93 / 212
第3章 黒のキャラバン。
宝珠。
しおりを挟む
「ううぅ……」
くぅが短くうなると、ドラゴンはあからさまにビクッとした。
城塞都市オニキスでりゅうたろうとおこんにやられたドラゴンは「猫は自分より上」と認識しているのだ。
特に、ほかの猫が逆らわないくぅの事は一番怖いと思っているようだった。
ドラゴンさえうなり声一つで怯えさせるって、もはや完全に魔王だよな……。
ちなみに私の事は、ご飯をくれる人=好き、というのがドラゴンの認識らしい。
ドラゴンはちゃっかりお宝をゲットすると、私の後ろに移動してきた。
隠れてないからな、それ……。
ドラゴンのお土産は、黒のキャラバンから奪ったものだったらしい。
どうりで、ギルドに確認しても「ドラゴンに襲われた」という情報が出てこないわけだ。
まぁ、いい。
今は、それよりも。
「御神体は」
「卵は」
「「どこ!?」」
私とみうの声が重なった。
みう達も、黒のキャラバンに何か盗まれたのか。
よく見れば、フードの集団は皆エルフのようだった。
「さっさと吐け!」
くぅが、ゆっくりと一歩踏み出した。
足元から、炎が立ち上っている。
くわっと牙をむき出しにして、黒のキャラバンの連中を威嚇する。
「御神体は、ありません!」
怯えた男達は、あっさりと白状した。
「それは知ってる! どこに売った!?」
「売ってません!」
「そこのエルフに奪われました!」
「……は?」
私がエルフ達を振り返ると、彼らはぎくりとしたようだった。
「ま、間違えたんだ!」
エルフの一人が、慌てて叫んだ。
視線はくぅに向いたままだ。
「私達の奪われた宝珠を取り返そうとしていたんだけど、箱に入ったままだったから、間違えたみたいなの」
みうが必死な様子で言った。
「大丈夫。精霊樹の根元に、大事に保管してあるから」
「精霊樹の根元……」
そこなら、きっと穢れはないだろう。
よかった、これで神様になれる。
お稲荷さんの事を思い、私はほっとした。
「私達の宝珠はどこ?」
「それなら、ドラゴンに奪われたよ!」
ん?
今度は、エルフ達が私の方を見た。
「みう、宝珠って?」
「虹雲の卵なの。数百年に一度、孵化して私達エルフの里である翡翠の森を守護してくれるの」
んん?
虹……。
卵……。
ドラゴン……。
まさか。
「もしかして、これ……?」
無限収納から、虹色の玉を取り出して見せた。
「なんで、つかさが……!?」
「ドラゴンが、お土産にくれた」
「……え?」
みうの顔に?が浮かんでいる。
「みう、ダメだ!」
「もう日が落ちる!」
エルフ達が悲鳴のように叫んだ。
「どうしたの?」
「今日の日没まで精霊樹の泉に卵を入れないと、孵化するまでにまた数百年かかるの」
みうは、私の顔を見上げた。
「つかさ、お願い」
「了解」
と、その前に黒のキャラバンをどうにかしないと。
「おこん、〈創成魔法〉。大きなペットケージ!」
がしゃんっ、という音と共に、黒のキャラバンは巨大なペットケージの中に閉じ込められた。
私の後ろで、ドラゴンがぷるぷると震えている。
自分が閉じ込められた時の事を思い出したらしい。
「くぅ、〈土魔法〉!」
ペットゲージの周囲を、くぅの〈土魔法〉で隆起させた地面で囲った。
これで逃げられないだろう。
「キング、〈空間転移〉!」
目的地は。
「エルフの里、翡翠の森!」
くぅが短くうなると、ドラゴンはあからさまにビクッとした。
城塞都市オニキスでりゅうたろうとおこんにやられたドラゴンは「猫は自分より上」と認識しているのだ。
特に、ほかの猫が逆らわないくぅの事は一番怖いと思っているようだった。
ドラゴンさえうなり声一つで怯えさせるって、もはや完全に魔王だよな……。
ちなみに私の事は、ご飯をくれる人=好き、というのがドラゴンの認識らしい。
ドラゴンはちゃっかりお宝をゲットすると、私の後ろに移動してきた。
隠れてないからな、それ……。
ドラゴンのお土産は、黒のキャラバンから奪ったものだったらしい。
どうりで、ギルドに確認しても「ドラゴンに襲われた」という情報が出てこないわけだ。
まぁ、いい。
今は、それよりも。
「御神体は」
「卵は」
「「どこ!?」」
私とみうの声が重なった。
みう達も、黒のキャラバンに何か盗まれたのか。
よく見れば、フードの集団は皆エルフのようだった。
「さっさと吐け!」
くぅが、ゆっくりと一歩踏み出した。
足元から、炎が立ち上っている。
くわっと牙をむき出しにして、黒のキャラバンの連中を威嚇する。
「御神体は、ありません!」
怯えた男達は、あっさりと白状した。
「それは知ってる! どこに売った!?」
「売ってません!」
「そこのエルフに奪われました!」
「……は?」
私がエルフ達を振り返ると、彼らはぎくりとしたようだった。
「ま、間違えたんだ!」
エルフの一人が、慌てて叫んだ。
視線はくぅに向いたままだ。
「私達の奪われた宝珠を取り返そうとしていたんだけど、箱に入ったままだったから、間違えたみたいなの」
みうが必死な様子で言った。
「大丈夫。精霊樹の根元に、大事に保管してあるから」
「精霊樹の根元……」
そこなら、きっと穢れはないだろう。
よかった、これで神様になれる。
お稲荷さんの事を思い、私はほっとした。
「私達の宝珠はどこ?」
「それなら、ドラゴンに奪われたよ!」
ん?
