不死の魔法使いは鍵をにぎる

:-)

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ひょろい野郎

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ノーラが所持していた本やノートの内容は徹底的に理解し飲み込んだ。
一字一句を諳じれそうなくらいだ。



結界の外では魔物たちが暴れているのを感じる。
まだまだ魔王を倒すには時間がかかりそうだ。

畑整備や清掃など今まで通りの過ごし方では、退屈で時間はゆっくりと過ぎていく。
閉じ籠り生活のお供にでも図書館で書物を借りてこようか。





魔物の動きが激化している今、外を出歩こうとする者は当然少ない。
しかし日々の暮らしのために、どうしても外出せざるを得ないことは多い。

家の修繕材料、子供の衣服、食料の調達など。
修行中の勇者志望や腕っぷしが強い者たちを雇って、少しでも安全を確保してひっそりと生活をするものだ。




当然、営業していなくても生活に差し障りがない劇場などは閉鎖されていく。

生活に特別必要なわけでもなく、勇者が立ち寄るわけでもない図書館も、閉鎖されるところが多い。
しかし、村が襲われたときの避難所として、魔法使いに結界を張らせて解放している図書館もある。


ノーラを連れていった図書館にも結界が張ってあった。
魔物が増えている今でも問題なく利用できるはずだ。








肥料作りや花の間引きなど畑の手入れを最低限行い、図書館へと転移する。

以前に図書館へ来たときよりは、書物を読めるようになっているのではないだろうか。


自分の成長を期待しつつ、図書館へ足を踏み入れる。


今回は農作物よりも、魔法に関する分野をあさってみよう。
またきっと、魔法技術を向上させられる知識を得られるはずだ。






魔法関連の棚へ向かうと、先客がいた。
本棚の前で書物を選んでいるらしき青年。


…邪魔だな。


ひょろっと背の高い、この辺りでは珍しい褐色の肌をした青年。
そいつが仁王立ちで棚の前にいるため、私は本を選べない状況になっている。


人が少なく閑散とした館内で行き先が被るとは。




舌打ちが出そうになるのを堪えつつ、どうしようかと眺めていたら、棚前のそいつはふと振り返った。
存外幼い、少年のような顔立ちとバッチリ目が合う。

振り向いたら人がいて驚いたのか、丸い目をさらに丸く見開いた。



なんだこいつ、と眉根を寄せつつ、棚前から少し退いたので書物を選ぶ。
小さい図書館の為、魔法関連の書物も3段程度しか置いていない。
ざっと背表紙を眺めて、身体強化について書かれたものを引き出す。


これでいいか。
借りて帰ってじっくり読むことにしよう。
変な野郎もいることだし。





先程からずっと、こちらをじっと伺う視線を感じている。

気色悪いな。



くるりと体を翻して、カウンターへ向かおうとすると声がかかる。





「ねえお兄さん」

「…」





横目で睨むも怯む様子のない褐色野郎。
足を進めて会話を拒んでも、後ろをついてきて話を続ける。





「お兄さんは魔法が使えるの?」

「だったらなんだ」

「ボクに魔法を教えてよ」

「…」





図々しさに呆れる。
見知らぬ相手に言うことか。



野郎の存在は無視して淡々と貸し出し手続きを済ませる。
図書館を出て転移で逃げれば終了だ。
私の横や後ろをチョロチョロと動いて話しかけてくるのがなんともうざったい。




「ねえ無視しないでよ。お兄さんは身体強化が得意なの?ボク苦手なんだよね。練習してるんだけど難しくて。コツ教えてほし」

「知るか」




図書館の結界から抜け出た瞬間に転移を発動。

浮遊感とともに雑音が消え、軽く圧しかかる重力と共に葉擦れや生き物の声が戻ってくる。
少し離れたところでは、魔物と動物が争っているのであろう騒がしい音がする。

魔力の気配から察するに、きちんと捌けば食料になる種類だ。



捕らえて今日の夕げにするか。
久々の肉である。



数冊まとめて借りる予定だったのに、変な野郎から逃れるために全然書物を選ぶことができなかった。




腹立たしさを肉で静めよう。
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