不死の魔法使いは鍵をにぎる

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兵士と魔物

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かつて私と師匠が住んでいた町に行くには、王都を超えてさらに足を伸ばす必要がある。
魔王はいつの時代も常に王都を狙って攻めており、王都に近づくほどに出くわす魔物は強大になる。



旅を進めて、王城が視界に入ってくるようになっていた。
そんななか街の入口付近で見掛けたのは、人間を丸呑みできそうな大きさの魔物に手間取っている集団。

ユーゲンが迷わず突っ込んでいくので、私も付き合う羽目になる。


無鉄砲か。





冒険者が魔物に出くわして、応援として街の兵士も出てきたようだ。

王都近くの街兵士なだけあって多少は腕が立つようだ。
が、ユーゲンの方が使えるな。

成人してない若造にかなわないとは情けない。






旅の間に、私とユーゲンの戦術は固まりつつあった。


ユーゲンの腕力、脚力を魔法で強化。
長剣には魔物の苦手であろう属性を付与。
その状態のユーゲンが魔物を仕留める。

それでも手間取りそうなら合間合間に攻撃や防御魔法でユーゲンを援護する。






複数の大人が苦慮していた魔物を、突如飛び出してきた若者が一息に仕留めた。

兵士を食いちぎろうと大きく開けた口に突き刺された長剣。
横に引き抜く衝撃で牙や目玉、脳らしきものが飛び散る。


身体の部分強化がよく効いているな。
いい感じだ。

密かに悦に浸る。







まさに命の火が消えようとしていた兵士は、尻餅をついてユーゲンを見た。




「た、助かった。礼を言おう。勇者を目指すものか?」

「ううん。違うよ。旅はしてるけど」

「そうなのか。惜しいな。今からでも遅くはない。どうだ?目指してみては。生涯誇れる名誉、栄光に褒章も出る」




ちらとこちらをユーゲンが見てくるが、即座に首を振る。
一考の余地もない。










名誉も栄光も、ほんのいっときのもの。
風が通り過ぎるように一瞬で、意味のないものに成り下がる。
恩も知らない、義理も持たない。


そんなやつらのために苦労するなんざごめんだ。








「目的があって旅してるんだ。申し訳ないけど」



すまなさそうにユーゲンは言う。

今回のように、魔物と戦っている場に遭遇したらすぐに飛び出していくような奴だ。
本心としては勇者として旅立ちたいのかもしれない。






「危険の伴うものだし、無理強いはできないな。この街にはとどまるのか?」

「うん。数日は」

「そうか。今回の礼に一度くらいもてなさせてくれ。私たちはここで職務についている。よかったら顔をだしてくれ」





そういって立ち上がると、周りの兵士らとともに街へ戻っていく。
中には足を引きずっていたり、腕を押えているものもいた。


最初に襲われたらしき冒険者も、ユーゲンに一声かけて仲間とともに街へ入っていった。
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