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観察者の目覚め 〜第四の視線より〜
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夜は静かだった。外の森は、月明かりに濡れた葉が風に揺れるたび、ささやきにも似た音を立てていた。
彼――名をレオといった――は、館の奥へと足を踏み入れた。誘われるように、導かれるように。
きっかけは、偶然ではなかった。
薄いカーテンの隙間から見えたのは、ひとつの秘密。
それは、誰かを責めるような痛みではなく、誰かを慈しむような快楽の風景――くすぐりという愛のかたち。
ふたりの男女が、ひとりの女性を抱くようにくすぐっていた。
優しく、執拗に、慈しみながら。
その女性――綾乃は、くすぐられるたびに笑い、悶え、甘やかな声を漏らしながら、何よりも幸福そうだった。
レオは戸惑った。だが、目が離せなかった。
そこには羞恥でも、支配でもない。
手のひらが、脇の下に、脇腹に、足の裏に触れるたび、綾乃の心がほどけていくのが分かった。
「……なぜ、こんなに美しいのだろうか」
彼の胸の奥に、熱いものが広がっていた。
自分も、あのように、誰かの笑顔を引き出せたら――
そんな願望に、知らず目を閉じ、息を呑んでいた。
そのときだった。
「……おや、覗いていたのですね」
背後から届いた、低く柔らかな男の声――アレクシス。
そして、重なるように響いた艶やかな女の声――セラフィナ。
「ならば、いっそお入りなさいな。綾乃の喜びを知ってしまったなら、もう、目を逸らせませんでしょう?」
レオは、戸口で立ち尽くしていた。
けれど、次の瞬間、綾乃が首をかしげて彼を見上げた。
頬は紅潮し、目元には涙が浮かんでいる。だが、微笑みは確かだった。
「……見ていたの? 恥ずかしいけど……でも、ね。もし……優しくしてくれるなら、少しだけ……触れて、みる?」
それは、祈るような声だった。
彼女は怯えていなかった。
彼女は、愛を分かち合いたいと願っていた。
レオは、ゆっくりと前へ出た。
指先が震えていた。
だが、導かれるように、ベッドの端に膝をつき、綾乃の足元に手を伸ばした。
彼の手が、まだ触れぬ空気の中で止まると、セラフィナが囁いた。
「くすぐりは、心に触れる技。あなたの想いが、その指先に宿るのですわ」
そして、アレクシスがその手をとって、彼の掌を導く。
「ここだ、彼女の足の甲、ここの骨の脇を撫でるように、繊細に――」
レオの指が、綾乃の足の甲を撫でた瞬間。
綾乃が身を震わせ、細く甘い声を漏らした。
「んっ……くすぐったい……けど……あたたかい……」
彼女は逃げない。
いや、逃げられない。
それは、拘束ではなく、愛の重みだった。
アレクシスとセラフィナが、彼に席を譲るように後退し、微笑む。
新たな愛が、この館に迎えられたのだった。
彼――名をレオといった――は、館の奥へと足を踏み入れた。誘われるように、導かれるように。
きっかけは、偶然ではなかった。
薄いカーテンの隙間から見えたのは、ひとつの秘密。
それは、誰かを責めるような痛みではなく、誰かを慈しむような快楽の風景――くすぐりという愛のかたち。
ふたりの男女が、ひとりの女性を抱くようにくすぐっていた。
優しく、執拗に、慈しみながら。
その女性――綾乃は、くすぐられるたびに笑い、悶え、甘やかな声を漏らしながら、何よりも幸福そうだった。
レオは戸惑った。だが、目が離せなかった。
そこには羞恥でも、支配でもない。
手のひらが、脇の下に、脇腹に、足の裏に触れるたび、綾乃の心がほどけていくのが分かった。
「……なぜ、こんなに美しいのだろうか」
彼の胸の奥に、熱いものが広がっていた。
自分も、あのように、誰かの笑顔を引き出せたら――
そんな願望に、知らず目を閉じ、息を呑んでいた。
そのときだった。
「……おや、覗いていたのですね」
背後から届いた、低く柔らかな男の声――アレクシス。
そして、重なるように響いた艶やかな女の声――セラフィナ。
「ならば、いっそお入りなさいな。綾乃の喜びを知ってしまったなら、もう、目を逸らせませんでしょう?」
レオは、戸口で立ち尽くしていた。
けれど、次の瞬間、綾乃が首をかしげて彼を見上げた。
頬は紅潮し、目元には涙が浮かんでいる。だが、微笑みは確かだった。
「……見ていたの? 恥ずかしいけど……でも、ね。もし……優しくしてくれるなら、少しだけ……触れて、みる?」
それは、祈るような声だった。
彼女は怯えていなかった。
彼女は、愛を分かち合いたいと願っていた。
レオは、ゆっくりと前へ出た。
指先が震えていた。
だが、導かれるように、ベッドの端に膝をつき、綾乃の足元に手を伸ばした。
彼の手が、まだ触れぬ空気の中で止まると、セラフィナが囁いた。
「くすぐりは、心に触れる技。あなたの想いが、その指先に宿るのですわ」
そして、アレクシスがその手をとって、彼の掌を導く。
「ここだ、彼女の足の甲、ここの骨の脇を撫でるように、繊細に――」
レオの指が、綾乃の足の甲を撫でた瞬間。
綾乃が身を震わせ、細く甘い声を漏らした。
「んっ……くすぐったい……けど……あたたかい……」
彼女は逃げない。
いや、逃げられない。
それは、拘束ではなく、愛の重みだった。
アレクシスとセラフィナが、彼に席を譲るように後退し、微笑む。
新たな愛が、この館に迎えられたのだった。
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