ペア・ティックリング

杏

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くすぐりの姉妹（ソウルシスター）

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ミレーユの指が、私の肩甲骨の間をなぞった瞬間、私は声にならないほどくすぐったくて、笑いが堰を切ったようにあふれた。

「ふふっ……ひゃは……あっ……だめ、そこ……っ」

でも、彼女の指は止まらない。
ゆっくり、丁寧に。まるで私の背中に書かれた秘密の文字をなぞるように、撫で、指先でさぐり、優しくくすぐる。
ミレーユの指は、ティルのそれよりもやや細く、繊細な震えを持っていた。

「ねえ、ソフィア……気持ちいいの？」

その問いに、私は涙目になりながら頷いた。

「くすぐったいのに……なんだか、幸せなの……」

それは、ミレーユも同じだったようで、私が彼女の足の指の間を、一本一本そっと撫でるたびに、彼女もまた笑い、頬を染めていた。

「……足の指なんて、誰にも触れられたことなかったのに。なのに……ソフィアに触れられると、全然いやじゃないの。不思議……」

私もそう思った。
肌が触れ合い、笑いが重なるたび、くすぐったさの中に**甘く、透明な“信頼”**が芽生えていくのを感じる。

くすぐることは、支配じゃない。
くすぐられることは、服従じゃない。

私たちはお互いを許し合い、求め合い、笑い合っていた。

ティルは、少し離れた場所で静かに見守っていた。
その眼差しには、どこか温かな誇らしさがにじんでいて、私は彼の導きに心から感謝した。

そして私は気づく――

ミレーユの笑い声が、私の心の奥に柔らかく沁み込んでいくように、
私の指先も、彼女の心の氷を、少しずつ溶かしていたのだと。

「……くすぐったいって、孤独を忘れさせてくれるのね……」

ミレーユが呟いたとき、私は思わず手を伸ばして、彼女の頬にそっと触れた。

「うん……そうね。笑うって、誰かとつながってる証なんだもの」

そして再び、互いの脇腹にそっと指を伸ばして、同時にくすぐり合った瞬間――

ふたりの笑い声が重なった。
それはまるで、音叉のような共鳴音だった。

私たちはもう、ただの“令嬢とくすぐりの客人”ではなかった。
肌で笑いを交わし、心でぬくもりを重ねた――くすぐりの姉妹（ソウルシスター）になっていた。

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