男性保護特務警護官~あべこべな異世界は男性が貴重です。美少年の警護任務は婚活です!

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第二章 どうやら美少年との日常は甘くて危険らしい

第十五話 説明はとても大事なのです

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 そんなこんなで、Mapsの三人にとって朝日との生活は落ち着く・・・・ではすまない。警護対象の美少年にやたらと尽くされる。この世界での夫婦関係すら超越した、まさに至れり尽くせりの状態になっていたのだ。

 もちろん、この警護任務こんかつに失敗した場合。その時に深夜子自分たちは贅沢三昧に慣れつくし、どこに出しても恥ずかしい立派な廃人となっているだろう。

 そこからの社会復帰など不可能である事が容易に想像できる。それでも、それでも朝日に尽くされる甘い魅惑に逆らえず。そんな未来バッドエンドの可能性から目を逸らし、日々の快楽を貪り続ける彼女らであった。

 しかし現在。そんな仮初めの春を謳歌している三人が揃って脂汗を流し、机の上に置かれたとある小包・・・・を見つめている。

「おい、これどうすんだよ?」
「ぶっちゃけ嫌な予感しかしない」
「さすがにわたくしもなんとも……ですわ」

 それには『男性健康診断通知書ならびに【重要】提出用精液採取キット同梱』と書かれている。

 貴重な存在である男性は国の宝である。故に男性の健康は、国が細心の注意を払って管理している。男性健康診断は国の重要行事の一つであり、年に一月、四月、七月、十月の計四回実施される。男性の健康診断受診は義務となっており、もちろん朝日も対象だ。と言ってもこれが・・・問題ではない。

 問題なのは予定外に同梱されていたもう一つの包み『提出用精液採取キット』である。現在、朝日の待遇は特定文化圏外国人、かつ、特殊保護対象である。国から多数の補償を受けているが、約一年間は一部を除いた国民男性は発生しないはずだ。

 深夜子たちも矢地を通して、男性保護省に猛クレームを入れるが、回答は『うえからのお達しだ』の一点張りであった。それも『一回だけだから。ね、一回だけだから!』と、どこかで聞いたことがある常套句のオマケ付きである。

「朝日様の感覚からすると、これ・・はかなり嫌悪感があると考えますわ」
「同感。普通の男の人なら、そういうものって育ってるけど……朝日君は違う」

 この世界の男性は、『精液の提出は義務』という概念を幼少期からの教育で刷り込まれている。それでも男性側からの不満は存在する。通常は未婚者であれば母親。既婚者であれば、妻たちパートナーがフォローしてうまく立ち回っている。つまりは教育を施しても『不満が出る程度に男性には嫌悪感があるもの』これが一般常識である。

 真剣な表情をした深夜子が話を続ける。
「――多分、朝日君は逆」
「なんだよ? 朝日ンとこに持っていってたら、幻滅したとか、変態とか、罵られるってか?」

 朝日はこの常識と、精液提出こういった義務が存在しない世界にいた。その感覚を思えば、ストレートに義務ですよと要求するのはマズイ。深夜子はそう主張する。五月と梅もそれにうなずく。同じ考えのようだ。

「……あたし、朝日君に嫌われたら余裕で死ねる」

 何やら暗い未来を想像したらしい深夜子の目から光が消え、この世の終わりと言わんばかりの声色でぼそりと呟く。

「そうと決まってねえのに何絶望してんだよお前はっ!? ま、つーかよ。そのまま『はい、よろしく』とはいかねえだろうな」
「……ですわね。わたくしは、言い回し・・・・を考えるべきだと思いますの。朝日様はお優しくて利発な殿方ですし……お渡しする際にうまく察していただければ――」
 つまりはオブラートに包んだ表現で、察して貰うと言う作戦を五月が提案する。
「なるほどな。その方がかどが立たねぇって奴だな」
「じゃ、みんなで考える」

 とは言いながら、三人とも穏やかで優しい朝日の性格を思えば、少し大げさな気もしている。しかし職業柄、関連する事件・・・・・・なども彼女らは知っている。

 実は過去に一度、精液提出を苦にした自殺疑惑のある男性が現われた。その時は世論を巻き込んでの大騒動に発展している。当時の結論は、疑惑はあくまでも疑惑であり、真相は闇の中に葬られた。しかしながら、ついつい不安が頭をよぎり、慎重にならざるを得ない三人なのである。

 ――Mapsリビングルームにて、お茶と菓子を囲んでの対策会議が開始されるのであった。

「そうですわね。まず、必要なのは嫌悪感が少なくそれ・・に関連するキーワード。朝日様にうまくお察しいただくためにも、その候補を考えましょう」
「えーとあれか? つまり『精液を提出してくれ』を別の言葉でうまく言い表せって感じか?」
「んー、言い方も変える?」
 三人とも難しい顔を見合せながら、話を進めてみるが手探り感が強い。少し沈黙が続いたところで梅が口を開いた。

「ま、あんま深く考えてもしょうがねえな。こりゃもう適当に、なんでもいいから候補上げてくか?」
「えーと……それでは、例えば『朝日様の遺伝子をおすそ分けください』こう言った感じでもよろしいですの?」
「うん。そんな感じ」
「ああ、いいんじゃねえか?」

 ――五月の案を皮切りに、アレだコレだと三人で言い回しを検討する。だが、そう簡単にピンと来るものは出てこない。なんせどう頑張っても結果すること・・・・は変わらないのだ。

 だんだんと手詰まり感は強くなり、集中力は途切れていく。さらには話しているテーマがテーマなので、時間の経過につれ三人のテンションは変な方向へ突き進んでいった。

 ――それから一時間が経過。
「コホン。では……ああっ、朝日様のミルクを五月に搾らせてくださいませ」
「ぶふっ! ちょっ!? 五月さっきーそれどこのエロゲ?」
「ぎゃはははは! へ、変態かよ?」
 何かテンションがおかしくなっていた。
「朝日君の白いおたまじゃくしをすくいたい。あたし夜店のテクニシャン!」
「くっ……ぷっ……あ、頭悪すぎですわ」
「うひゃはははは! アホだ。アホすぎる!」
 すでに内容がこの世界で言う”女子中学生レベル”の下ネタと化していた。ここまでくるともう歯止めは効かない。なんせ三人とも、健全にして健康なうら若き乙女なのだ。

 ――さらに一時間が経過。 
「うおおおおおっ! 朝日っ! お前の元気を少しだけ俺に分けてくれ」
「ぷははは! うひっ、う、梅ちゃん、それどっかのインフレバトル漫画」
「それでは、朝日様。おみやげに白い恋び――」
五月さっきー。それ以上いけない」
 完全に発想も方向も間違っていた。それから商標に関わるものは避けていただきたい。
「じゃあ、あたし本気出す! えーと、朝日君のその半透明で白く濃い粘液は身体の芯を疼かせる甘露であった――」
「完全に官能小説になってんじゃねーか!?」
「うくっ! ぷ……くくく……み、深夜子さん。そ、そそそれは……はひ、はひひひひひ」
「おい、ツボってんじゃねーよ! 五月」
 とまあ、こんな調子で時間の浪費は続く。

 ――さらに経過すること一時間。

「「「ダメだー(ですわー)!!」」」

 ですよね。

「ど、どどどどどうしてこんなことに……恐ろしいまでに無駄な時間を費やしてしまいましたわ」
「これはまずい。てか、最終案が――」

『やあ、僕と契約して君の元気なおたまじゃくし。おっと、おたまじゃくしと言えば……そう、音符だね。音符と言えばソ、ラ、シのシは白色のシってことさ。さあ大海を泳ぐ億千万の白いおたまじゃくしを掬いだして欲しいんだ』

「――これどういうこと?」
「俺が聞きたいわ!」
「まずいですわ……これはまずいですわ……どうしますの?」

 結果、全く案なし策なしの状態。見事に時間だけを浪費した現状に三人は焦りまくる。どうする? こうする? そしてついには、誰が朝日に伝えるのか『火の点いた爆弾の押し付け合い』と言う名の譲りあいへと移行した。

 あっ、どうぞどうぞ。と、お笑い芸人のようなやり取りに、梅が業を煮やしたのか突然立ち上がる。さらに机から『キット』を手に取ると深夜子、五月に向かって宣言した。

「あああああっ! めんどくせぇ! もう俺がバシッと朝日に頼んで来てやんよ!」
「「!?」」
「ちょっと!? 大和さん? 突然、どうなされるおつもりですの?」
「そう。梅ちゃんヤケクソはまずい」 
 その突発的な行動に驚きながらも、二人は梅をなだめようとする。しかし――。
「うるせえっ! こんなもんはよ。結局のとこストレートに伝えんのが一等はえぇんだっつーの!!」
「あっ、ちょ! 大和さん!?」

 二人が止める間もなく。梅はキットを抱きかかえ、朝日のリビングルームへと走って行くのであった。

 ――さて、そんな事情など朝日は知るよしもない。最近は『クリーチャーハンター』という携帯ゲームソフトにドハマり中だ。日本でも国民的人気になった、協力プレイが売りのハンティングアクションゲーム。アレにそっくり――いや、この世界版モンハンとでも言うべきゲームである。

 重度のゲーマーな深夜子は、もちろん恐ろしく長時間やり込んでいる。追っかけでニューゲームからの朝日は、日々深夜子に手伝って貰いながら遊んでいた。

 現在もリビングのソファーに寝転がり、一人で黙々とプレイ中だ。本来は複数人で遊ぶ方がゲーム効率は良いのだが、一人で遊べるモードも充実している。朝日は一人で楽しんでいる最中であった。

 そこに突然、部屋の扉が勢いよく開かれる。現れたのは物々しい雰囲気な梅。その姿に驚いた朝日は手を止めて、呆然と梅を見つめる。さらには廊下から焦った様子で追いかけてくる深夜子、五月の声が聞こえてくる。

 部屋に入るや否や、梅が声を張り上げた。

「おい、朝日!!」
「わあっ!? えっ!? う、梅ちゃんどしたの? な、何か用かな?」

 その勢いに、何か事件でもあったのかとドキドキの朝日。落ち着く間もなく。目の前まで梅がズカズカと近寄って立ち止まる。すると目を閉じて、バッと胸の前に突き出すように、何やらを突き出した。そのまま大きく息を吸い込むと、一呼吸置いて、クワッと梅の目が開かれる!

「朝日! お、俺が口でして・・・・やっから――――」
「「チェストーーーッ!!」」

 とんでもない言葉が朝日の耳に入りかけた瞬間。部屋へと飛び込んで来た深夜子と五月の空中クロスキックが梅をとらえる!!

「ぎゃふうっ!?」
「えええええええっ!? ちょっ、う、梅ちゃん!? み、深夜子さん、五月さん? 一体何を――」 
 あまりの出来事に混乱する朝日。何事かと聞こうとするが、ダウンした梅を担いだ二人が、言葉をさえぎって鼻息荒くまくし立てる。
「はぁっ……はぁっ……あ、朝日様。大変失礼を致しましたわ。ちょっと大和さんは頭が――いえ、体調が悪いみたいですのよ。オホホホホ」
「朝日君は何も聞かなかった。イイネ!」
「あ、え…………???」

 二人のあまりの剣幕に、朝日は次の言葉が出て来ない。

「は……はぁ……ど、どうしたんだろ?」

 梅を担いで、そそくさと退場する二人を呆然と見送る朝日であった。
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