ひきこもり妖精と旅人アリ

みず

文字の大きさ
3 / 3

最終話 ゆうきをだして

しおりを挟む
「こころの、ゆきかき……?」

 きょとんと首をかしげるエトにうなずきアリさんは言います。

「そうさ。悩みってなぁ雪みてぇなもんだ。晴れてりゃ溶けるが、天気が悪けりゃ残り続けて固まっちまう。積もれば動けなくなるし、最悪押し潰される」

 身振り手振りを使って説明したアリさんはエトを見て「だからな、嬢ちゃん」と続けます。

「オイラたちは周りに相談することで心の雪かきをする必要があんのさ」

 悩みを打ち明ける。それはエトにとってとても勇気のいる行為です。だからこそずっとため込んで、にっちもさっちもいかなくなって家に閉じこもってしまったのですから。

「でも、エトのなやみなんて、みんなにくらべたらちっちゃいし……わらわれちゃうかも」
「気にするこたぁねぇさ。言ったろ、悩みってのは雪みてぇなもんだって。一つ一つは小さくても降り積もれば重くなんのさ」

 それでもまだエトは勇気が出ません。話せば呆れられて、面倒な子だと嫌われてしまうかもしれないと考えてしまいます。エトは自分に自信が持てないのです。

 うつむいたままの妖精を見上げ、アリさんは静かな声で言いました。

「オイラは、嬢ちゃんに一人で立ってほしいんだ」

 エトは何も言わずただアリさんの言葉を聞きます。

「立って、前を向いて、歩いてほしい。……こういう時、偉人の名言でも持ち出そうかとも思ったんだが、ありゃあ一人で立てるやつの言葉だからな。座りこんじまってるやつにゃ響かねぇ」

 困ったように顔をかいて笑ってから、アリさんはまっすぐエトの目を見ました。

 自由で、何も恐れない。いつもみんなのために働いて、いつもみんなの先頭を歩いている、エトの憧れ。そんなヒーローが心配そうにこちらを見つめている。
 
 そのことに気づき、エトはようやく理解しました。話しても嫌われない相手はいるんだ、と。

「あのね、まえにエトがね──」

 こうして小さな妖精は勇気を出して、今までため込んでいた全てを打ち明けたのでした。
 



「どうだい、嬢ちゃん。言ってスッキリしたかい?」
「……うん。なんか、かるくなった」
「そいつぁよかった」

 すっかり元気になったエトはアリさんと笑い合いました。と、その時。

 ドンドンドン、とドアが叩かれました。

 そして、一拍間を置いてから、

「エトちゃん。いっしょにお祭りしよう!」

 みんながエトを呼ぶ声が聞こえたのです。

「行ってきな、嬢ちゃん」

 アリさんにうなずき、小さな妖精はドアの前に立ちます。ゆっくりと呼吸を整えてドアノブをひねると、明るい外へ向かって飛び出しました。
 
 今日は楽しいお祭り。きっと、みんなにとって素敵な一日になるでしょう。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

ぼくのだいじなヒーラー

もちっぱち
絵本
台所でお母さんと喧嘩した。 遊んでほしくて駄々をこねただけなのに 怖い顔で怒っていたお母さん。 そんな時、不思議な空間に包まれてふわりと気持ちが軽くなった。 癒される謎の生き物に会えたゆうくんは楽しくなった。 お子様向けの作品です ひらがな表記です。 ぜひ読んでみてください。 イラスト:ChatGPT(OpenAI)生成

このせかいもわるくない

ふら
絵本
以前書いた童話「いいとこ探し」を絵本にリメイクしました。 色んなソフトを使ったりすれば、もっと良い絵が描けそうだったり、未熟な点は多いですが、よろしくお願いします。

ふしぎなリボン

こぐまじゅんこ
児童書・童話
ももちゃんは、クッキーをおばあちゃんにとどけようとおもいます。 はこにつめて、きいろいリボンをむすびました。 すると……。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

ゆまちゃんとヤン丸の12ヶ月

万揮/マキちん
絵本
まん丸な子犬のヤン丸とゆまちゃんという女の子の一年間の物語です。

うちゅうじんのかこちゃん

濃子
絵本
「かこちゃんは あきらめない」 発達ゆっくりさんのかこちゃんを、友達に笑われたお姉ちゃん かこちゃんは変じゃないんだよ、かこちゃんはこんないいこなんだよ ねーねと同じ みんないいこ

処理中です...