男性保護特務警護官~あべこべな異世界は男性が貴重です。美少年の警護任務は婚活です!

タッカー

文字の大きさ
25 / 100
第三章 男事不介入案件~闘え!男性保護特務警護官

第二十四話 開戦!作戦!MapsVSタクティクス

しおりを挟む
 ――三日前。

 海土路みどろ造船の本社は武蔵区の湾岸線沿いにある。造船会社らしく広大な敷地と港を持っており、施設は造船所二棟ふたむね、それに隣接した十階建ての本社ビルだ。その本社ビルのワンフロアは、民間男性警護会社タクティクスの事務所として貸し出されている。

 現在、事務所内の会議室では万里、花美、月美の他に三人のメンバーが集まり、ミーティングを行っている最中であった。

「それで、一回目の話し合い場所はここに決まったのですよ」

 今回の会場である春日湊の料亭ホームページをノートパソコンに表示して、月美が説明をしている。

「ふむ。やはり男性特区から出るのは嫌ったんでござるのう。して妹者いもじゃ、五月雨うじ以外・・の情報は取れたでござるか?」
「それがMaps個人データはセキュリティガードが固すぎて無理だったですよ。役に立たないデータしか抜けなかったのですよ」

 そうぼやく月美が三枚の印刷物を机に出した。深夜子たちのMaps個人情報のようだが、穴あきだったり、黒塗りだったりと、一部の文字が読み取れる程度で、データとして得られるものは何も無い。万里がその紙を手に取ってながめている。

 無論、すでに深夜子たちMaps個人データには五月の手が回っていた。強固なセキュリティが掛けてあり、仮にそのガードを抜けたとしても、先にあるのは使えないダミーデータと言う万全ぶりである。

「ふん。チームリーダーはもちろんAランクのお嬢様だろうからねぇ。あのオチビちゃんと目付き悪いお嬢さんは、まあBかCランクってところさね」

 元Mapsの万里は通常のチーム構成を基準に、深夜子たちのランクを想像する。二人が揃いも揃ってSランクであるなど夢にも思っていない。

 それもそのはず、Mapsに配属されて深夜子は二年、梅は三年だが、実績がほとんど無く(深夜子に至っては実績ゼロ)担当地域外での知名度は皆無に等しかった。何せ情報通の五月ですら、初めて彼女らのデータを見た時に自分の目を疑ったレベルである。

「で、万里うじ? 今回の獲物も釣りだし・・・・をかける――で良いのでござるか?」
「そりゃあ、久々に楽しめそうな獲物Mapsだからねぇ。何より餌が無きゃねぇ~、こっちにゃ遊びにゃ来てくれないだろう?」
 そう言って万里はニヤリと花美へ視線を送る。

 これは、万里がタクティクスに雇われてから良く使っていた手段である。春日湊の様な男性特区では制限も多く、派手に動くことができない。かと言って、自分たちのホームである海土路造船近くに話し合い場所を指定したとろで、ノコノコやって来る相手もそうはいない。自分たちの都合の良い場所に誘い出す為に、不意討ちを仕掛けて相手から人質を取るのだ。

「ふむ。相手はたかが三人……ちっと気の毒な気もするでござるがのう」
「花美、あんまMapsを舐めない方がいいよぉ。お嬢様はAランクトップ。頭も切れるし、なかなか厄介だからねぇ~。スピード感も大事、話が長引きゃ増援もありえる訳だからさぁ。ま、オチビちゃんを餌に釣り出して、あたいがじっくり潰してやるよぉ」

 役に立たない情報が記された紙をくしゃりと握り潰し、これからを想像して万里は嫌らしい笑みをこぼす。一方、会議室の壁に背もたれ、飄々ひょうひょうとして立っている花美とは対象的に、月美はやたらと鼻息が荒い。

「あ、の、チビ猫は絶対に、月美がぜーーったいに泣かしてやるのですよ!!」
「ははっ、そりゃあ好きにしな。あたいの獲物はお嬢様だけさぁ。あの目付きの悪いお嬢さんは花美がやるかい?」
「まあ、それで良いでござろう。あの女の身のこなしは中々の物でござったから……楽しみでござるよ!」
「ふん! あいつはタダの変態なのですよっ!」

 それぞれが自分の獲物ターゲットを主張した所で、万里が他の三人に目線を向け、梅の拉致計画を指示し始めた。

「よし。最初はお前らに任せるよぉ。腕の立つ連中を四、五人連れて行きなぁ! それとあの五月雨のお嬢様にゃあ気を付けるんだよ。まあ、美人さんのガードで動けやしないだろうけどねぇ。オチビちゃんを捕まえたら、いつもの場所に拉致っときなぁ。坊ちゃんも楽しみにしてたからねぇ~」
「「「うっす、了解しやした!!」」」


 ――時を同じくして、朝日家恒例のMapsリビングミーティングも進行していた。

「――と言うわけで相手は十中八九じゅっちゅうはっく、深夜子さんか大和さんのどちらか一人に狙いを定めてきますわ」
「はっ、俺らが獲物ねぇ……んで、五月。お前こんなことまで予想してたのかよ?」
「いえ。あれは朝日様が目立つ要素を減らす為のお願いで、これは結果論ですわね」

 健康診断当日。五月はSランクニ名と言う朝日のMapsチーム構成が余りにも目立つ要素と考え、会場では二人に極力目立たない様に依頼をかけていた。
 
「んー。確かにラッキー」
「ですわね。でも情けない話ですが、わたくしでは万里さんに対抗できませんの。今回はお二人に危険な役割を押しつけてしまい……申し訳ありませんわ……」

 普通に考えれば、相手は三十人近い構成員、その内一人は元SランクMaps。流石寺姉妹も五月の調べでAランクMapsに匹敵する戦闘能力の持ち主であることが明白。そんな連中にたった一人で拉致された上、闘いを挑むなど正気の沙汰とは思え無い。

「無問題。あたし肉体労働派」
「そう言うこった。俺か深夜子をわざわざアジトまで案内してくれた上に正当防衛成立だろ。もうサービス満点じゃねーか? へへへっ」

 ところが、当の本人たちはまるでピクニックに行くのと大差ない。と言わんばかりである。

 確かに五月が本来は援護要請のつもりで、本部の矢地じょうしに事情説明して相談したところ『ああ、それは一向に構わん。深夜子アホでもばかでもお釣が来るさ。ただし(相手側に)死人は出すなよ。絶対にだぞ』と言う信じがたい回答が返ってきたのだ。

「ですわね……それでは是非ともお二人にお任せしますわ。朝日様の為にも、この一回で一網打尽いちもうだじんにしてくださいませ!」


 ――そして場面は、今や激突寸前の料亭駐車場に戻る。梅は警備服に身を包んだ体格の良い女性四人に囲まれていた。その中でもリーダー格と思われる者が、余裕を含んだ口調で話しかけてくる。

「いよう、オチビちゃん。悪いんだけど、あたしたちといっしょに来てもらうぜ」

 他の三人もニヤニヤしながら見下ろしている。梅としては不本意でしょうがないが、傍目はためには大人四人が子供を取り囲んでいる状況にしか見えないだろう。さらに、すぐ横に到着した白のワンボックスカーが、後部座席の扉を全開にしていた。

 無論、梅がその気になればこの四人程度は瞬殺で返り討ち可能である。しかしここは、上手く相手に捕らえられなければ・・・・・・・・・ならない場面だ。囲まれて、じりじりと追い詰められる(雰囲気を出して)梅は相手をにらみつけながら問い返す。

「お、おまえらあーこれはいったいーなんのつもりだあー」
 
 棒読み!! どうやら演技は苦手な模様である。

 続いては、深夜子が朝日の警護を優先せざるを得ないため。相手を牽制しつつも、梅を気遣いながら運転席へと急ぐ(設定の)場面だ。

「グッ、ルベディアンディナディヲスドゥ!? ディボ、アザァビィグンヲバボラベバ(くっ、梅ちゃんに何をする!? でも、朝日君を護らねば)」

 論外!! 圧倒的論外!!

 車のウィンドウからゴンッと音がする。大根どころですまない役者二人の醜態に、頭をぶつけて五月が悶絶していた。片や作戦の詳細を知らされていない朝日は、真っ青な顔をしてウィンドウ越しに梅を見ている。

「あつつ……みっ、深夜子さん! 朝日様の安全確保が最優先ですわっ、車を出して下さいませっ!」
「らじゃ」

 五月の呼びかけを合図に、運転席に深夜子が乗り込み流れる様にエンジンを始動させた。そのまま一気にアクセルを踏み込み、急発進をかける。ホイールスピンによる白煙を撒き散らし、アスファルトとの摩擦音を響かせ猛スピードで駐車場を後にする。

 ――離れて行く車のウィンドウ越しに見えるのは、数人に腹を蹴られ、乱暴にワンボックスカーに詰め込まれている梅であった。

「うわあああああああっ! う、梅ちゃん? 梅ちゃんが……やだ、やだよ。 や、やめてよっ!! ねえ、五月さん! 深夜子さん! 梅ちゃんを、梅ちゃんを助けてよ。どうして? 車を止めて! 戻して! ねえ、はや――」

 パニックになる朝日。まさかここまでの反応をすると思っていなかった五月は一瞬固まってしまう。だが、すぐに朝日を抱きしめて落ち着かせようとする。

「ちょっ、ちょっと朝日様! 大丈夫ですわっ! これは、作戦ですから、大丈夫なので落ち着いてくださいませ」
「そう。朝日君、わざとだよ」
「そんな、やだ。梅ちゃんが……殴られ……連れて……あ、ああっ、ひぐっ……ううっ、誰か……誰か助け――――ええっ?」

 そこから約三十分。作戦を教えて貰えなかったことにヘソを曲げる朝日をなだめる二人であった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

処理中です...