不死の魔法使いは鍵をにぎる

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ユーゲンとの旅

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合間合間に図書館にも立ち寄りつつ、北北西を目指して歩く。
転移で一気に移動してしまう手もあるが、私の魔力負担が多すぎるし、途中の図書館で得られるものがあるかもしれないという考えがあった。





ユーゲンはなるべく小さな村や町に立ち寄ろうとし、その住民に話を聞いては魔物退治をしていた。
自発的なものもあれば依頼されたものもある。

ユーゲン一人で手に負えなさそうなとき以外は、私は横で高みの見物をしている。






ときおり現れる強大な魔物を倒した際には、心臓を使って魔具を作ってみる。
何度か重ねるうちに指の痺れはなくなった。

慣れというか、魔力圧縮の効率が悪い弊害だったらしい。
おかげで、魔力操作の錬度がまた上がった。







道中しつこく尋ねてくるので、何度かユーゲンに魔力操作を教えたこともある。

あらゆる説明、教え方を試したがうまくいかなかった。
ユーゲンの魔力はなんとも名状しがたい、気持ち悪い感覚がした。


本人そっくりである。







お互い野営には慣れていたため、宿屋に泊まれない日でも何の不自由もなかった。
道中採取した木の実や果実、それに討伐した魔物を処理してご飯にする。

夜は作成した魔具を罠として周りに置き、魔物に備えた。
結界を貼るのが一番安全だが、そうしたら私は休めなくなる。




魔力操作ができないユーゲンはいままでどうしていたのかと聞くと、仲間といるときは交代で見張り、一人のときは木の上で寝て運に任せる、だそうだ。

剛胆すぎるだろう。







ある村に立ち寄ったときは、食事をできる場所が酒屋しかなかった。
酒にはいい思い出がないんだよな。

仕方なく二人で酒屋に入るも、水と料理を頼む男二人に店員は苦い顔。



「二人して酒は飲まないのかい。1杯くらいお飲みよ」

「酒は好きじゃない。ユーゲンは飲まないのか」

「ボクまだ14だから。未成年だよ」




随分と背が高いためてっきり成人しているものと思っていたが、まだ14だとは。

どうりで顔立ちが幼いはずだ。




「あと1年じゃないか。このご時勢取り締まるものなんて居やしないよ。そら、どれにする?」




強引な店員である。
好きじゃなくても飲めるんだろう?と結局私も頼まされた。

くそ。





今回旅をしながら情報収集をしていて気付いたが、師匠はだいぶ破天荒な人物だったようだ。
ぽつぽつと逸話や伝説が残っている。

師匠は名前を教えてくれなかった、とユーゲンには伝えているが、正解だったようだ。
私の師匠と同じ名前の人物が何百年も前に残っていたら怪しまれるかもしれない。





師匠が私を目に掛けてくれたのは、もしかしたら私と同じ状況を経験してきたのかもしれないな。


…いや、ただ単に人体に魔法陣を彫ってみたかったという可能性もあるな。





陣を彫られている間、あまりの痛さに「くそじじい!」と泣き喚いたことがあったが、師匠は実に楽しそうに魔法陣を彫っていた。

陣が完成した後は人に見せびらかして自慢したがったが、酷く奇異な目で見られるのは師匠ではなく私なので断固として拒否した。



魔法陣は悪魔の技術。
使用してはならない。
触れてはならない。



そんなふうに言われていた時代だった。
それがまさか、王都で研究されるようになっているとは。





いったい私はどれだけの月日をあの根城で過ごしていたのだろうな。
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