30 / 201
魔法研究の日々
しおりを挟む
留守にしている間に、もちろん根城の畑は駄目になっていた。
森に出て辛うじてなっている果物を採取して朝食にする。
さてどうしようか。
魔具についてまだ読みきっていないが、同じ図書館へ行けばユーゲンにはちあう可能性がある。
あいつが私を探すかどうかはわからないが。
向かう予定だった街、デルアンファへ行くのも同様だろう。
ユーゲンが来るかもしれない。
そもそも向かう目的も無くなったわけだ。
魔具開発が盛んな王都へ行くか。
魔法研究に力を入れている南西地域へ行くか。
それともあえて逆方向の東側に行ってみるか。
王都はあのユーゲンから別れた街に近いからな。
ユーゲン回避を考えるとしばらく避けたい。
王都からは遠い西地域へ行こう、と地図を頭に思い浮かべ、南西の方角へ向かうことを決める。
何十年か経ったらまたあの街に戻ればいい。
そうして、また一人、図書館へ通い書物を読み解く日々。
転移しては書物を借りて戻り、根城の整備をしつつ魔法研究に更ける。
さまざまな土地の図書館を回ってみて気付いたが、地域によって豊富な書物の分野に偏りがある。
近頃は、中身を読まずとも、どのような分野が置いてあるのかとりあえず全ての書名を眺めるようにしているのだ。
作物分野が多い地域。
動植物の生態に関する分野が多い地域。
魔法に、王族の歴史に、手仕事など。
西地域が魔法研究が盛んだというのは書物の豊富さから理解できるが、より南に行くほうが魔法陣に関するものは増えるようだ。
思えば、"魔法陣は悪魔の技術"と忌避されていたあの時代に、師匠はどうやって魔法陣を学んだのだろう。
いまさらながらとても不思議である。
魔法研究にふけっている間に、ようやく魔王が倒されたようだ。
黄金に輝く小鳩が頭上を飛んでいく。
王城でめでたいことがあった際に飛ばされる祝砲だ。
国中、あらゆる空を飛びまわり、最終的には主要都市に降り立ち王の言葉を伝える。
王に仕える、直属の魔法使いだけが使えるものだ。
つまり結構な時が過ぎているということだな。
もうユーゲンを気にする必要もないだろう。
王都に近い地域も回るとするか。
祝杯のために、 数日もしたら王都一体で祝いの催しがあるはずだ。
王城に備えられていた食物が市民に配られ、各家の少ないながらの実りも足されて、料理や酒が振舞われる。
飲食店は宣伝にもなるし、料理自慢が腕を振るう絶好の機会でもある。
おいしいものにありつける数少ない場面だ。
王都北東地区の料理は独特の味付けに刺激があって気に入っている。
魔法陣の要素記号を書いて組み合わせをこねくり回していたノートを閉じて立ち上がる。
タイミングのいいことに、この間料理の保存期間が長引くような魔具を試作したばかりである。
多めに調達して魔具を試しに使ってみよう。
森に出て辛うじてなっている果物を採取して朝食にする。
さてどうしようか。
魔具についてまだ読みきっていないが、同じ図書館へ行けばユーゲンにはちあう可能性がある。
あいつが私を探すかどうかはわからないが。
向かう予定だった街、デルアンファへ行くのも同様だろう。
ユーゲンが来るかもしれない。
そもそも向かう目的も無くなったわけだ。
魔具開発が盛んな王都へ行くか。
魔法研究に力を入れている南西地域へ行くか。
それともあえて逆方向の東側に行ってみるか。
王都はあのユーゲンから別れた街に近いからな。
ユーゲン回避を考えるとしばらく避けたい。
王都からは遠い西地域へ行こう、と地図を頭に思い浮かべ、南西の方角へ向かうことを決める。
何十年か経ったらまたあの街に戻ればいい。
そうして、また一人、図書館へ通い書物を読み解く日々。
転移しては書物を借りて戻り、根城の整備をしつつ魔法研究に更ける。
さまざまな土地の図書館を回ってみて気付いたが、地域によって豊富な書物の分野に偏りがある。
近頃は、中身を読まずとも、どのような分野が置いてあるのかとりあえず全ての書名を眺めるようにしているのだ。
作物分野が多い地域。
動植物の生態に関する分野が多い地域。
魔法に、王族の歴史に、手仕事など。
西地域が魔法研究が盛んだというのは書物の豊富さから理解できるが、より南に行くほうが魔法陣に関するものは増えるようだ。
思えば、"魔法陣は悪魔の技術"と忌避されていたあの時代に、師匠はどうやって魔法陣を学んだのだろう。
いまさらながらとても不思議である。
魔法研究にふけっている間に、ようやく魔王が倒されたようだ。
黄金に輝く小鳩が頭上を飛んでいく。
王城でめでたいことがあった際に飛ばされる祝砲だ。
国中、あらゆる空を飛びまわり、最終的には主要都市に降り立ち王の言葉を伝える。
王に仕える、直属の魔法使いだけが使えるものだ。
つまり結構な時が過ぎているということだな。
もうユーゲンを気にする必要もないだろう。
王都に近い地域も回るとするか。
祝杯のために、 数日もしたら王都一体で祝いの催しがあるはずだ。
王城に備えられていた食物が市民に配られ、各家の少ないながらの実りも足されて、料理や酒が振舞われる。
飲食店は宣伝にもなるし、料理自慢が腕を振るう絶好の機会でもある。
おいしいものにありつける数少ない場面だ。
王都北東地区の料理は独特の味付けに刺激があって気に入っている。
魔法陣の要素記号を書いて組み合わせをこねくり回していたノートを閉じて立ち上がる。
タイミングのいいことに、この間料理の保存期間が長引くような魔具を試作したばかりである。
多めに調達して魔具を試しに使ってみよう。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる