不死の魔法使いは鍵をにぎる

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屋敷への許可

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どうしたもんかと眺めていると、シュワーゼの兄が来たほうから女が駆けてくる。



「シュワーゼさんブルデさん喧嘩しないでください」

「レフラ」



ぎゃーぎゃー騒ぐ声を聞きつけたのか、噂の先生とやらが来たようだ。
偉ぶった態度で兄弟に苦言する。



「ブルデさん一緒に探してくれてありがとうございます。でも往来で喧嘩するのはよろしくないですよ。シュワーゼさん。かくれんぼは屋敷の中と言ったはずです。ただでさえ魔法勉強の時間をかくれんぼに変更したのに、約束を破ってはいけませんよ」



「ごめん」と落ち込む兄に対して、「はーい」と気のない返事でふてぶてしい態度のシュワーゼ。



「それで、あなたは誰ですか?」



一通り兄弟に物申してからこちらを向いた。
不信感を露わに軽くにらみつけてくる。

面倒だなと目をそらすと、代わりにシュワーゼが答えた。



「ぼくの先生になってもらう人。屋敷に連れていくね」

「シュワーゼさん!?」



女の顔から血の気がひいて膝から崩れ落ちる。
ああ、女からしてみれば解雇宣言か。



「ぼくはこの人から教わる。レフラからは兄さんが教わるよ。父さんにもそう言っておくね」



衝撃を受ける女とそれを慰める兄。
その横をすり抜けてシュワーゼは歩き出す。






「巻き込んでごめんね。でもこれで屋敷も自由に出入りできるから」

「あの女技術ないのか」

「ないね。知識ばっか。教わることが正直ないんだよね。知識ならもう十分持ってるもの。ぼくの魔力の異常にも気づかないし。魔力感知能力低いよ」



魔力の異常、とはユーゲンのときに感じたなんとも言えない気持ち悪さだろうか。









魔力は一人ひとり違う個性がある。

さらりとしているもの。
やわらかいもの。
とげとげしいもの。

人によっては匂いや色を感じるという者もいる。
感じ方は人によって違うが、魔力にはその人固有の質があるのだ。




ユーゲンの魔力には“これ”と明言することのできない気持ち悪さがあった。
複数の特徴がまだらに存在して混ざり切っていないような気持ち悪さ。








「黒色肌だから魔力量はある。でも意思通りには動いてくれない。3割くらいかな。実感として動かせてるのは。動かせても全然魔法として発現しないんだけどね。成功するのはたまにだな。

それをあの人、的外れなこと言うんだよ。理論を理解すればできるようになるとか。自分の魔力をきちんと感じてくださいとか。

理論は理解してるし、魔力もちゃんと感じてるんだけど」



あの女とシュワーゼは相当相性が悪いらしい。
ノーラやユーゲンのときに誰かに対する怒りの発言は聞かななかった。



「まずは呪いを解く方法が知りたいよね。理由は突き詰めたいけどきっと呪いのせいだろうから」






そうこう言っているうちに屋敷へ着いたらしい。

各敷地を区切る柵から屋敷入口までが長い。
そして広い屋敷に比べたら可愛く見える、それでも田舎地域の一般家庭程はある大きさの施設が敷地内に点々と建っている。



「まずは父さんに会わなきゃ。ゲルハルトの許可もらわないとね。この時間だとどこにいるかな」





屋敷へと足を踏み入れ、通りがかった使用人に聞く。


執務室に居たシュワーゼの父親との話はすんなりとまとまった。

シュワーゼが思うように好きにするといい、という態度。
信頼されているからこその放任。

生まれ変わりで蓄積された知識を生かして、動きやすい環境づくりをうまいこと行っていたようだ。





「よし。これで大丈夫だね。これからはゲルハルトは自由に出入りできる。ゲルハルトから会いに来てくれると嬉しいな。ぼくは特区の外にはあんまり出れないから。じゃあぼくの自室に行こうか。お互いの状況把握をしたい。昨日はぼくが興奮してて話せなかったからね」


よくわかってるじゃないか。
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