不死の魔法使いは鍵をにぎる

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シュワーゼと門番

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走るシュワーゼの後ろについて歩き、門へと近づく。

交代したばかりの門番の一人がシュワーゼに気づき、目を輝かせた。



「シュワーゼさんこんにちは!出門記録に名前がないですけどまた抜け出したんですか?お父上やレフラさんが嘆かれますよーっ」



なるほどでれでれである。
しかし、ただ単に幼児を可愛がっているようにも見える。



「もう戻るよ。大丈夫。入る前に聞いてくれる?フォルグネに1つお願いがあるんだけど」

「自分に頼み事ですか!なんですかなんでも言ってくださいっ」



…主人からの命令を待つ犬のようにも見える。



「この人を入れたいんだ。ぼくと一緒に。今後は出入門を自由にしたい」


私を指さすシュワーゼの腕とともに、門番の首が動く。






「この人ですか」



すっと表情が引き締まった。

かと思いきや、またすぐに犬に戻る。






「この人なんなんですか。シュワーゼさんの何なんですかっ」



きゃんきゃん吠えられてる気分だ。






「ぼくの大切な友人だよ。いいでしょう?悪い人じゃない。ぼくが保証するよ」

「…シュワーゼさんがそういうなら、わかりました」



不服そうに声を絞り出し、反対側に立っているもう一人の門番へ声をかけに行く。

私を不審に思っているというよりは、自分のポジションを取られた嫉妬のようなものを感じる。

4歳児に心酔する門番はすぐに戻ってきた。



「話つけてきました。交代の際にほかの門番にも話を通すので、これからは顔見せれば出入門できます」

「ありがとうフォルグネ。また今度時間とるよ。ゆっくり話そう」

「はいっ!」



嬉しそうに降るしっぽが見えるようだ。









入門してから、なぜあんなにも懐いているのかを聞いてみた。


「口出しちゃったんだよね。フォルグネが戦闘訓練してるときに。剣を振る力が横に抜けてたのが気になって。伸びしろもありそうに感じたからね。そしたらメキメキ上達しちゃって」

「なるほど」

「ぼく神童なんだ。ここでは。せっかく特区の子になれたから動き回りたくて。やりすぎた感もあるけど。加減が難しいね」

「…なるほど」



どうりですれ違う人間がシュワーゼに挨拶してくるわけだ。






王族に代々使える官吏の家系が住む特区。
一般区に比べ家々の間が空いており、道や壁もよく整備されている。


すれ違う人間の姿を見てふと思う。






「黒色肌が多いんだな」

「そうみたい。理由を調べたいね。黒色肌の魔力の高さが関係してるのか。肌の色で優遇してたのか。それ以外か。資料が王城にありそうだけど。さすがに王城は難しくて」



もう数年すれば可能性はあるが、まだ幼すぎるせいだろう。
シュワーゼが王城に入るのは困難だ。







「ゲルハルトなら行けるんじゃない?その魔法技術見せてさ。王城勤務」

「却下だ」



考えるまでもなく断る。

人間の、しかも王族のために働くなんぞやってられるか。
顔をしかめて舌を出したい気分を、なんとか無表情にとどめて歩く。



「そっか。いい案だと思ったんだけど」


さして残念そうでもないシュワーゼの声。







前からシュワーゼよりも2,3年齢が上に見える子供が走ってきた。



「シュワーゼ何やってるんだ!レフラが探してたぞ!」



現れるや否や、がつっとシュワーゼにげんこつを落とす少年。

顔立ちが似ているな。
兄弟か。



「痛いよ兄さん」

「うるさい!神童とか言われていい気になってるんだろ。レフラを困らせるなよ。行くぞ」



引っ張ろうと伸ばされた兄の腕を避けて、私を盾にして後ろに回るシュワーゼ。



「いま戻るところだったんだよ。この人を連れてね」

「誰だよそいつ」



避けられた苛立ちと私への不信感で眉間にしわを寄せる少年。



「魔法の先生になってもらう人。魔法技術すごいよ。この人となら勉強するよ」

「はあっ!?レフラがもういるだろ!我儘言うなよ!」

「レフラはいまいちだよ。学校での座学成績が良かっただけだね。魔力感知も全然だし」



弟につっかかる兄が大人気ないのか。
精神的にはかなり年上であるシュワーゼが譲らないのがいけないのか。


しかも兄弟げんかにさらりと混ぜられている。うんざりする。
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