ペア・ティックリング

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ちょっと変わった、愛の形

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ティルの指が私の脇腹にすっと滑り込んだとき、もう反射のように肩がすくんで、笑い声が漏れた。

「ふふっ……ん、ちょっ、や、まって……!」

でも彼は止まらない。私のくすぐったさを知り尽くしたような手付きで、脇腹から背中、そして太ももへと指を這わせてくる。
甘い感覚が身体中を駆け巡って、私は笑いながら、でもどこかで感じていた。
――私は、今、愛されている。

「ソフィア。君にも、触れてほしい」

ティルがそう囁いた。
私は一瞬、戸惑った。私が? 彼を? それとも誰かを……?

彼は優しく私の手を取り、そのまま――ベッドの隣でくすぐられるために招かれた、くすぐられ好きの客人の手の甲に私の指先をそっと導いた。

「こうやって……ここを、軽く」

彼の声に促されるまま、私はその手の甲を撫でるようにくすぐった。
すると、目の前の彼女――名をミレーユという――が、くすっと笑った。くすぐったそうに肩を震わせて、でも楽しげに笑っている。

――ああ、これが。

不思議な感覚だった。
私のくすぐったさと、彼女の笑いが、どこかで共鳴している。
自分もくすぐられているのに、ミレーユのくすぐったがる顔を見ると、胸の奥があたたかくなった。
私の笑い声と、彼女の笑い声が重なって、響く。

私はくすぐられている。
でも同時に、私は誰かを笑顔にしている。

こんな幸福があるなんて、知らなかった。

「うふふ……ふふっ……ん、あ……あははっ……!」

私の笑い声が高く跳ねた瞬間、ティルが囁く。

「ソフィア……君の指先が、誰かを癒してる。くすぐることも、愛なんだよ」

その言葉に、胸がいっぱいになった。

誰かを大切に想うって、こういうことなのかもしれない。
私は笑って、そして笑わせて、――心が満ちていった。
脇腹をくすぐられても、足の指をこちょこちょされても、もう「やめて」とは言いたくなかった。

「もっと……くすぐって。ティル……私も、くすぐりたい……」

恥ずかしいくらい素直な自分の声に、ティルが微笑んだ。

「うん。君が望むなら、いくらでも――」

その言葉の続きを聞く前に、再び指が私の腰を捕らえて、私は笑い声の渦に溶けていった。
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