今度は、エルフ達が私の方を見た。
「みう、宝珠って?」
「虹雲の卵なの。数百年に一度、孵化して私達エルフの里である翡翠の森を守護してくれるの」
んん?
虹……。
卵……。
ドラゴン……。
まさか。
「もしかして、これ……?」
無限収納から、虹色の玉を取り出して見せた。
「なんで、つかさが……!?」
「ドラゴンが、お土産にくれた」
「……え?」
みうの顔に?が浮かんでいる。
「みう、ダメだ!」
「もう日が落ちる!」
エルフ達が悲鳴のように叫んだ。
「どうしたの?」
「今日の日没まで精霊樹の泉に卵を入れないと、孵化するまでにまた数百年かかるの」
みうは、私の顔を見上げた。
「つかさ、お願い」
「了解」
と、その前に黒のキャラバンをどうにかしないと。
「おこん、〈創成魔法〉。大きなペットケージ!」
がしゃんっ、という音と共に、黒のキャラバンは巨大なペットケージの中に閉じ込められた。
私の後ろで、ドラゴンがぷるぷると震えている。
自分が閉じ込められた時の事を思い出したらしい。
「くぅ、〈土魔法〉!」
ペットゲージの周囲を、くぅの〈土魔法〉で隆起させた地面で囲った。
これで逃げられないだろう。
「キング、〈空間転移〉!」
目的地は。
「エルフの里、翡翠の森!」
175
あなたにおすすめの小説
神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~
御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。
異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。
前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。
神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。
朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。
そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。
究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。
【完結】愛猫ともふもふ異世界で愛玩される
綾雅(りょうが)今年は7冊!
ファンタジー
状況不明のまま、見知らぬ草原へ放り出された私。幸いにして可愛い三匹の愛猫は無事だった。動物病院へ向かったはずなのに? そんな疑問を抱えながら、見つけた人影は二本足の熊で……。
食われる?! 固まった私に、熊は流暢な日本語で話しかけてきた。
「あなた……毛皮をどうしたの?」
「そういうあなたこそ、熊なのに立ってるじゃない」
思わず切り返した私は、彼女に気に入られたらしい。熊に保護され、狼と知り合い、豹に惚れられる。異世界転生は理解したけど、私以外が全部動物の世界だなんて……!?
もふもふしまくりの異世界で、非力な私は愛玩動物のように愛されて幸せになります。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/09/21……完結
2023/07/17……タイトル変更
2023/07/16……小説家になろう 転生/転移 ファンタジー日間 43位
2023/07/15……アルファポリス HOT女性向け 59位
2023/07/15……エブリスタ トレンド1位
2023/07/14……連載開始
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
【完結】聖獣もふもふ建国記 ~国外追放されましたが、我が領地は国を興して繁栄しておりますので御礼申し上げますね~
綾雅(りょうが)今年は7冊!
ファンタジー
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放? 最高の褒美ですね。幸せになります!
――いま、何ておっしゃったの? よく聞こえませんでしたわ。
「ずいぶんと巫山戯たお言葉ですこと! ご自分の立場を弁えて発言なさった方がよろしくてよ」
すみません、本音と建て前を間違えましたわ。国王夫妻と我が家族が不在の夜会で、婚約者の第一王子は高らかに私を糾弾しました。両手に花ならぬ虫を這わせてご機嫌のようですが、下の緩い殿方は嫌われますわよ。
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。すべて揃いました。実家の公爵家の領地に戻った私を出迎えたのは、溺愛する家族が興す新しい国でした。領地改め国土を繁栄させながら、スローライフを楽しみますね。
最高のご褒美でしたわ、ありがとうございます。私、もふもふした聖獣達と幸せになります! ……余計な心配ですけれど、そちらの国は傾いていますね。しっかりなさいませ。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
※2022/05/10 「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過
※2022/02/14 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2022/02/13 小説家になろう ハイファンタジー日間59位
※2022/02/12 完結
※2021/10/18 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2021/10/19 アルファポリス、HOT 4位
※2021/10/21 小説家になろう ハイファンタジー日間 17位
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~
あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい?
とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。
犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる