くすぐりの癒しの館

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第十章 くすぐられたい女

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「……お願い……もっと……くすぐって……礼司さま……」

その言葉は、確かに彼女自身の唇から零れ落ちた。
自ら望み、求めるようになった綾乃の声は、熱を帯びて甘く震えている。
羞恥の色は確かに頬に残りながらも、その瞳の奥は、快楽を渇望する色に染まっていた。

「ふふ……ようやく本当のお気持ちを、口にしていただけましたね」

礼司は微笑をたたえながら、まるで貴婦人に仕えるように跪き、
綾乃の足首をそっと掴むと、丁寧に膝の上に乗せた。
そこから――足裏、土踏まず、足指の間へと、再び執拗なくすぐりが始まる。

「んっ……くふっ……ああっ……い、いまの……指の間……んんっ、笑っちゃうのに……でも、でも……」

笑い声に快感の吐息が混ざり、綾乃の身体はますます敏感に反応していく。

「くすぐりは、ただ笑いを引き出すものではありません――
神経の奥深く、隠れていた快楽を呼び覚ます秘儀でもあるのです」

彼の指先は、ブラシに持ち替えられた。
絹のように柔らかく、けれども芯を感じさせる馬毛の筆が、今度は太ももの内側をくすぐっていく。

「ひゃんっ……! そ、それっ……あぁっ……すごい、しみこむみたいに……っ」

ブラシが描くのは、細くて柔らかい円。
ときに速く、ときにゆっくり――
礼司は彼女の反応を見極めながら、その度合いを巧みに変化させる。

「脇腹は……ここですね」

手が滑るように脇腹へ。
皮膚と皮膚の接触。
そのぬくもり、柔らかさ、くすぐったさ、すべてが入り混じり、綾乃の口からは意味をなさない嬌声が漏れ出した。

「あ、ああんっ! だめっ、そこはっ……もう、わたし……おかしくなっちゃうっ……!」

礼司は、綾乃の首筋にもそっと唇を落とす。
くすぐりとキスの狭間――愛撫と笑いの交錯――
その境界線は、もはや曖昧だった。

「くすぐられる快感に堕ちた貴女は、もう……『くすぐられたい女』なのです」

その言葉に、綾乃の中に何かが崩れ落ち、そして開かれていく。
首筋、耳の裏、脇の下、へそのまわり――
くすぐられればくすぐられるほど、彼女の身体は悦びに打ち震え、心は陶酔に染まっていった。

「礼司さまっ……わたし、もっと……もっと、感じたいの……
くすぐられて、笑って……でも、そのたびに、気持ちよくて……
あなたに、全部……委ねたいの……っ」

それは、くすぐりを通して開花した新たな“自我”。
官能と笑いの狭間で目覚めた、くすぐられることへの欲望。
恥じらいと期待が入り混じったその言葉に、礼司は満足げに微笑んだ。

「――ようやく、綾乃様の心と身体が、ひとつに重なり始めましたね」

そしてその手は、さらなる快感の扉を開くため、静かに動き出す。
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