不死の魔法使いは鍵をにぎる

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待ちぼうけ

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待てども一向にノーラが現れない。
ノーラが持ってくる食事を食べるつもりだったから腹が鳴り始めた。


くそ。
時間を無駄にしてる感がすごい。

無駄な時間を過ごしたところで、私には無限にも感じられる時間が待ち構えてるのだが。




しかめっ面で待ち構えるも来る気配はない。
ガサリと音がして何か現れたかと思えば、小型の魔物や動物たち。



太陽が傾き始めたところで、ノーラの迎えを頼んでいた鹿たちが現れた。

村の近くでうろうろしていたが待ち人は来ず。
とりあえず私に会いに来たらしい。


魔物を避けて私のところへ連れてくるという依頼はこなせていないが、鹿たちに責任はない。
報酬の木の実をやって根城に帰ることにする。

村に帰り始めないと、帰ってる途中に森の中で日が暮れて、村まで辿り着けなくなる時間帯だ。
ノーラが来ることは今日はもうあり得ない。
図書館から借りた書物に夢中になっていたか、想像できないが風邪で臥せっていたのかもしれない。





特に気にも止めずに次の日も森で待機するがノーラは現れない。
次の日、そのまた次の日も待ちぼうけ。


また来ると自分で言っていたくせに、あの小娘は自分勝手にも程がある!



もうノーラの存在はなかったことにして根城に籠ろうかと思ったが、図書館の書物を返却させなければならない。


散々しつこく私の周りをうろちょろし、根城に籠る私の予定を撤回した挙げ句に、唐突に音沙汰を無くす。
自分の都合で動き自分の都合で私を振り回すノーラへの怒りを沸々と燃やしつつ、村へと転移してノーラを探す。

私のところに子供の足で歩いてこれる範囲の村は絞れる。
しかし、ノーラの家など検討もつかない。




さて、どうやって探すか。




人間に話しかけるなどしたくないし、魔物を警戒していてそもそも出歩いている人間がいない。
村に点在する家々を眺めながら立ち尽くす。




唐突に、芋でもあさっていたのか、ネズミ程度の小型の魔物が畑から飛び出して、森へと掛けていく。
何とはなしにその姿を目で追うと、森近くにバスケットが落ちているのが視界に入る。

平時ならともかく、魔王が台頭している今、魔物に襲われる危険があるのにのんきにバスケットを持って出かける人間など他にいないだろう。









…ノーラのバスケットだ。










近くに寄ると、バスケットの他にも物が散らばっているのがわかる。

サンドイッチなどを取り分ける用の小皿。
ハーブティーが入っていたティーセット。
家にあったという本や調べたことを書き記していたノート。



それに、この前借りていった図書館の書物。








4日まえ別れた後に何かあったらしい。

ノートを手にとってみて、表面に飛沫が散っていることに気づく。


血だ。




注意深く気にしてみれば、ほのかに血の匂いが周囲に漂っている気がする。
森の中に足を踏み入れて辺りを見回す。




少し先に見える、地面に広がる赤黒い染み。


ここ数日晴れ続きだったからか、薄れることなく残っているようだ。
染みが大きく広がっている箇所は複数。
血を流しながらも動き周り、さらに負傷を増やし、という流れが想像できる。

ワンピースだったであろう千切れた布切れも幾片か落ちている。
どの布切れも赤黒く染まり汚れた状態。

肉片は落ちていないが、恐らく余すことなく魔物に食われたのだろう。





ノーラが来なかった理由が判明し、私はくるりと向きを変えた。
散らばっている図書館の書物やノートなどを回収して、転移魔法を発動させる。

バスケットなどがそのまま転がっていたのは、村の人間ももういないからなのかもしれない。

書物を図書館へ返却したら今度こそ根城に閉じ籠ろう。
肥料を撒いて花もぎをして、畑の整備をしなければならない。
飽きるほどに時間はたっぷりある。





本当に、嫌になるくらいに。
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