92 / 212
第3章 黒のキャラバン。
魔王、降臨。
しおりを挟む
せりをキャットハウスに入れて、戦闘体勢を整える。
「りゅうたろう、叩きのめして! 福助は、合図があるまで待機! くぅは……、あ」
これは、ヤバい。
一目で分かった。
くぅの逆立てた毛がばちばちと静電気を起こし、目がらんらんと光っている。
またしても、首輪を見てキレてしまったようだ。
「うなぁぁぁおぅぅぅ!」
うなり声が響く。
空気が、びりびりと震えているようだった。
魔王モード突入だ。
猫は嫌な事をした相手を一生忘れないらしい。
しかも、特にくぅは執念深い。
「とどめをさしたらダメだからね……」
一応、声をかけておく。
御神体の行方が分からなくなってしまう。
まずは、みうを助け出さなくては。
フードの集団が、弓をかまえた。
みうさえ助かれば、彼らも攻撃来るのだろう。
「おこん、〈創成魔法〉。水風船!」
私は水風船を投げつけた。
顔面で割れた水風船に、みうを捕まえていた男が一瞬怯む。
「りゅうたろう!」
すかさずりゅうたろうが飛び掛かり、男は地面に倒れた。
りゅうたろうを攻撃しようとしたキャラバンの男達に、くぅが〈剣魔法〉を放った。
「みう、りゅうたろうに乗って!」
「うん!」
みうは、りゅうたろうの背中にしがみついた。
地面を蹴り、りゅうたろうが跳躍する。
ひらりと音もなく、りゅうたろうは私の横に降りてきた。
「よつば、首輪を〈解除〉!」
よつばが前足をちょいちょいと動かすと、首輪は音を立てて地面に落ちた。
「みう、大丈夫?」
「うん……」
前に見た時より、いくらかふっくらとし身綺麗になっていたが、その顔は青ざめていた。
がくがくと震えている足には、いくつも傷があった。
「チャビ、〈回復〉」
ごろごろと喉をならしているチャビを抱かせて、みうには後ろに下がってもらう。
フードの集団が、矢を射ち始めた。
「うなぁぁぁぁおぉぉぅぅぅ!!」
魔王が、いや、違った。
くぅが、再び雄叫びをあげた。
「!?」
地面がひび割れ、隆起する。
土魔法で造られた突起が、キャラバンに向かって牙のように突き立てられようとしていた。
「くぅ、ダメ! やりすぎ!!」
御神体の行方が分からなくなってしまう!
その時。
ばっさばっさと羽音を立てて、大きな影が近づいてきた。
……忘れてた。
そういえば、コハクがまだ帰ってきていなかった。
フードの集団が、慌ててドラゴンに向けて弓矢をかまえた。
「ダメ! あれ、うちのドラゴンだから!」
私の言葉に、その場にいた全員が「は?」という顔になった。
ドラゴンが降りてきて、キャラバンの馬車をその爪でべきべきと破壊する。
そのまま、ご機嫌な様子でキャラバンの荷を漁っていた。
ドラゴンちゃん、あんた、状況を見なさいよ……。
「りゅうたろう、叩きのめして! 福助は、合図があるまで待機! くぅは……、あ」
これは、ヤバい。
一目で分かった。
くぅの逆立てた毛がばちばちと静電気を起こし、目がらんらんと光っている。
またしても、首輪を見てキレてしまったようだ。
「うなぁぁぁおぅぅぅ!」
うなり声が響く。
空気が、びりびりと震えているようだった。
魔王モード突入だ。
猫は嫌な事をした相手を一生忘れないらしい。
しかも、特にくぅは執念深い。
「とどめをさしたらダメだからね……」
一応、声をかけておく。
御神体の行方が分からなくなってしまう。
まずは、みうを助け出さなくては。
フードの集団が、弓をかまえた。
みうさえ助かれば、彼らも攻撃来るのだろう。
「おこん、〈創成魔法〉。水風船!」
私は水風船を投げつけた。
顔面で割れた水風船に、みうを捕まえていた男が一瞬怯む。
「りゅうたろう!」
すかさずりゅうたろうが飛び掛かり、男は地面に倒れた。
りゅうたろうを攻撃しようとしたキャラバンの男達に、くぅが〈剣魔法〉を放った。
「みう、りゅうたろうに乗って!」
「うん!」
みうは、りゅうたろうの背中にしがみついた。
地面を蹴り、りゅうたろうが跳躍する。
ひらりと音もなく、りゅうたろうは私の横に降りてきた。
「よつば、首輪を〈解除〉!」
よつばが前足をちょいちょいと動かすと、首輪は音を立てて地面に落ちた。
「みう、大丈夫?」
「うん……」
前に見た時より、いくらかふっくらとし身綺麗になっていたが、その顔は青ざめていた。
がくがくと震えている足には、いくつも傷があった。
「チャビ、〈回復〉」
ごろごろと喉をならしているチャビを抱かせて、みうには後ろに下がってもらう。
フードの集団が、矢を射ち始めた。
「うなぁぁぁぁおぉぉぅぅぅ!!」
魔王が、いや、違った。
くぅが、再び雄叫びをあげた。
「!?」
地面がひび割れ、隆起する。
土魔法で造られた突起が、キャラバンに向かって牙のように突き立てられようとしていた。
「くぅ、ダメ! やりすぎ!!」
御神体の行方が分からなくなってしまう!
