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番外編:令嬢の吐息 ― 愛されるくすぐったさに溺れて
しおりを挟む――こんなに、くすぐったいのに。
どうして私は、逃げようとしないの……?
それどころか……
私は、もっと……もっとくすぐられたくて、身体の奥がうずいている――
ベッドの上。私はやさしく手足を縛られている。
自由はないけれど、窮屈さもない。
ただ、ふたりの愛が、私を好きなように愛してくれている。
アレクシスの指先が、私の脇腹を滑る。
その動きは軽やかでリズミカルで……ときどき、わざと力を抜くようにして、ふっと触れる。
「んふっ……やぁ……アレクシス、そこは……っ」
くすぐったさが私の背骨を駆け上がるたびに、頭の奥が真っ白になる。
でも、その直後――
今度はセシリアが、足の指を一本一本、まるで愛撫するかのように撫でてくる。
「ひゃああっ、セシリア……そんな……くすぐったすぎるぅ……」
アレクシスのタッチはまるで熱い指揮棒。
身体の奥から何かをかき回すように、テンポを刻みながら脇腹、腰、脇の下へと流れる。
一方で、セシリアの指は冷たい絹のよう。
足の裏をくるくると撫で、指の間をそっとこじ開けるように、優しく執拗に触れてくる。
アレクシスの愛は、私を笑わせる。
セシリアの愛は、私をとろけさせる。
まるでふたりの指が、それぞれ違う愛の旋律で、私を奏でているみたい。
笑い声が溢れ出す。息が乱れる。
でも、それすらもふたりの愛を浴びる証なのだと、私はどこかで知っている。
「やぁ……だめ……ふたりとも……」
そう言いながら、心は真逆を叫んでいる。
(もっと……ふたりのくすぐったい愛で、包まれたいの――)
ふたりの指が交差する。
脇腹と足裏を、まったく違う愛し方で、同時にくすぐられる。
「っあっ、あああ……っは、はははっ……くすぐったいのに……しあわせ……!」
私は笑いながら、うれしくて、くすぐったくて、泣きそうになる。
でも涙は、悲しみなんかじゃない。
心までくすぐられるって、こんなに……気持ちいいんだ。
アレクシスの指が脇腹から背中に滑る。ぞくっと震えが走り、そこにセシリアがふくらはぎを撫で上げてくる。
ふたりのタッチは対照的なのに、どちらも私の全部を包んでくれる。
まるで「私のすべてを受け入れてるよ」と、くすぐりながら囁いてくれているみたい。
「ねぇ……もっと……もっと私を、笑わせて……愛して……くすぐって……お願い……」
その言葉が零れたとき、ふたりの動きがふっと止まり――
見つめる視線のなかに、誇らしげな、そしてとてもやさしい微笑があった。
「――喜んで、綾乃様」
「あなたが望む限り、私たちは、いくらでも……」
ふたりの指がまた、私の身体へと舞い戻ってくる。
私はもう、笑いの波に抗わない。
このくすぐったくて、心まで幸せにしてくれる愛に、身を委ねて――
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