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最終話 ゆうきをだして
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「こころの、ゆきかき……?」
きょとんと首をかしげるエトにうなずきアリさんは言います。
「そうさ。悩みってなぁ雪みてぇなもんだ。晴れてりゃ溶けるが、天気が悪けりゃ残り続けて固まっちまう。積もれば動けなくなるし、最悪押し潰される」
身振り手振りを使って説明したアリさんはエトを見て「だからな、嬢ちゃん」と続けます。
「オイラたちは周りに相談することで心の雪かきをする必要があんのさ」
悩みを打ち明ける。それはエトにとってとても勇気のいる行為です。だからこそずっとため込んで、にっちもさっちもいかなくなって家に閉じこもってしまったのですから。
「でも、エトのなやみなんて、みんなにくらべたらちっちゃいし……わらわれちゃうかも」
「気にするこたぁねぇさ。言ったろ、悩みってのは雪みてぇなもんだって。一つ一つは小さくても降り積もれば重くなんのさ」
それでもまだエトは勇気が出ません。話せば呆れられて、面倒な子だと嫌われてしまうかもしれないと考えてしまいます。エトは自分に自信が持てないのです。
うつむいたままの妖精を見上げ、アリさんは静かな声で言いました。
「オイラは、嬢ちゃんに一人で立ってほしいんだ」
エトは何も言わずただアリさんの言葉を聞きます。
「立って、前を向いて、歩いてほしい。……こういう時、偉人の名言でも持ち出そうかとも思ったんだが、ありゃあ一人で立てるやつの言葉だからな。座りこんじまってるやつにゃ響かねぇ」
困ったように顔をかいて笑ってから、アリさんはまっすぐエトの目を見ました。
自由で、何も恐れない。いつもみんなのために働いて、いつもみんなの先頭を歩いている、エトの憧れ。そんなヒーローが心配そうにこちらを見つめている。
そのことに気づき、エトはようやく理解しました。話しても嫌われない相手はいるんだ、と。
「あのね、まえにエトがね──」
こうして小さな妖精は勇気を出して、今までため込んでいた全てを打ち明けたのでした。
「どうだい、嬢ちゃん。言ってスッキリしたかい?」
「……うん。なんか、かるくなった」
「そいつぁよかった」
すっかり元気になったエトはアリさんと笑い合いました。と、その時。
ドンドンドン、とドアが叩かれました。
そして、一拍間を置いてから、
「エトちゃん。いっしょにお祭りしよう!」
みんながエトを呼ぶ声が聞こえたのです。
「行ってきな、嬢ちゃん」
アリさんにうなずき、小さな妖精はドアの前に立ちます。ゆっくりと呼吸を整えてドアノブをひねると、明るい外へ向かって飛び出しました。
今日は楽しいお祭り。きっと、みんなにとって素敵な一日になるでしょう。
きょとんと首をかしげるエトにうなずきアリさんは言います。
「そうさ。悩みってなぁ雪みてぇなもんだ。晴れてりゃ溶けるが、天気が悪けりゃ残り続けて固まっちまう。積もれば動けなくなるし、最悪押し潰される」
身振り手振りを使って説明したアリさんはエトを見て「だからな、嬢ちゃん」と続けます。
「オイラたちは周りに相談することで心の雪かきをする必要があんのさ」
悩みを打ち明ける。それはエトにとってとても勇気のいる行為です。だからこそずっとため込んで、にっちもさっちもいかなくなって家に閉じこもってしまったのですから。
「でも、エトのなやみなんて、みんなにくらべたらちっちゃいし……わらわれちゃうかも」
「気にするこたぁねぇさ。言ったろ、悩みってのは雪みてぇなもんだって。一つ一つは小さくても降り積もれば重くなんのさ」
それでもまだエトは勇気が出ません。話せば呆れられて、面倒な子だと嫌われてしまうかもしれないと考えてしまいます。エトは自分に自信が持てないのです。
うつむいたままの妖精を見上げ、アリさんは静かな声で言いました。
「オイラは、嬢ちゃんに一人で立ってほしいんだ」
エトは何も言わずただアリさんの言葉を聞きます。
「立って、前を向いて、歩いてほしい。……こういう時、偉人の名言でも持ち出そうかとも思ったんだが、ありゃあ一人で立てるやつの言葉だからな。座りこんじまってるやつにゃ響かねぇ」
困ったように顔をかいて笑ってから、アリさんはまっすぐエトの目を見ました。
自由で、何も恐れない。いつもみんなのために働いて、いつもみんなの先頭を歩いている、エトの憧れ。そんなヒーローが心配そうにこちらを見つめている。
そのことに気づき、エトはようやく理解しました。話しても嫌われない相手はいるんだ、と。
「あのね、まえにエトがね──」
こうして小さな妖精は勇気を出して、今までため込んでいた全てを打ち明けたのでした。
「どうだい、嬢ちゃん。言ってスッキリしたかい?」
「……うん。なんか、かるくなった」
「そいつぁよかった」
すっかり元気になったエトはアリさんと笑い合いました。と、その時。
ドンドンドン、とドアが叩かれました。
そして、一拍間を置いてから、
「エトちゃん。いっしょにお祭りしよう!」
みんながエトを呼ぶ声が聞こえたのです。
「行ってきな、嬢ちゃん」
アリさんにうなずき、小さな妖精はドアの前に立ちます。ゆっくりと呼吸を整えてドアノブをひねると、明るい外へ向かって飛び出しました。
今日は楽しいお祭り。きっと、みんなにとって素敵な一日になるでしょう。
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