その時。
ばっさばっさと羽音を立てて、大きな影が近づいてきた。
……忘れてた。
そういえば、コハクがまだ帰ってきていなかった。
フードの集団が、慌ててドラゴンに向けて弓矢をかまえた。
「ダメ! あれ、うちのドラゴンだから!」
私の言葉に、その場にいた全員が「は?」という顔になった。
ドラゴンが降りてきて、キャラバンの馬車をその爪でべきべきと破壊する。
そのまま、ご機嫌な様子でキャラバンの荷を漁っていた。
ドラゴンちゃん、あんた、状況を見なさいよ……。
172
あなたにおすすめの小説
【完結】愛猫ともふもふ異世界で愛玩される
綾雅(りょうが)今年は7冊!
ファンタジー
状況不明のまま、見知らぬ草原へ放り出された私。幸いにして可愛い三匹の愛猫は無事だった。動物病院へ向かったはずなのに? そんな疑問を抱えながら、見つけた人影は二本足の熊で……。
食われる?! 固まった私に、熊は流暢な日本語で話しかけてきた。
「あなた……毛皮をどうしたの?」
「そういうあなたこそ、熊なのに立ってるじゃない」
思わず切り返した私は、彼女に気に入られたらしい。熊に保護され、狼と知り合い、豹に惚れられる。異世界転生は理解したけど、私以外が全部動物の世界だなんて……!?
もふもふしまくりの異世界で、非力な私は愛玩動物のように愛されて幸せになります。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/09/21……完結
2023/07/17……タイトル変更
2023/07/16……小説家になろう 転生/転移 ファンタジー日間 43位
2023/07/15……アルファポリス HOT女性向け 59位
2023/07/15……エブリスタ トレンド1位
2023/07/14……連載開始
【完結】聖獣もふもふ建国記 ~国外追放されましたが、我が領地は国を興して繁栄しておりますので御礼申し上げますね~
綾雅(りょうが)今年は7冊!
ファンタジー
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放? 最高の褒美ですね。幸せになります!
――いま、何ておっしゃったの? よく聞こえませんでしたわ。
「ずいぶんと巫山戯たお言葉ですこと! ご自分の立場を弁えて発言なさった方がよろしくてよ」
すみません、本音と建て前を間違えましたわ。国王夫妻と我が家族が不在の夜会で、婚約者の第一王子は高らかに私を糾弾しました。両手に花ならぬ虫を這わせてご機嫌のようですが、下の緩い殿方は嫌われますわよ。
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。すべて揃いました。実家の公爵家の領地に戻った私を出迎えたのは、溺愛する家族が興す新しい国でした。領地改め国土を繁栄させながら、スローライフを楽しみますね。
最高のご褒美でしたわ、ありがとうございます。私、もふもふした聖獣達と幸せになります! ……余計な心配ですけれど、そちらの国は傾いていますね。しっかりなさいませ。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
※2022/05/10 「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過
※2022/02/14 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2022/02/13 小説家になろう ハイファンタジー日間59位
※2022/02/12 完結
※2021/10/18 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2021/10/19 アルファポリス、HOT 4位
※2021/10/21 小説家になろう ハイファンタジー日間 17位
神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~
御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。
異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。
前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。
神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。
朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。
そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。
究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(りょうが)今年は7冊!
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる