67 / 100
第六章 おいでよ!男性保護省の巻
第六十四話 梅と朝日
しおりを挟む
矢地がため息まじりに目の前で正座中の三条、門馬、鹿松を見下ろす。しかし、時間が無いこともあって渋々ながら手伝いを承認し、簡単な説明をしてから朝日の元に連れて行く。
「なんだよ三条。お前らいっつも本部にいんだな」
「うっさい。余計なお世話っしょ」
「えーと、梅ちゃんこの人たちは?」
「ああ、こいつらBランクのくせに待機率が高くてよ。三馬鹿B組って呼ばれて――」
「変な情報を追加すんじゃないっしょーーっ!」
そんな三条たちだが、朝日に面と向かって話せばデレデレだったのは言うまでもない。彼女らに梅がこれから行う練習の内容を伝える。暴女役と穏やかではない大役に、反応はそれぞれの三人であったが、このアピールチャンスを逃すまいと各自意気込みだけはあるようだ。
三条たちも着替えを終え、矢地の厳しい目が見守る中、順番に暴女役を試してみる。
――鹿松の場合。
「か、神崎さん。ご、ごめんなさい。ごめんなさい。仕事なんです。仕事なんですけど」
「泣いて謝るくらいならやらんでいい!!」
――門馬の場合。
「よろしくお願いします! うへっ、えへへへ、はへへへへへへ」
「よだれを垂らすな! 手つきがすでに気持ち悪い! 欲望がだだ漏れならやらんでいい!!」
早くも二人が使い物にならないことが判明。
「やれやれ……どいつもこいつも。矢地課長! あたしが手本を見せるっしょ」
「ほう……大した自信だな」
そんな中で一人自信満々の三条が白い手袋をはめ、ゆっくりと歩を進める。うっすらと笑みを称えて、余裕すら感じられる態度である。
「それでは神崎さんよろしくお願いします。この三条久留美におまかせっしょ!」
「はい。よろしくお願いしますね」
そう言って朝日の後ろに回る。少し目を閉じて集中し……いざ目を見開いた瞬間! 音もなく約2メートルあった朝日との距離を一瞬で詰める。あまりにも急な接近に驚いてしまう朝日だが、声を出す間もなく手袋をした右手で口をふさがれ、流れるように左腕が巻きつき、両手ごと身体を締め付けられる。さらに朝日の耳元で三条が冷たく囁く。
「おっと! 声を出さないで、死にたくはないっしょ」
「!? むっ、むぐっ!?」
あまりの手際の良さと、迫真のセリフに朝日の背筋が凍りつく。口から悲鳴が――漏れることも手で塞がれ許されない!
「そう、おとなしくして……いい子ね。大丈夫、おとなしくしていれば何も痛いことはしないっしょ。すぐに気持ちよく――」
「貴様は前科者か何かかああああーーっ!?」
「くぉら三条! 朝日が涙ぐんでんじゃねえか!? ぶっ殺すぞ、てめえ!!」
「犯罪者! 犯罪者がここにいるっス!」
「ちょ? 完璧だったっしょ? 今の……って――はぎゃあああ!!」
結局、三馬鹿の乱入によって、朝日の護身術訓練はグダグダのまま時間切れを迎えるのであった。
――夕食を終え、本日は移動日だったこともあり、それぞれが早めに宿泊用のフロアへ移動となった。朝日の宿泊場所は保護された当時にも使われた保護男性宿泊用の部屋だ。
男性を宿泊させるとなれば、必然セキュリティ完備でなければならない。企画課があるフロアの一区画には同様の部屋が十室ある。このエリアの出入り口には、強力なセキュリティロックがかけてあり、朝日以外では矢地ら課長職者と担当である梅しかキーを持っていない。
さらに、仮に朝日が自分のキーでエリア外に出た場合は矢地、梅のスマホに通知が入る徹底ぶりである。部屋の内装、設備は高級ホテルには敵わないが、そこらのビジネスホテルとは比べ物にならない充実ぶりだ。
現在、時間は午後九時八分。こちらは梅がいるMaps宿直用の個室。
すでにベッドに転がり、ビール片手にテレビを見てくつろいでいる。しばらくすると枕元に置いてあるスマホから呼び出し音が響く。発信元は朝日であった。
「はいよ、どうした朝日。ん……何かあったのか?」
『ううん。そうじゃないんだけど……あの……梅ちゃんさ、僕の部屋……来れるかな?』
お部屋への誘いであった。
「うおおおおおいっ! 今度はなんの冗談だっての? いくら俺でも男性保護省内そりゃやべえ――――!?」
『うん……ごめんね、ごめんね……僕……その……』
最初はからかいの電話か? と思う梅であったが、スマホ越しに耳へと届く朝日の声が震えていることに気づく。日頃は鈍感女王の梅なのだが……。
「わかった。すぐ行くから切るぞ」
『マジに男が困ってる時にすぐ気づけるのが、本当の女ってもんなんだよ』――とは本日、梅が餡子に教えたありがたい格言の一つである。
すぐさま朝日の部屋へと向かう梅。余談だが本日のパジャマは、ブルーのネコさんぬいぐるみ風ふわふわパジャマ(猫耳フード、しっぽつき)である。さすが本当の女!
「どうしたよ? 朝日」
「うん……ごめんね梅ちゃん」
朝日の部屋に入ってから、ベッドに隣り合わせて座る形で話を聞く。少し泣いていたのか、朝日の目元は赤くなっていた。
「そのちょっと……色々考えてたら……心細くなって」
「ん? いまいちピンとこねーな……どういうこった?」
大きめの宿泊できる部屋が十部屋あるが、他は誰も使っていない隔絶された広い場所に一人きり。さらにそこは、朝日がこの世界へと転移してきた当初に寝泊まりした場所だ。少し前には重隅の聞き取りで昔も思い出した。そう、朝日は軽いホームシックになったのであった。
「なるほどねえ……そりゃあ思い出しちまったら辛いよな。でもよ……この部屋は矢地と企画課に行って、先に聞いてたよな? なんで場所変えろって言わなかったんだよ?」
「その、だって……ここが安全な場所だって言われて……それに急に部屋を変えたりは迷惑かなって、男性用の場所って簡単にある訳じゃないでしょ?」
「はああ…………お前も変なところで気い使いだよな。ま、そこが良いところっちゃそうなんだけどよ。ん、今……十時前か、あんま遅くまでいると色々まずいけど……仕方ねえ、もうちっといっしょにいて――」
もうちょっといっしょにいてやるよ。――そう言い終わる前に、梅の身体は朝日に引き寄せられる。そのまま朝日の胸に頬が当たる高さで、きゅっと抱きしめられていた。
「ぬわああああ!? ちょ!? おい朝日? だから、いきなり抱きしめるのはやめろって、こら――――ん? お前……泣いてんのか?」
「ごめん。ごめんね梅ちゃん……わがまま、ばっか……ひぐ……どうしても一人……辛くて……うっ……ごめ」
「そっか……そうだよな」
軽くため息をついて、梅は微笑みつつ朝日を抱きしめ返す。そして左手を頑張って回して背中をさすり、右手をギリギリまで延ばして朝日の頭も撫でる。164センチの朝日、149センチの梅、身長差が逆であればとても素晴らしい光景であったと思われる。
「朝日。俺は馬鹿だかんよ……お前の資料見ただけじゃ、あんまわかってなかったんだよな……。なあ、色々教えてくれよ。そんで思い出して……いっぱい泣けよ。俺が全部受け止めるし、慰めてやるし、それに絶対お前を守ってやる。後よ、泣きたい時にしっかり泣いた方がいいんだ。今、お前は一人じゃない。側に……俺がいんだからよ!」
「梅ちゃん……」
「な、朝日!」
「うん……ありがと……じゃあ、聞いて……くれる」
「ああ」
日本での生活――。
家族のこと――。
この世界へ来た時――。
深夜子、五月、梅との出会い――。
そして今日までの約半年間――。
朝日は自分の気持ちを整理するかのように話をする。きっともう帰ることはできないであろう。これからこの世界で生きていくしかない自分。ゆっくりと噛み締めるように……途中、涙で声が詰まることもあった。それでもすべてを、振り絞るように、朝日は話をするのであった。
「あ……ひぐっ……ううっ……うわぁぁぁぁん」
ついには感極まったのであろうか、号泣が部屋に響いた――。
「ちょ、梅ちゃん!? そんな泣かないで、ね? 大丈夫だから、僕ほんと大丈夫だから」
「だっ……だってよ……ぇぐっ……俺、妹が三人いんだけどよ……ひっく……末っ子が、……もし、もしお前と同じ……こと……に……なったら…………う、うええ……うえええええええ!」
途中からいつの間にか立場が逆転し、最終的には大号泣で朝日に慰められている梅であった。十分ほど冷却時間が経過する。
「すまねえ……俺、あの手の話に弱えんだよ。そ、その深夜子たちには――」
「あはは。うん内緒だね! それに僕も結構泣いちゃったし、お互いスッキリだね。本当にありがと梅ちゃん」
「ま、まあいいってことよ。おっと……もう十一時回ってんのか。朝日、そろそろ寝れるか? 大丈夫か?」
「あ……ごめん梅ちゃん……最後にもう一つだけ……僕が寝るまで横にいてくれる? やっぱ一人で寝るのは今日はちょっと……」
「へへへ。やれやれ、朝日はしょうがねえなあ」
そう言いながらも、梅はご機嫌で部屋にあるソファーを担いでベッドの横へと移動する。そのソファーに転がって……。
「ほらよ……いい子にしてな……寝付くまで俺が見ててやっからよ」
「ありがと梅ちゃん……おやすみ」
「おう。おやすみ」
――十分後。
「んがあああーーっ」
ソファーの上で梅が豪快にイビキをかいている。
「あはは。梅ちゃんが先に寝ちゃってどうするの? ほんと面白いなあ……でも」
朝日は予備の毛布を取り出して、梅にそっとかけてやる。寝ている姿の梅を見るのは初めてだが、本当に年上とは思えない童顔だ。
【ちゅ】
むにゃむにゃと気持ち良さそうに寝ている梅の唇に、軽く朝日の唇が重なった。
「ま、この位、いいよね……今日はありがと梅ちゃん……さ、僕も寝よっと」
こうして、保護男性の部屋でお泊まりと言う男性保護省始まって以来の偉業を達成した梅であった。
――翌朝、目覚めた梅がすぐ横に見える朝日の寝顔に大パニックを起こしたのは言うまでもない。
もちろん、こっそり脱出を図ったところで矢地と鉢合わせをしたのも言うまでもない!
「なんだよ三条。お前らいっつも本部にいんだな」
「うっさい。余計なお世話っしょ」
「えーと、梅ちゃんこの人たちは?」
「ああ、こいつらBランクのくせに待機率が高くてよ。三馬鹿B組って呼ばれて――」
「変な情報を追加すんじゃないっしょーーっ!」
そんな三条たちだが、朝日に面と向かって話せばデレデレだったのは言うまでもない。彼女らに梅がこれから行う練習の内容を伝える。暴女役と穏やかではない大役に、反応はそれぞれの三人であったが、このアピールチャンスを逃すまいと各自意気込みだけはあるようだ。
三条たちも着替えを終え、矢地の厳しい目が見守る中、順番に暴女役を試してみる。
――鹿松の場合。
「か、神崎さん。ご、ごめんなさい。ごめんなさい。仕事なんです。仕事なんですけど」
「泣いて謝るくらいならやらんでいい!!」
――門馬の場合。
「よろしくお願いします! うへっ、えへへへ、はへへへへへへ」
「よだれを垂らすな! 手つきがすでに気持ち悪い! 欲望がだだ漏れならやらんでいい!!」
早くも二人が使い物にならないことが判明。
「やれやれ……どいつもこいつも。矢地課長! あたしが手本を見せるっしょ」
「ほう……大した自信だな」
そんな中で一人自信満々の三条が白い手袋をはめ、ゆっくりと歩を進める。うっすらと笑みを称えて、余裕すら感じられる態度である。
「それでは神崎さんよろしくお願いします。この三条久留美におまかせっしょ!」
「はい。よろしくお願いしますね」
そう言って朝日の後ろに回る。少し目を閉じて集中し……いざ目を見開いた瞬間! 音もなく約2メートルあった朝日との距離を一瞬で詰める。あまりにも急な接近に驚いてしまう朝日だが、声を出す間もなく手袋をした右手で口をふさがれ、流れるように左腕が巻きつき、両手ごと身体を締め付けられる。さらに朝日の耳元で三条が冷たく囁く。
「おっと! 声を出さないで、死にたくはないっしょ」
「!? むっ、むぐっ!?」
あまりの手際の良さと、迫真のセリフに朝日の背筋が凍りつく。口から悲鳴が――漏れることも手で塞がれ許されない!
