執事と貴婦人に、くすぐられて悦ぶ彼女

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嫉妬という名の手枷

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それは、雨の音がしんと響く、静かな夜だった。

綾乃は白い寝衣のまま、サロンの椅子に座っていた。
窓の外に降り注ぐ雨を眺めながら、ぼんやりと――けれど確かに思い出していた。
あの絹手袋の感触。
女でしか知り得ない“くすぐったさ”の悦楽。
それを包み込んだ、セシリアの慈愛に満ちたまなざし。

――そして、今。

扉が開き、静かな足音が近づく。

「お嬢様、少々よろしいでしょうか。」

それは、あの執事だった。
整えられた黒髪と、完璧な仕立ての燕尾服。
それなのに、今夜の彼の眼差しには――何かが、違っていた。

「……どうぞ。」

綾乃の声が、少し震える。
なぜだろう、まるで咎められることを待っている少女のように。

執事は無言のまま、綾乃の目の前まで歩み寄ると、
その手に持っていた銀の盆を静かに置いた。

「お茶をお淹れいたしました。ローズマリーと、ほんの少しのジャスミン。
……お身体が、冷えているようにお見受けしましたので。」

「ありがとう、ございます……」

綾乃がカップに手を伸ばしたその瞬間だった。
執事の手が、その手首を取った。
やさしく、けれど逃がさぬように。

「その手袋の痕が、まだ残っております。」

綾乃は息を呑む。彼の視線が冷ややかで――
それでいて、奥底に何かが燃えているのがわかった。

「お嬢様。わたくしは、ただの使用人でございます。
ですが……あなたの身体に触れるたびに、あの方の爪痕があるのは――」

彼は一瞬言葉を切り、目を伏せる。

「……嫉妬してしまうのです。」

その声は、低く、震えていた。

綾乃は何も言えず、ただ、見つめ返す。
次の瞬間――

「どうか、わたくしにも触れさせてください。」

そう言って、執事は跪いた。
そして、綾乃の手首を自らの白手袋でそっと包むと、そのまま指先を見つめるようにして――口づけた。

「貴女の笑い声を、誰にも渡したくない。
くすぐりでさえ、わたくしだけのものにしたいのです。」

綾乃はその告白に、身体の奥がざわめくのを感じた。
嬉しさと、怖さと、何か得体の知れない熱。

「……では、くすぐってください。あなたの手で。」

その言葉を合図に、執事は綾乃の両手を取って、椅子の背に回した。
そして、事もなげにそこに皮の手枷を嵌めていく。

「逃げられないように。……すべてを、委ねていただきます。」

パチン、と金具の音が響く。

綾乃の両腕が、しっかりと固定された瞬間――
すでに身体の奥では、ぞくぞくとした火照りが広がり始めていた。

執事の手は、静かに寝衣の裾をまくる。
足元から滑るように布が持ち上げられ、
下着一枚になった身体が、夜気にさらされる。

「まずは――あなたの身体に刻まれた“罪”を、指で赦して差し上げましょう。」

指先が、ゆっくりと肋骨に沿って這い上がる。

「くっ……! ん、ふ、はっ……!」

「セシリア殿は、絹で貴女をくすぐられたそうですね。
わたくしは、素手で罪をなぞり、罰して差し上げます。」

その指は、もはやくすぐりではなかった。
愛情と独占欲が混ざった“執念”だった。

脇腹、肋骨の窪み、脇の下。
一つひとつをなぞりながら、執事は綾乃の反応を見逃さず、次のくすぐりへ繋げていく。

「ひあっ……だ、だめ……! そっ、そこっ……!」

「まだ、足りません。笑ってください。わたくしのために――
他の誰でもなく、わたくしの指でしか笑えない身体にして差し上げます。」

執事の指が腹部から下腹部へ、そして内腿の付け根にかすかに触れる。

「ひっ、くふっ、やっ……! そんな、場所まで……!」

「くすぐるのです、お嬢様。感じてはいけない場所でさえ、笑わせる。
それが――わたくしの流儀です。」

その夜、綾乃は何度も笑わされ、喘がされ、
笑いと官能の境界線が消えるまで、愛され続けた。

手枷が解かれたとき、綾乃の目には涙が浮かんでいた。
くすぐったさと快楽、そして執事の熱に、すっかり溺れていた。

「わたくしは……貴女の微笑を、誰にも譲りたくはありません。」

囁きは、まるで誓いの言葉のようだった。

――その夜を境に、館の空気がわずかに変わっていく。
嫉妬の炎が、やがて次なる試練を呼び寄せることになるとは、
綾乃はまだ知らなかった。
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