコラあっ!」
「ふっ、本性を現しましたわね! 覚悟なさいませ。今から貴女を拘束して、たっぷりと事情聴取して差し上げますわ。私の未来の夫となるべき殿方に手を出そうなど……死刑台までの片道キップも大サービスですわっ! この外道!!」
「ひっでえ言いようだなこんちくしょう!」
鼻息あらい五月による特殊警棒での突き、払い、間に加わる蹴りのコンビネーション。しかし少女はそれをしっかりと回避、ないしはガードする。
さらに――「おらっ、取ったぞ! 警棒ばっかぶん回しやがって」なんと、少女は五月の振り回す特殊警棒を素手で受け止め、その先を握り締めた。
何より恐るべきはその腕力。五月が引けども押せどもビクともしない。
――だが。
「ふっ、甘いですわね!」
カチリと五月が握り締める特殊警棒の持ち手からスイッチの音がした。
「なに――ふぎゃああああああっ!?」
放電による音と光が、少女の握り締めていた特殊警棒の先から放たれる。
五月が持つ警棒はMapsの標準配布品と違って、特別仕様のスタンガン警棒だ。もちろんこの世界の女性基準なので、日本人成人男性なら死ねるレベルの威力である。
ほんの十秒ほど感電させれば充分。まともに動けなくなるどころか気絶してもおかしくない。五月は勝利を確信して笑みを浮かべる。ああ、これで自分の美少年は護られ――。
「ちっ! 痛ってえな、おい?」
不意の一言――恐ろしい力で警棒ごと間合いに引きずり込まれる。
ありえない! あれを受けて平然としている? 化物の二文字と恐怖が五月によぎる。
まずい! これは一発貰わざるを得ない。すばやく警棒を手放し、五月はとっさに急所のカバーを試みた。
「おっ、ボディに一発はオッケーってか? いい判断だぜ! 俺が相手じゃなけりゃなあ」
そう言って何気なく振られた少女の拳だが、恐ろしいまでの威圧感が五月を襲った。え? これは食らってはいけない奴なのでは? しかし、もう遅い。耐えるしかない。覚悟を決め、五月が歯を食いしばったその時――。
「ほわっちゃあ」
ジャージ姿ですっ飛んできた深夜子の空中回し蹴りが少女の側頭部にヒットした。
「ぎゃふうっ!?」
五月の目の前から水平に数メートル先へとふっ飛んでいく。そのまま少女は自分の身体と同じ大きさくらいはあろう庭石へ激突。深夜子の蹴りのとんでもない威力に驚愕して五月は目を見開く。見れば庭石は粉々に爆散、これはタダではすまない……と言うか死んだのでは?
――しかし。
「おい、おい、おいおい! やってくれんじゃねえか? こんな気持ちいい蹴り喰らったのは久しぶりだぜ! ちょっとご機嫌になっちまったぞ、てめえ!?」
ライトに照らされる砂煙の中から、少女がぐいぐいと首を回しながら現れる。頭から出血しているようだが、五月にはまったく理解できないのだが、ダメージを受けているように見えない。
「おおっ!? あたしの不審者死ね死ねキックを受けて平気とは!? これはちょっと本き――あれ?」
「へっ! さっきのはてめえか? なかなかやんじゃねえか、ちょっと俺と遊んで――あれ?」
「「……あれ?」」
「あっ、梅ちゃん!? 梅ちゃんだ! おっひさ」
「げえっ、深夜子!? なっ、なななんでてめえがここにいやがるんだ!?」
「は? へ? な……んですの? ふえええええええっ!?」
少女こそ『大和梅』ご本人。深夜子の一期上で先輩後輩の間柄にしてSランクMapsだ。
こんな見た目ではあるが、御年二十一歳。れっきとした成人女性。ご覧の通り、その可愛らしい姿からは想像もつかない凶悪な身体能力の持ち主で、深夜子が入学するまではMaps養成学校最強の名を欲しいままにしていた怪物である。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編7が完結しました!(2026.1.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる
九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。
※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。
高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる