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翠玉の章・共通√
衣装チェンジの裏側で。
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「よーし!善は急げだね!ハルちゃんはこの箱をどうぞ」
「………」
ニコニコとリュートは用意してあった豪華な装飾の、大きな箱を私に差し出した。
対象的にカナタは苦虫を噛み潰したような顔をするのは何故だろう。
「ありがとう。なんだろう?」
言われるままに開けてみると
中には数着の洋服が入っていた。
「うわぁあ…、綺麗…」
その中でも春らしい淡い水色のワンピースに釘付けになった。
リュート曰く「婚約者に融通してもらって用意した」らしく
手触りから上質なものなのがわかる、
比較的動きやすそうなデザインのものだ。
いつの間に用意してくれたんだろうか、
昨日の一件があっても早過ぎないか?
…と思ったら、
リュートには婚約者との間に専用の転移陣があるそうで、迅速に用意できたらしい。
魔道具って便利だね。
新しい洋服は素直に嬉しい。女の子ですから。
「ちゃんとしたのは、カナタに用意してもらってね?
便宜上僕がでしゃばってしまったけれど」
ちらっとカナタに視線を向けると、
不承不承ながら、がありありと顔に出ているが、
「……着替えてきたらいいですよ。これなら変な言いがかりもつけられなくなるでしょう。」
「カナタ~、顔怖いって。
ほら、ハルちゃんは支度しに行っておいで
このままだとカナタは気になって仕事にならないからさー」
そう言ってリュートは箱を押し付けて私に部屋に戻るよう促したので、大人しく従った。
………
「…カナタ。本当、オトナ気ない。」
パタン、とハナキの部屋のドアが閉まると
リュートは呆れ顔でカナタを嗜める。
「………うるさい」
「彼女のことになると人が変わるね、君は。」
「……自分でも驚いています」
ガシガシと頭をかき、せっかく整えたヘアスタイルが乱れてしまう。
「あんまり余裕ない男は嫌われるよー?」
やれやれ。と出来の悪い弟を見る様に苦笑し、カナタの肩を叩いた。
「ちゃんと捕まえておかなきゃ。
早かれ遅かれ、「世界」があの子を見つけるよ。」
「…そうですね。
1番手だけは、誰にも譲らない。
あの子の価値は、私だけが知っていればいい」
「初恋拗らせたオトコは怖いねぇ。」
「…あなたはさっきから喧嘩売ってます?最高値で買わせてもらいますよ?」
「まっさかー。うらやましいだけさ、そーゆーの」
遠くを見つめる様に眩しげに瞳を細める。
「君たちの道は、どこに続いているんだろうね?
僕は終点まで、共にお付き合いしたいだけだよ。楽しみだね?
…て、カナタは時間大丈夫なの?」
「…………大丈夫。」
ふいっ、と目を逸らし、絞り出す様に答えるカナタに、リュートの目が座る。
「相手を待たせ過ぎるのは良くないよ~
取引先も、女の子もね♪
後は僕に任せて行っといで。ちゃんと通信機に定時連絡入れるからさ。」
ぐいぐいっ
「ちょっ…押さないで!まだハナ見てません!」
「はいはい、あとでじっくり確かめなさい」
ガチャ。
「おまたせ…」
ちょうどそのタイミングでハナキは姿を現した。
••••••••••••••••
「!」
私を見るなり動きを止めた2人。
箱の中から選んだのはあの水色のドレスワンピースだ。
ミズキさんのドレスだが、初めて袖を通した様にパリッとしていた。
肌滑りの良い生地で、軽くて大変着心地が良い。
うん、お高そうだ……
薄くて、ヒラヒラしてる。
サイズ感もちょうどいい。
スカートなのはどうにも落ち着かないが…
こんなに女の子らしい服は着るのは初めてかもしれない。
これでここにいても恥ずかしくない装いになっただろうか。
「どうかな?これなら大丈夫かな?」
「………」
「………」
時間が止まったかの様に硬直する2人に、私は少々不安になった。
(?)
かろうじて先に口を開いたのはカナタで。
「ああ、うん……いいな、とても似合っていますよ」
「…驚いた。本物のミズキみたいだ。
素敵だよ……って、カナタ固り過ぎー!
ほらほら仕事行ってらっしゃい!!」
「き、気をつけて…」
ぐいぐいっ!
カナタ「この野郎!」
リュートは
惚けるカナタを無理やりドアの方においやり
カナタはリュートに押し切られる感じで、仕事に向かうのだった。
後ろ姿から立ち上る怒気が、カナタを何倍にも大きく見せていた。
「………」
ニコニコとリュートは用意してあった豪華な装飾の、大きな箱を私に差し出した。
対象的にカナタは苦虫を噛み潰したような顔をするのは何故だろう。
「ありがとう。なんだろう?」
言われるままに開けてみると
中には数着の洋服が入っていた。
「うわぁあ…、綺麗…」
その中でも春らしい淡い水色のワンピースに釘付けになった。
リュート曰く「婚約者に融通してもらって用意した」らしく
手触りから上質なものなのがわかる、
比較的動きやすそうなデザインのものだ。
いつの間に用意してくれたんだろうか、
昨日の一件があっても早過ぎないか?
…と思ったら、
リュートには婚約者との間に専用の転移陣があるそうで、迅速に用意できたらしい。
魔道具って便利だね。
新しい洋服は素直に嬉しい。女の子ですから。
「ちゃんとしたのは、カナタに用意してもらってね?
便宜上僕がでしゃばってしまったけれど」
ちらっとカナタに視線を向けると、
不承不承ながら、がありありと顔に出ているが、
「……着替えてきたらいいですよ。これなら変な言いがかりもつけられなくなるでしょう。」
「カナタ~、顔怖いって。
ほら、ハルちゃんは支度しに行っておいで
このままだとカナタは気になって仕事にならないからさー」
そう言ってリュートは箱を押し付けて私に部屋に戻るよう促したので、大人しく従った。
………
「…カナタ。本当、オトナ気ない。」
パタン、とハナキの部屋のドアが閉まると
リュートは呆れ顔でカナタを嗜める。
「………うるさい」
「彼女のことになると人が変わるね、君は。」
「……自分でも驚いています」
ガシガシと頭をかき、せっかく整えたヘアスタイルが乱れてしまう。
「あんまり余裕ない男は嫌われるよー?」
やれやれ。と出来の悪い弟を見る様に苦笑し、カナタの肩を叩いた。
「ちゃんと捕まえておかなきゃ。
早かれ遅かれ、「世界」があの子を見つけるよ。」
「…そうですね。
1番手だけは、誰にも譲らない。
あの子の価値は、私だけが知っていればいい」
「初恋拗らせたオトコは怖いねぇ。」
「…あなたはさっきから喧嘩売ってます?最高値で買わせてもらいますよ?」
「まっさかー。うらやましいだけさ、そーゆーの」
遠くを見つめる様に眩しげに瞳を細める。
「君たちの道は、どこに続いているんだろうね?
僕は終点まで、共にお付き合いしたいだけだよ。楽しみだね?
…て、カナタは時間大丈夫なの?」
「…………大丈夫。」
ふいっ、と目を逸らし、絞り出す様に答えるカナタに、リュートの目が座る。
「相手を待たせ過ぎるのは良くないよ~
取引先も、女の子もね♪
後は僕に任せて行っといで。ちゃんと通信機に定時連絡入れるからさ。」
ぐいぐいっ
「ちょっ…押さないで!まだハナ見てません!」
「はいはい、あとでじっくり確かめなさい」
ガチャ。
「おまたせ…」
ちょうどそのタイミングでハナキは姿を現した。
••••••••••••••••
「!」
私を見るなり動きを止めた2人。
箱の中から選んだのはあの水色のドレスワンピースだ。
ミズキさんのドレスだが、初めて袖を通した様にパリッとしていた。
肌滑りの良い生地で、軽くて大変着心地が良い。
うん、お高そうだ……
薄くて、ヒラヒラしてる。
サイズ感もちょうどいい。
スカートなのはどうにも落ち着かないが…
こんなに女の子らしい服は着るのは初めてかもしれない。
これでここにいても恥ずかしくない装いになっただろうか。
「どうかな?これなら大丈夫かな?」
「………」
「………」
時間が止まったかの様に硬直する2人に、私は少々不安になった。
(?)
かろうじて先に口を開いたのはカナタで。
「ああ、うん……いいな、とても似合っていますよ」
「…驚いた。本物のミズキみたいだ。
素敵だよ……って、カナタ固り過ぎー!
ほらほら仕事行ってらっしゃい!!」
「き、気をつけて…」
ぐいぐいっ!
カナタ「この野郎!」
リュートは
惚けるカナタを無理やりドアの方においやり
カナタはリュートに押し切られる感じで、仕事に向かうのだった。
後ろ姿から立ち上る怒気が、カナタを何倍にも大きく見せていた。
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※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
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