「そう、おとなしくして……いい子ね。大丈夫、おとなしくしていれば何も痛いことはしないっしょ。すぐに気持ちよく――」
「貴様は前科者か何かかああああーーっ!?」
「くぉら三条! 朝日が涙ぐんでんじゃねえか!? ぶっ殺すぞ、てめえ!!」
「犯罪者! 犯罪者がここにいるっス!」
「ちょ? 完璧だったっしょ? 今の……って――はぎゃあああ!!」
結局、三馬鹿の乱入によって、朝日の護身術訓練はグダグダのまま時間切れを迎えるのであった。
――夕食を終え、本日は移動日だったこともあり、それぞれが早めに宿泊用のフロアへ移動となった。朝日の宿泊場所は保護された当時にも使われた保護男性宿泊用の部屋だ。
男性を宿泊させるとなれば、必然セキュリティ完備でなければならない。企画課があるフロアの一区画には同様の部屋が十室ある。このエリアの出入り口には、強力なセキュリティロックがかけてあり、朝日以外では矢地ら課長職者と担当である梅しかキーを持っていない。
さらに、仮に朝日が自分のキーでエリア外に出た場合は矢地、梅のスマホに通知が入る徹底ぶりである。部屋の内装、設備は高級ホテルには敵わないが、そこらのビジネスホテルとは比べ物にならない充実ぶりだ。
現在、時間は午後九時八分。こちらは梅がいるMaps宿直用の個室。
すでにベッドに転がり、ビール片手にテレビを見てくつろいでいる。しばらくすると枕元に置いてあるスマホから呼び出し音が響く。発信元は朝日であった。
「はいよ、どうした朝日。ん……何かあったのか?」
『ううん。そうじゃないんだけど……あの……梅ちゃんさ、僕の部屋……来れるかな?』
お部屋への誘いであった。
「うおおおおおいっ! 今度はなんの冗談だっての? いくら俺でも男性保護省内そりゃやべえ――――!?」
『うん……ごめんね、ごめんね……僕……その……』
最初はからかいの電話か? と思う梅であったが、スマホ越しに耳へと届く朝日の声が震えていることに気づく。日頃は鈍感女王の梅なのだが……。
「わかった。すぐ行くから切るぞ」
『マジに男が困ってる時にすぐ気づけるのが、本当の女ってもんなんだよ』――とは本日、梅が餡子に教えたありがたい格言の一つである。
すぐさま朝日の部屋へと向かう梅。余談だが本日のパジャマは、ブルーのネコさんぬいぐるみ風ふわふわパジャマ(猫耳フード、しっぽつき)である。さすが本当の女!
「どうしたよ? 朝日」
「うん……ごめんね梅ちゃん」
朝日の部屋に入ってから、ベッドに隣り合わせて座る形で話を聞く。少し泣いていたのか、朝日の目元は赤くなっていた。
「そのちょっと……色々考えてたら……心細くなって」
「ん? いまいちピンとこねーな……どういうこった?」
大きめの宿泊できる部屋が十部屋あるが、他は誰も使っていない隔絶された広い場所に一人きり。さらにそこは、朝日がこの世界へと転移してきた当初に寝泊まりした場所だ。少し前には重隅の聞き取りで昔も思い出した。そう、朝日は軽いホームシックになったのであった。
「なるほどねえ……そりゃあ思い出しちまったら辛いよな。でもよ……この部屋は矢地と企画課に行って、先に聞いてたよな? なんで場所変えろって言わなかったんだよ?」
「その、だって……ここが安全な場所だって言われて……それに急に部屋を変えたりは迷惑かなって、男性用の場所って簡単にある訳じゃないでしょ?」
「はああ…………お前も変なところで気い使いだよな。ま、そこが良いところっちゃそうなんだけどよ。ん、今……十時前か、あんま遅くまでいると色々まずいけど……仕方ねえ、もうちっといっしょにいて――」
もうちょっといっしょにいてやるよ。――そう言い終わる前に、梅の身体は朝日に引き寄せられる。そのまま朝日の胸に頬が当たる高さで、きゅっと抱きしめられていた。
「ぬわああああ!? ちょ!? おい朝日? だから、いきなり抱きしめるのはやめろって、こら――――ん? お前……泣いてんのか?」
「ごめん。ごめんね梅ちゃん……わがまま、ばっか……ひぐ……どうしても一人……辛くて……うっ……ごめ」
「そっか……そうだよな」
軽くため息をついて、梅は微笑みつつ朝日を抱きしめ返す。そして左手を頑張って回して背中をさすり、右手をギリギリまで延ばして朝日の頭も撫でる。164センチの朝日、149センチの梅、身長差が逆であればとても素晴らしい光景であったと思われる。
「朝日。俺は馬鹿だかんよ……お前の資料見ただけじゃ、あんまわかってなかったんだよな……。なあ、色々教えてくれよ。そんで思い出して……いっぱい泣けよ。俺が全部受け止めるし、慰めてやるし、それに絶対お前を守ってやる。後よ、泣きたい時にしっかり泣いた方がいいんだ。今、お前は一人じゃない。側に……俺がいんだからよ!」
「梅ちゃん……」
「な、朝日!」
「うん……ありがと……じゃあ、聞いて……くれる」
「ああ」
日本での生活――。
家族のこと――。
この世界へ来た時――。
深夜子、五月、梅との出会い――。
そして今日までの約半年間――。
朝日は自分の気持ちを整理するかのように話をする。きっともう帰ることはできないであろう。これからこの世界で生きていくしかない自分。ゆっくりと噛み締めるように……途中、涙で声が詰まることもあった。それでもすべてを、振り絞るように、朝日は話をするのであった。
「あ……ひぐっ……ううっ……うわぁぁぁぁん」
ついには感極まったのであろうか、号泣が部屋に響いた――。
「ちょ、梅ちゃん!? そんな泣かないで、ね? 大丈夫だから、僕ほんと大丈夫だから」
「だっ……だってよ……ぇぐっ……俺、妹が三人いんだけどよ……ひっく……末っ子が、……もし、もしお前と同じ……こと……に……なったら…………う、うええ……うえええええええ!」
途中からいつの間にか立場が逆転し、最終的には大号泣で朝日に慰められている梅であった。十分ほど冷却時間が経過する。
「すまねえ……俺、あの手の話に弱えんだよ。そ、その深夜子たちには――」
「あはは。うん内緒だね! それに僕も結構泣いちゃったし、お互いスッキリだね。本当にありがと梅ちゃん」
「ま、まあいいってことよ。おっと……もう十一時回ってんのか。朝日、そろそろ寝れるか? 大丈夫か?」
「あ……ごめん梅ちゃん……最後にもう一つだけ……僕が寝るまで横にいてくれる? やっぱ一人で寝るのは今日はちょっと……」
「へへへ。やれやれ、朝日はしょうがねえなあ」
そう言いながらも、梅はご機嫌で部屋にあるソファーを担いでベッドの横へと移動する。そのソファーに転がって……。
「ほらよ……いい子にしてな……寝付くまで俺が見ててやっからよ」
「ありがと梅ちゃん……おやすみ」
「おう。おやすみ」
――十分後。
「んがあああーーっ」
ソファーの上で梅が豪快にイビキをかいている。
「あはは。梅ちゃんが先に寝ちゃってどうするの? ほんと面白いなあ……でも」
朝日は予備の毛布を取り出して、梅にそっとかけてやる。寝ている姿の梅を見るのは初めてだが、本当に年上とは思えない童顔だ。
【ちゅ】
むにゃむにゃと気持ち良さそうに寝ている梅の唇に、軽く朝日の唇が重なった。
「ま、この位、いいよね……今日はありがと梅ちゃん……さ、僕も寝よっと」
こうして、保護男性の部屋でお泊まりと言う男性保護省始まって以来の偉業を達成した梅であった。
――翌朝、目覚めた梅がすぐ横に見える朝日の寝顔に大パニックを起こしたのは言うまでもない。
もちろん、こっそり脱出を図ったところで矢地と鉢合わせをしたのも言うまでもない!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編7が完結しました!(2026.1.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる
九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。
※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる